白詰草冠

りA

花冠

空に初夏。

野に一面の白詰草。

まだ八歳の少女が二人。


「ねえ、エヴァ」

「何?」


「皇太子さま、ちょっとでも、こっち見てくれるかな」

「わかんない。人いっぱい来るみたいだし、馬車はすぐ行っちゃうし」


「金髪で背が高いんだよ」

「左利きなんだよね」


「このリース(花冠)……渡せるかな」

「皇太子様ご本人には無理だよ。近寄れないし。でもお付きの人になら……」


「ちゃんと皇太子様に渡してくれる?」

「だいじょうぶ。マリアのリースはすっごく綺麗だから!」


「渡せるといいな」

「きっとだいじょうぶ!」


空に初夏。

野に一面の白詰草。

まだ小さな手で、編まれゆく、花冠。

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