コイウミ

天川 七

コイウミ

 チェリーのピアス。

 お気に入りの黄色いワンピース。

 つやつやなピンクのリップ。

 

 完璧! さぁ、待ち合わせの場所へ出かけよう。


 今日は特別な日だから、花屋で一輪ヒマワリを買って電車に揺られる。


 優しい花の香りを吸い込んで目を閉じると、笑顔のあなたが思い浮かぶ。


 会いたくて気持ちははやり、心音が遠ざかる。


 ポシェット越しに携帯が震えた。


 少しだけあなたからを期待したけど、メッセージは友達のもの。


『ねぇ、今日は一緒に遊ばない? 他の子も誘ってさ』


 その誘いに、思わず微笑む。


『今からデートなの』


 なんて惚気るように返信しかけて、返事を書き直す。


『いいね、夕方に行くよ』


 電車が止まり、塩の湿った香りと波音が私を包む。


─待ち合わせは海な!


 そう言ったのはあなただけど、また寝坊して、慌てて走ってきそう。


 そんな姿も好きだから、私は怒った振りがうまくなった。



 駅のホームから波音に誘われて、砂浜へと降りる。


 足跡を浚うように潮風が柔らかく吹いた。


 私は波打ち際にしゃがんで、ヒマワリを波にのせる。


 チェリーのピアスはあなたが可愛いと言ってくれたもの。

 黄色のワンピースはあなたがプレゼントしてくれたもの。

 つやつやなピンクのリップはあなたが選んでくれたもの。


 私は今年も、待ち合わせたこの海で、恋しいあなたに大好きを伝えてる。


「……来年も、デートしようね」

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コイウミ 天川 七 @1348437

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