第2話 辺境に向かう

 いよいよラマンダー(赤竜)ガロンの背に乗っていよいよ飛び上る時が来た。


 ガロンは「きゅる~」(行くよ)と一声鳴くと大きく翼を広げ何度か翼を羽ばたかせた。


 と思うと身体がふわっとして一気に空に舞い上がった。


 「しっかりつかまれよ」


 「はい」緊張で身体じゅうに力が入った。



 初めて乗った竜の背中はとても固くごわついていた。それでも黒翼騎士隊の隊長が付いていたのでガロンは大人しく言うことを聞いて私を背に乗せてくれたらしい。


 隊長のリントさんは40代のいかつい男性だったが、ガロンに対する思いはとても優しさで溢れているとわかった。


 最初は緊張したが少しすると気持ちいい感じがして私は空の旅を楽しんでいた。



 あっという間の空の旅が終わりキルベートに着いた。


 黒翼騎士隊の獣舎目指してガロンが高度を下げ始めあっという間に地面に降りた。


 緊張でがちごちになりながら竜から下りた時にはさすがに脚ががくがくしてリント隊長が気の毒に思ったのか手を貸してくれた。


 「ガロンありがとう。とっても乗り心地良かったわ」


 「きゅるぅ」(俺も楽しかった。また乗せてやるぞ)ガロンがそう言った。


 「うふっ、ありがとうガロン」


 私はつい言葉にする。


 ガロンは瞳をうっとり閉じて首をこくんと振った。


 「おい、お前大丈夫か?」


 リント隊長が心配そうな顔で聞く。


 「いえ、何でも…リント隊長ありがとうございました」


 (ガロンに話しかけておかしな奴だと思われたんだ。それにあんたからお前呼び。はぁぁぁ~


 まあ、もうガロンと関わることもないんだろうけど…寂しいな)


 私は一度深呼吸した。


 「まあ、このくらいどうってことない。さあ、教会まで送って行くぞ」


 お礼を言ったら隊長は照れ臭そうに頭をがしがし掻きむしった。 


 きっといい人なんだろうと思う。


 「あっ、でも、私、教会には一人でも行けますしこれ以上ご迷惑をおかけするわけには…」


 「これは任務だから、悪いが一応最期まで見届けないといけないんだ」


 「そうでしたか、ではお願いします」


 (やはり誤解されているらしい。私はアギルに何もしていませんって言いたくなる。でも、これ以上関わることもないんだし…まあいいか)


 少しむっとしたが頭を下げる。


 そしてキルベートの教会に辿り着いたのはもう日も暮れかかったころだった。


 私は騎士隊から馬車に乗せられて教会までやって来た。リント隊長は御車台に乗ったのだったが。


 「じゃあ、俺はこれで。神官。確かにアリーシアを届けたからな」


 リント隊長はやっと用が終わったとばかりにさっさと帰って行った。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る