第6話

 朝、梅田駅を出て、大阪メトロ御堂筋線で、なんば駅を通った。

「私、若いころ、戎橋で、ナンパされたよ」

 と言った。

 キヨテルは、急に嫉妬しそうになった。

 本当は、俺こそ、一緒にいたいとずっと思っていたのに。

 急に、昨日、京都河原町駅で怒った男を思い出した。

 確かに、ミツキは、少しだけ、女優の誰それに似ているとか、言われていた。実は、中学・高校時代とずっと演劇部だった。

 しかし、高校時代のとき、同じ部員の地味な女子が、何と東京のWOWOWのドラマに出演が決まったと聞いて凹んだ。

 勿論、彼女は、エキストラだったが、30秒も出ていた。

 汚れ役だった。

 五反田界隈のクラブのホステスの役だった。

 それから、しばらくして、彼女は、今では、ネット配信ドラマに出ているが、女優をしている彼女を観ていて、際どい水着を着たり、たまに、週刊誌にゴシップ速報があって、みんなは、ハラハラしていた。

 そして、ミツキの高校にも、「彼女は、どんな人だったか」と週刊誌の記者が来ては、結構、迷惑をしていた。

 そして、いつしか、ミツキは、「夢は、女優になること」を諦めた。

 御堂筋線なかもず行きは、大国町、動物園前、天王寺駅まで来た。

「キヨテル」

「何?」

「天王寺で降りようよ」

 と言った。

 御堂筋線を、天王寺で降りた。

 そして、そのまま、四天王寺前夕陽ヶ丘へ向かって歩いた。

「四天王寺って、言えば、聖徳太子やね」

 とミツキは、言った。

「そうだなぁ」

「聖徳太子って、何人も、人の話をいっぺんに聴くことができたそうよ」

 と言った。

 ミツキは、そんなに仕事ができない。

 よく上司に怒られる。

 そして、家に帰ったら、上司の不細工な顔をイラストで描いて、パンチをしていた。

 ミツキは、学校を出て、社会に出たら寂しいと思った。

 なかなか、学校時代の友人に会えないもんな。

 四天王寺に着いたら、猿軍団が来て、何か芸をしていた。

 そして、人だかりができていて、みんな、動画を撮っていた。

 そのまま、ミツキは、キヨテルと二人で、四天王寺でお賽銭をした。

 1000円を払った。

 そして、四天王寺を出た後は、再び、天王寺駅に向かったが、そこにホテル街が、あった。

 見たら、ショートカットの女性が、男性と恥ずかしそうにホテルへ入っていた。

 二人は、少しだけ照れた。

 谷町筋を、バスが走った。

 バスの運転手さんは、女性だった。

 そのまま、二人は、あべのキューズモールへ向かった。

 あべのキューズモールのフードコートで、ラーメンを食べた。

 そして

「ちょっと、服が見たいな」

 とミツキは、言った。

 そしたら、金髪の店員さんが、ミツキに

「このシャツは、どうですか?」

 と言ったら

「私、胸、大きいねん」

 と恥ずかしそうに言った。

 昨日のホテルを少し、思い出した。

 そして、店員さんを、冷やかしながら、また、御堂筋線の天王寺駅に向かった。

 天王寺駅まで再び、出た。

 改札口を出たら、駅のプラットフォームは、もうホームドアになっている。

 バリアフリー化になっている。

 時代は、もうバリアフリー化になってきた。

 そして、

「まもなく1番線になかもず行きが、参ります」

「ホーム柵に物を立てかけたり、もられないでください」

 と

 アナウンスが、流れた。

 なかもず行きの電車が、入ってきた。

 運転士は、女性だった。

 そうだ、もう、女性が運転士になっている時代だ。 

 そして、駅員さんも、女性がいた。

 40代後半になっているキヨテルは、昔は、運転士になるなんて言ったら、男性鹿いないと思い込んでいた。

 そして、地下鉄で女性との出会いはない職場と思っていた。

 キヨテルは、東京の人間だったから、御堂筋線を「丸ノ内線」と言っていたが、今では、「御堂筋線」と言っている。

 電車は、天王寺駅を出て、昭和町、西田辺、長居を通った。

 あびこ駅を通って、堺市北区の北花田駅に、キヨテルとミツキは、着いた。

 そして、そのまま、二人は、ハイツに入ってから、ミツキは、キヨテルの部屋の乱雑さに気がついた。

「あかんやん」

 と開口一番、ミツキは、言った。

「この部屋、汚いよ」

 と言った。

 ハイツの窓を開けて、そして、リビングルームのテーブルには、エロ雑誌があった。そして、使い果たしたティッシュペーパーが、しおしおになってあった。

「これは、何?」

 と言った。

「私が、おるもんなぁ」

 とミツキは、言った。

 ミツキは、部屋の隅々を掃除始めた。

「あ、ここに上白石萌歌のカレンダーがある」

 と大きな声で言った。

「これが、いけないんや」

 とピンで留めていた上白石萌歌のカレンダーを取って、破った。

「私の方が、上白石萌歌ちゃんよりもかわいい」

 と言った。

「キヨテルは、そこで休憩しな」

 と言った。

 掃除機をぐいーんとかけて、そして、2時間は、掃除をした。

 あっという間の休日だった。

 夜は、もう、ミツキは、帰って行った。

 ミツキは、お好み焼きを用意して帰った。

 

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少し、あの街まで マイペース七瀬 @simichi0505

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