第2話 組織最強の手駒

 コンビニ。


 通信端末。


『様子は?』


「元気だよ」


『元気だと困るわよ』


 そりゃあ、そうよね。


「落ち着いてるよ。何も変わり無し」


 彼に初めて会ったのは、数年前。

 周辺一帯にいた、ひとではないやつらが全員殺され尽くしていて。その元凶が彼だった。組織は彼を飼い慣らせないと判断し、私に殺しの任務が来た。


 ぜんぜん殺せなかった。顔がタイプというのもあるけど、なにより、悪意が感じられなくて。悪意の無い純粋なイケメン。殺しづらいこと、このうえなし。


 結局ぼろぼろになりながらなんとか生き延びて、しにかけてるときに。よりによって、彼に介抱された。


 彼の中にある暴走モードみたいなやつは、オンオフが自動らしい。何回か戦って、傾向も分かってきてる。

 一度オンになると、周りにいるひとではない化け物を無差別に殺す。最高のキルマシーン。組織としては、喉から手が出るほどの逸材。

 弱点は、ひとにも危害を加える点。正確には、攻撃に対するカウンターが自動。攻撃すると、同じぐらいの強度で攻撃し返される。


 わたしは、殺す気で彼に突っ込んだので。殺されるとこだった。まじで。あぶなかった。彼に介抱されなければしんでた。意味わからん。


 普通に過ごしている限り、彼は人畜無害なイケメンだった。一緒に過ごしていて、それは理解している。そして。それが今、いちばんの悩みの種だった。


 殺せる。

 オフモードの彼なら。

 簡単に。蛇口ひねって水出すみたいな気軽さで。殺せてしまう。


 組織からの駆除任務は、撤回されていない。ただ、現状の報告依頼も来ない。要するに放置。ときどき、通信担当が駄弁りに来るだけ。向こうもきっと、むずかしい感じなんだと思う。最高の手駒だけど、使いこなせるか分からない、みたいな。しらんけど。


『その新作アイスは、やめときなさい』


「なんでよ」


 新作なんだからいいにきまってんだろ。


『やめときなさい。チョコからチャーハンの味するから。買うのやめなさい』


「逆に気になるわよ」


 2つ買ったろ。

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