ようやく春と感じることが多くなった。花粉とか桜の開花とか、指標になるものもあるけれど、もっと感覚的な話がしたい。家を出た時に最初に吹かれる風の冷たさが緩くなったり、陽の光が強くなっていたり。

 昔、春は嫌いだった。大好きだった先生がいなくなる。中の良い友人とクラスがが離れ離れになる。新学期特有の環境の変化が春に一度に起こるものだから、ずっと冬のままで止まって欲しいと思う時もあった。

 学校に通うことが無くなってからは、春が少ずつ好きになっていった。寒くて暗い冬から少しずつ色がついていくような感覚。上着を着なくても外に出られるようになった開放感。悲しいことよりも嬉しいことがどんどん増えていった。

 車を走らせていると、遠くの山の雪が以前よりも溶けていた。少し前まで大量の雪が降っていたのに、青い部分が増えている。使われなくなった田んぼに雑草が生え、ピンク色の小さな花を咲かせていた。近所の家の猫が日向ぼっこをし、にゃあんと鳴いている。空の青が以前よりも濃くなった。子どもたちが近くの空き地で遊ぶ声が聞こえる。そういった小さな日々の変化で、私は春を感じている。

 来月からの就職が決まった。久しぶりに自分に関係する変化が訪れた。でも、もう大丈夫な気がする。明るい気持ちでこの変化を受け入れたい。

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