第15話
帰る直前のことだった。
課長の江上さんに、ちょっといいですか、と呼ばれた。
小会議室に連れて行かれ、対面で座る。
「昨日から様子がおかしいけど、大丈夫ですか?」
優しく聞かれて、私は困った。
本当のことを話せたらどんなに楽だろう。
相談したい。だけど。
迷ってから、思い切って言ってみた。
「実は……幻が見えているかもしれなくて」
江上さんは驚いたように私を見た。
それはそうだろう。
「大丈夫なの!?」
カズが心配そうに言う。
「幻聴もあるみたいなんです」
私はカズを見て言う。
「俺のことなの? 俺はちゃんといるよ!」
カズがぷんすかと怒っているのが見える。
「じゃあ、今日の半休は病院に?」
江上さんがたずねる。
「いえ、まだ……」
行くなら精神科だろうし、ハードルが高い。厄払いで見えなくなればいいと思ったのだけど。
二つも病院に行かなくてはならないのかと、気持ちが沈んだ。
「しばらくしたら落ち着きますから。ご心配をおかけして申し訳ありません」
「困ったことがあったらいつでも相談して」
私は泣きそうな気持で江上さんを見た。
江上さんは、優しく微笑をくれた。
その後ろで、カズが江上さんを殴ろうとしているのを見て顔をひきつらせた。
「やめなさいよ!」
急に声をあげる私に、江上さんが驚いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます