ライバルはキティちゃん
会社の先輩が弁当箱を変えた。
ハローキティの弁当箱だ。
ダイエットを始めてから、これで何個目だろ。
どんどん小さくなってきて、体もどんどん細くなってきて。
でも、これって子供用だよね。
そんな私の気持ちを読んだみたいに、
「アラサーにもなって、ちょっと恥ずかしいんだけどさ」
と言い訳するから、
「いえいえ、私なんかより若く見えるし、キャラにも合ってるんじゃないですか」
それはけっして、お世辞なんかじゃない。
身長も低いし、童顔だし、最初見たときは同じ新入社員かと思ったほど。
痩せ始めてからは、ますます幼い雰囲気になってきて、大学生や高校生でも通りそうだ。
そして、先輩は弁当箱を開けた。
中身についてはこれまでも見せてもらってきたから、ものすごく驚いたりはしない。
でも、それは私が見慣れてるからで、他の人が見たら目を疑うと思う。
いや、正直、私もちょっと驚いた。
さらにアップデートされていたから。
パッと視界に飛び込んできたのは、ゼロカロリーのこんにゃくゼリー。
ただ、これは基本的に食べないことを私は知ってる。
常温保存でパウチということで、定番の食事でどうしても足りなかったとき用の保険みたいなものらしい。
じゃあ、何が定番かというと、小さなおにぎりとサラダ。
実際、今日も、レタスとブロッコリーとミニトマトとしらすとわかめのサラダが目に入った。
でも、あれ? おにぎりはないのかな。
と思ってよく見たら、キティちゃんの両耳のところにふたつ、おにぎりがすぽっと納められてる。
すごいな、こんなに小さなおにぎり、これでカロリー、どれくらいなんだろ。
可愛いけど、さすがに怖い。
そんな気持ちをごまかすように、
「ますます痩せちゃいますね。そのうち、キティちゃんみたいに体重りんご3個分とかになったりして」
と、冗談を言ってみた。
ところが、先輩は笑うどころか大真面目な表情で、
「それは無理だよ。サンリオのサイトにね、あなたの体重はりんご何個分? みたいな計算してくれるコーナーがあって、私も試しに自分の体重でやってみたんだけど。まだ、キティちゃんの30倍くらいあるんだもん」
「いや、そんな、張り合わなくても。キティちゃんは生き物じゃないですし」
思わず、ヘンな慰め方をしてしまった。
「だけどね、こういうお弁当箱を使ってたら、何かあやかれるかもって思うの。体重もそうだし、可愛いところとかさ」
「あ、そうですね、たしかに」
よくわからない空気になってしまったから、そこで会話が続かなくなった。
でも、何かあやかれるって、本当かもしれない。
どんどん細くなって、幼い感じに変わってる、最近の先輩を見ていたら、そう思う。
たぶん「カロリー」より「カワイイ」を摂取しようとしてるんだ。
あ、そういえば、サンリオのそのサイトに行けば、先輩の体重もわかっちゃったりして。
キティちゃんの30倍なんだよね。
ちょっと怖いけど、あとで調べてみよう。
そのうえで、先輩のこと、見守っていきたいな。
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