第11話 村人ゲット!
「ふむ。お前さんのいう事が事実なら、確かに冒険者としてやっていく分には問題ないな。むしろ、マエストロのわしより向いているぐらいだ」
俺の説明を聞き、ガッソーが納得を示す。
「サイキョウは何故そんなにスキルに詳しいの?」
「ま、うちは代々冒険者の家系でね。その積み重ねの集大成が頭に入っているのさ」
ヴェルネの質問に、俺は自分の頭を指さし大嘘を答える。ゲームの外から来ましたとか言ったら、頭がおかしいと思われてしまうからな。
「師匠……」
「まあヴェルネ達が良いってんなら、わしは構わんよ。村人では無理だと反対していただけだからな」
「こちらとしては大歓迎ですよ」
「話を聞く限り優秀そうだし、断る理由はないわね」
「ありがとうございます!」
オーバーはすごく嬉しそうだ。冒険者になれるのがそんなに嬉しいのだろうか?
「ただまあ……その前に一つ、君に確認しておく事がある」
「な、なんですか?」
「俺達の目的は魔王を倒す事だ」
まあ俺事態の目的は、そのさらに先にいるラスボスの討伐な訳だが、とりあえずの目標は魔王討伐だ。
オーバーは冒険者になりたがっているが、普通の冒険者は魔王討伐を目指したりはしない。そこそこレベルを上げて、そこそこの生活で満足する物である。もしオーバーがそのタイプだとしたら、パーティーに入れる訳にはいかないだろう。魔王戦までがっつり手伝ってくれないのなら、結局、他のメンバーを募集する羽目になってしまうからだ。
それだったら最初っから別の人間を探した方がましである。低レベルから強いクラスなら乗り換え前提の途中まででも構わないが、【限界突破】持ちの村人は高レベルからが本番だからな。『強くなりました、抜けます!』とかやられたら死ぬほど腹が立つし。
因みに、ヴェルネと、それを手伝うって形のガッソーは魔王討伐までって事になってはいるが、そこで二人が抜けてしまう心配はほぼ無かった。何故なら、討伐後は世界の命運を賭けた感じのイベントがガンガン進むからだ。手伝わず放っておいたら世界が滅びてしまう訳だから、魔王を倒したからバイバイとはならない筈である。
「俺達のパーティーに入るって事は、自動的に君にもそれに参加して貰う事になる。ただ冒険者としてやっていきたいだけなら、悪いが他を当たってくれ」
「ガッソーさんからヴェルネさんとの話を聞いていたので知ってます!俺も魔王討伐に加わります!」
ノータイムで返事が返って来た。その表情は真剣そのものなので、いい加減に口にしたという感じではない。
「言うまでもないけど……魔王討伐は危険が伴う。半端な覚悟じゃ務まらないぞ?」
魔王と闘うってのはゲームなんかと違って、いっちょやってやるかって軽い気持ちでは務まらない。ヴェルネは祖父や親の仇。ガッソーは元仲間の仇と、その孫のためと言う理由がある。けどオーバーは……
ぶっちゃけ、そういう物がないと、ちょーっと信頼度に難が出て来るんだよな。以前の俺なら気にも留めなかっただろうけど、パーティーを追い出されて以来、ちょっとした人間不信が芽生えてしまっているから。
「俺……実はダークエルフの里から追い出されたんです。4年前に」
エルフ系は基本ハンターか精霊術師しかいない。なのでクラスが村人で生まれて来たオーバーが異端として疎まれても、まあおかしくはない。田舎的な村八分なんかと一緒だ。
「だから俺、見返したいんです。俺を追い出した奴らを。村人でも強くなれるんだって」
「ダークエルフは強さを信奉してる所があるからな。魔王を倒したとなれば、いやでもオーバーへの評価は変えざるえない」
ガッソーがオーバーの言いたい事を補強する様に、ダークエルフの価値観を教えてくれる。
「なるほど」
追い出した奴らを見返したいとか、シンパシーを感じざるえない。こういうのを運命って言うのだろう。
「よし!採用だ!これからよろしく頼むぞ」
「は、はい!俺、頑張ります!」
ダークエルフの村人がパーティーに加わった!
こう言うと、なんか残念なのが加わったみたいに見えるからあれだな。
まあ気にする様な事でもないが。
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