第2話 元魔王とお兄ちゃん

あれから5年後、、、


あの後、我は、伯爵家のアスケル家の四女のステアとして産まれた。

どうやらここは、あの戦いから500年も経った後の世界らしい。

この家には色々な本があったから、5年間隠れて読んでいたので、結構色々な情報を知れたが、正直驚いた。

まず、勇者が魔王城の中で死んでいた。

まああの傷で生きていたら、バケモンか!って叫びたくなったと思うけど。

後は、魔族と人間の国境の境目がぐちゃぐちゃになっていた。

これは、我が死んだ影響らしい。

これが原因で、人間と魔族の戦争が度々起こっていた。

結果、今の国境に落ち着いたらしい。

思ったより我が死んだ影響が大きくて、なんか申し訳なくなった。

そして今は、勇者との再戦のために鍛錬を繰り返して、魔王だった頃と同じ力を引き出せるように努力している。

その一環として、今、、、お兄ちゃんから逃げている。


「ちっ、、、もう追って来たか」

「待てよ〜、ステア」

「今日こそは、逃げ切るのじゃ!」


家から抜け出すための1番の障害物は、今追いかけて来ている、アスケル家次男アルフレッドお兄ちゃんを撒くこと。

アル兄は【サーチ】という、かくれんぼ最強スキルを持っている。

更に、100m4秒で走る身体能力を持っており、本当に人間か?と言いたくなる。

特に、今の我は子供の姿なので、運動能力も落ちている。

だから、本気を出していないアル兄にも走力で負けてしまう。


「使いたくないのじゃが、、、使うしかないのじゃ」


【血装第三三式ー靴】


「これで、、、」

「急に加速したな、、、でも!」


我の生まれ持ったスキル、それは【血装】、血を操り、武器や防具にするスキル。

今使ったのは、それの三三式ー靴、血で靴を作り、加速する技。

ちなみに、百式まである。

とにかく、これで、アル兄ぐらいの速度は出せるようになった。

でも、、、体格差が圧倒的過ぎる。


「はい、ゲット〜」

「くっ、捕まったのじゃ」


身長差に、体格差、さらには能力差まである。

どう足掻いても、勝てる可能性の方が低いのは、なんか笑えてくるな。


「いくら勉強が嫌でも、ここまで逃げる?」

「座ってるだけじゃつまんないのじゃ」


魔法の技術や知識は、そこら辺の研究者には負けないと思っている。

実際、魔法に関する本の内容は8割ぐらいは知っていた。


「ステアは家の外に出たいんだっけ?」

「そうなのじゃ!」

「うーん、、、ステアが強いのも、この辺りのモンスターが弱いのも、父さんも母さんも知ってるけど」

「なら!」

「でも、、、やっぱり心配なんだよ」

「ぬぅ、、、」

「タラ兄とか、ステアがモンスターと戦いたがってるとか言ったら、泡吹いて倒れてたからね」

「タラ兄が、、、」


タラ兄、アスケル家長男タラテント兄さんの愛称。

とても優しくて、家族思いの人だ。

でも、最近タラ兄は、色々忙しくて家に帰って来てない。

なんか久々に会いたくなってきたなぁ。


「とにかく、俺から逃げ切れるまで、勝手に外へは出れないからね」

「ぬぅぅ、、、次こそは逃げ切ってやるのじゃ!」

「その時は、また捕まえるからね」

「さっ、早く帰るよ」

「分かったのじゃ」


◆◇◆


2年後、、、


「よーし、今日も逃げ切れたのじゃ」


最近、我はアル兄から逃げ切ることに成功した。

それは、今思えば、実に簡単な事だった。

アル兄が寝てる時から、外に出ておけばよかったのだ。

現在は、朝4時。

流石にこの時間では、一部の使用人しか起きていない。

しかも部屋に、外に出てるよ、と書いたメモを残しておけば、最悪バレても大丈夫。


「ピニピニッ」

「おっ、、、あれはスライムじゃな」


スライムとは!

魔物研究者が認める最弱モンスターだ!

弱い!大量にいる!冒険者の訓練にオススメ!

まあ、これは冒険者なら、という評価だけど。

一般人なら抵抗できず取り込まれた後に、溶かされて死、だからな。


「準備運動ついでに狩るのじゃ!」


【血装第4式-大剣】


「喰らえぇぇい!」

「ピニィー!?」


ドン!


「ふむ!上々!」

「だいぶ力が戻ってきたのじゃ」

「ふぅむ、だいたい30%ぐらいじゃな」


でも、まだ足りない。

これでは、まだ勇者に勝てない。

もっと強くならなくては。


「よし!もっと狩るのじゃー!」


◆◇◆


アルフレッド視点


「んっ、、、もう朝か」


多分、ステアは裏の森に行っているだろう。

ステアが森に行くようになってから、1ヶ月は経った。

ちなみに、俺はなんだかんだ言っていたが、ステアが森に行くことには賛成だった。

まあ、心配が無いわけではないが。


「ふぅ、とりあえず着替えるか」


ステアは、不思議な子だった。

生まれた時から魔法を操り、魔導書を読んでいた。

まあ、俺達に隠れて、だけど。

そして、5歳の頃には、強くなりたいから山に行ってモンスターを狩りたい、などと、その歳の女の子が絶対言うことのない事を言い始めた。

流石に、父上達は反対したが、好きにやらせてあげたい気持ちもあったから、俺を撒くことができれば、森に行っていい、という事になった。

そこから、俺とステアの鬼ごっこが始まった。


「あっ、ステア、おかえり」

「アル兄、ただいまなのじゃ!」

「返り血付いてるから、拭いてきた方がいいよ」

「分かったのじゃ」


家族の中では、俺が2番目に起きるのが早いから、いつもステアを迎えている。

これが父上とかなら、こんな会話はしなかっただろう。


◆◇◆


「ステア、割と重要な話があるから、聴いて欲しいんだ」

「ん?なんじゃ?アル兄」

「この後、父上達から言われるだろうけど、先に言っときたくてね」


これにステアが賛成するかはわからないけど、先に言っておきたい。

流石に、ステアの意見抜きで決めるのは、罪悪感がある。


「ステア、大魔導学園に行かないか?」

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元最強魔王の転生道 レア・ヨメ @5Gradefixer

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