はつこい

果澄

第1話

 夢の国の星を撒いたみたいだ。

 カラカラと音をたて皿に転がる金平糖を見ておもう。

 ピンク、白、黄、緑……淡く色づいた星の粒。

 ひとつ摘んで口に入れる。


 舌の上で転がす。でこぼこした感触が気持ちいい。

 砂糖が溶けだしてきて、口の中に甘さが広がった。


 しばらくそうしていたところで、金平糖は噛んで食べることを思い出した。

 もったいないかも、と思いつつも噛み砕く。

 じゃりじゃりとした星屑からは、想像していたよりも濃厚な桃の味がした。




 廊下を軽やかに弾む音が近づいてきたかと思うと、リビングに繋がる扉が勢いよく開かれた。

「今日のおやつなに?」

 もう少し静かに扉を開けなさい、そんなわたしの言葉をさらりと流し、カウンターからひょいと身を乗り出す娘。


「金平糖だ! かわいい~」

「おばあちゃんにもらったの、ひな祭りのお菓子だよって。でもその前に……『扉は静かに開けなさい』わかった?」

 「はぁい」と、しゅんとしたかと思った次の瞬間には「金平糖♪」と踊っている。


 やれやれ、聞いてるんだかいないんだか……。


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