第4話 主人公との交流


 夕方、転校生と白鳥琴音の周りにクラスメイトが群がって何かを計画している様子だ。


 白鳥琴音が俺の方を見て駆け寄ってきた。


「あの、これから皆で歓迎会をやるんです! 一緒にカラオケ行きませんか!?」



「まあ、行くだけなら(断ったら今後ハブられそうだし)」


「おーい琴音ぇ、そいつは?」


「山田太郎君っ! もうほんと凄いだからっ、この間だって」


 俺はすぐさま白鳥琴音の肩に手を起き、首を横に振った。


 白鳥琴音はそんな俺を見て顔を赤らめ、顔を両手で覆いモジモジしだした。


 そして俺の耳元で囁いた。


「わかってますっ、2人だけの秘密ですねっ」


 違うが?





 俺達クラスメイト全員でカラオケに行く事になった。


 カラオケの大部屋の隅で、ひたすらメロンソーダをストローでチューチュー吸っていると、隣に転校生がやってきた。


「よう、隣いいか?」


「まあ、はい」


「俺はカズマ、カズマでいいぜ、お前は?」


「僕は山田太郎です」


「そうじゃなくてあだ名だよ、なんて呼べばいい?」


「じゃあ太郎で」


「太郎か、よろしくな。 、、それと、琴音から聞いたぜ」


 俺はメロンソーダを鼻から吹き出した。


「なんか詳しい事は言えねえけど助けられたってな、ありがとな太郎」


 そう言うことか、驚かすなよ鼻が痛い。


「あいつは昔から危なっかしいんだよな、だから誰かが付いててやらねえと」


 こいつ、、、主人公だな。





 そこへクラスメイトのタカシが話しかけてきた。


「なあ山田もなんか歌えよお」


「え?いや僕は、、」


「いいじゃんいいじゃん、一曲だけ」


 それを聞いてクラスメイトの皆が面白がって俺に勧めてきた。


「えー! 山田歌うの?やばっ」

「聴きたい聴きたい!」

「ほらいいだろ? たかがカラオケなんだからさ!」


 断りずれー。



「じゃあ一曲だけ、、」


 俺はデンモクを使って曲を入れた。


 皆が珍しいもの見たさでワクワクしているのがわかる。


 演奏が始まった。



 チャーチャラ♪ チャッチャッチャッ♪


「ぬすっまれた♪ 過去を探しつーづけてー♪」




 徐々にクラスメイトの表情が真剣な表情へと変わる。

 皆が息を飲むようにこっちを見ている。


 

「そおとーしてーおいてくれ♪


 明日〜にぃ〜!♪



 あぁあっ!♪


 つーぅながぁる♪ 今日ぉくらい〜〜〜♪」




 シーンとする室内、、



 空調の音が室内に響き渡る、、



 すると、白鳥琴音が立ち上がり、泣きながら拍手をしだした。


 それにつられるかのようにスタンディングオベーションが巻き起こる。



 他にも泣いてるヤツがいる。


「山田あ! 俺感動しちゃったよ!」

「山田うまっ!」

「山田! 今度の文化祭で俺とバンドやろうぜ!」


 白鳥琴音が俺の手を取り、泣きながら絶賛してきた。


「感動しましたっ! 流石ですね山田君っ!」


 カズマも嬉しそうに近寄ってきた。


「太郎! お前すげーな!」



 は? なんだこれは、、、


 いったいなにが起きて、、


 、、、ハッ! スライムのしわざかあ!!



 とりあえずこの状況をなんとかしないとマズイ。


 このままでは音楽漫画の主人公にされてしまう。


「き、今日はたまたまです、いつもは音痴なんで」



 次からは音を外して歌うことにした。


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