第46話 魔源石の真実2


 王宮の敷地の中にあるその建物はもうほとんど姿を成していない。


 辺境伯の姿も見えた。


 みんなは神殿のあったと思われる場所に進んだ。


 わずかに残った壁らしきものとそこに祀られていたと思われる女神の像そしてその下に頑丈な大理石で囲われて出来た祭壇の奥深くに魔源石はあった。


 それはよく見ないとわからなかった。


 「これは聖女の役目だ。さあ、アリーシア頼む」


 リント隊長はそう言って私を祭壇の前に連れて行った。


 「みなさん、いいでしょうか?」


 「「「「ああ、頼む」」」」


 私はその場に座り一度女神に祈りを捧げた。そして祭壇の奥にある魔源石をそっと取り出す。


 屋根もなく真っ青な空の下に晒された魔源石はキラキラ陽の光を浴びて輝く。


  それはまるで鏡のように光る魔源石だった。


 その場にいた全員が「「「「「おおぉぉぉぉぉぉ~」」」」」声を震わせた。


 魔源石は完全に復活していた。


 村長が言った事が確かならば樹海が穢れたのも魔獣が生まれたのもこの魔源石が穢れていたせいだと言うことになるのではないだろうかと私は思った。


 (ひょっとして魔樹海を浄化し魔獣を元の生き物に返し瘴気を取り払った事で魔源石は力を取り戻したの?


 ううん、パシュの話だとそれ以前から女神はずっとここにいて守っていてくれた。この場所がずっと穢れないように、だからこそ魔源石は女神の力で元の姿にもどったんだわ。


 きっとガロンの力も私の力もすべては女神の力なのよ。


 魔樹海は人間の手で穢れた。あんな広範囲を浄化できたのは魔源石の力と女神の加護があったからこそ成功したのよ。ということは魔源石と聖獣と女神の加護を受けたもの。この3つが揃って初めて力を浄化できるって事なのかも…)


 それにしても魔源石は美しかった。


 この穢れのない魔源の力こそが国の礎になり繫栄と豊穣をもたらすのだと思わずにはいられなかった。


 それには美しい人間の心が絶対不可欠なんだと言うことも。


 *~*~*


 魔源石の復活に興奮していた全員だったが、ひと度こんな大切なものをこんな所に置いておくのは問題だと言う話になった。


 一番に自分が預かると言い出したのはキルヘン辺境伯だった。


 リント隊長が即刻却下した。


 神殿は辺境伯の管理できる場所ではないと言うのが隊長の考えだった。


 確かに神殿は国王でもおいそれとは口出しできない場所だからみんな隊長の考えが正しいとキルヘン辺境伯がだめだと言った。


 次にロベルト神官が手を挙げた。


 「どうでしょう?この魔源石は教会で預かると言うことにしては、もちろん騎士隊の方に警護についていただきたい」


 リント隊長は腕組みをして考え込んでいたが…


 「そうだな。今日の所は取りあえずそうしてもらおう。ここから動かすのも考え物だがこんな貴重な物をこのままにはしておけないだろう。いいか、この事はここに来た者だけの秘密にしておいてくれ。魔源石は知っての通り国にとっても最重要のものだ。もしこれが他国にでも奪われるようなことがあれば一大事だ。みんなわかってるな?特に辺境伯いいですか?」


 「「「「もちろんです!!」」」」


 「まあ、仕方がないですね。でも、国王にはお知らせしなくてはなりません」


 「いや、それも俺がやっておく。わかったか?」


 「ではよろしくお願いしますよ。その代り私は神殿の修繕には手を貸しませんよ。いいですね」


 「もちろんだ」


 辺境伯はむっすりしてさっさと帰って行った。


 そんな訳で魔源石は教会で預かられることになった。


 *~*~*


 その頃クレアの元にエクロートから手紙が届いた。


 バカルはザイアス国王が魔術師デオロイの言いなりになっていてザイアス王は貴族たちからも信頼を失って貴族たちは次々にザイアス王を見限っていると。


 ロイド王太子に至ってはミリアナに入れ込んでまともな判断すら出来ない状態になっていると。


 そしてこの騒動で一番怪しいのがグロギアス公爵で今その周辺を調べていると書いてあった。


 アリーシアが王女と知って彼女の事を心配していたが、とにかくアリーシアはバカルには絶対に来させないようにと書かれていた。


 クレアとエクロートはともにイエルハルドの王宮に使えていた仲間だった。


 そしてエクロートは女王フローラの夫リジェクの弟でもあった。


 要するにエクロートはアリーシアの叔父になるのだった。


 だが、アリーシアを守るためそのことは絶対に表に出してはいけない事だった。

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