第4話 キルマシーン
「このアイス」
彼女が買ってきたアイス。
チャーハンみたいな味がする。
「いやごめん。なんでもない」
「なによ」
彼女も、同じアイスを買っている。いま、開けた。これから食べる。食べれば、分かるだろうし。いったん、待ちで。初見の感想が大事。ネタバレ配慮。
あっ。
一口が大きい。
一口が大きいよ。
いきなりそんな。大容量。
「うん?」
「ううん。なんでもないよ。なんでもない」
普通に食ってる。チョコから、なにも、感じ取らなかったのだろうか。
彼女。ほおばったアイスを、ばりぼり砕いている。収集車のなかでつぶされるごみ袋みたいな音。健康な歯ですね。
「ねぇ」
立ち上がった彼女が、蛇口をひねりながら訊いてくる。水が必要ということは、やはり、微妙寄りだったか。
「しにたくなることって、ある?」
彼女が、また蛇口をひねる。水が止まる。
「しにたくなること」
変な質問。
「あんまないな。買ってきてもらったアイスがまずかったら、しにたくはなるかも」
こんな回答しか出てこない。
「そっか。ごめん。まずかったよね」
「いや。どっちかっていうと。おいしい」
「じゃあ、しにたくはないね?」
「うん?」
どういう意味だ?
「うん。まぁ、そうかも」
曖昧な回答のまま。彼女が、座って水を飲み干す。
「あっ、やっぱ、そのアイス」
「まっっっっずい。なにこれ。チャーハンの味する。ごみだ」
彼女の口には、合わなかったらしい。
残りのアイスは、僕のものになった。この後おいしくいただきます。
まずはこの、正常な口内環境を取り戻そうとキスをせがんでいる彼女から処理しないといけない。
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