第10話 限界突破
――クラス:村人。
村人はアレスワールドにおける最弱クラスだ。圧倒的にステータスが低く、戦闘系のスキルも【凡庸】一つだけ――全てのステータスがレベル×1%だけ上がり、上限レベルは50——と来ている。しかもその【凡庸】でステータスが最大1,5倍になっても、それでもなおステータスはぶっちぎりの最下位のまま。更に攻撃スキル等もないのだから、正に最弱クラスの鑑の様な存在と言っていい。
唯一良い点を上げるなら、装備制限がない所だろう。
装備品にはクラスごとに制限があり、装備自体が出来ない訳ではないが、大きなペナルティが発生する事になるのがこのゲームの仕様だ。
例えば炎の魔剣を、ペナルティを受ける魔法使いが装備した場合、攻撃力や攻撃速度は元より、炎のによる追加ダメージすら発生しなくなってしまう。こうなると、同レベル帯の魔法用の杖で殴った方がダメージが上になったりするので、適性外の装備を使うのは基本的にデメリットしかない。だが村人なら話は変わって来る。なんでも装備し放題である。
ま、制限が無くても村人はくっそ弱い。その点に変わりはないけど。
え? なんでそんな弱いクラスが存在しているのか?
その理由は簡単である。縛りプレイ。そう、やり込み勢御用達の縛りプレイの為に、このくっそ弱いクラスは存在しているのだ。そういう意味で、村人にはちゃんと需要があるって訳さ。俺も村人入れてクリアした事あるしな。まあだからって、人生のかかってる一発勝負かもしれない今の状態で、弱い村人を入れる気は更々ないが。
「一応魔王討伐を掲げるパーティーだから、村人はちょっと……」
「俺には……俺には……俺だけのスキルがあるんです!だからお願いします!」
「スキル? どういったスキルなんだ?」
ぶっちゃけ、村人にちょっといいスキルが付いてるぐらいじゃその評価はひっくり返らない。が、まあ一応聞いておく。
「俺のスキルは【経験値ペナルティ無効】と――」
――【経験値ペナルティ無効】
パーティ―を組んだ場合、レベル10以上差があるメンバーに経験値は分配されない。だが、経験値ペナルティ無効のスキル持ちがいる場合、そのパーティーではペナルティが一切発生しなくなる。つまりレベル1と90とかでも、均等に経験値を分配できる様になるという訳だ。
まあ正直、このスキル自体は微妙と言わざるえない。キャラが死亡して補充を入れる際、外部支援によるパワーレベリングが必要なくなるのは便利だが、逆に言うとその程度である。最終的な強さの底上げには一切繋がらないので、このスキルを持っているからって村人を入れるという選択肢はない。
「もう一つ……【限界突破】です!」
「え? まじで?」
二つも固有スキルを持っている事も驚きだが、それがスキル限界突破と聞かされ更に驚く。何故なら、それはくそ雑魚クラスの村人が、唯一戦力になりうるスキルだからだ。
――【限界突破】
これはスキルレベルの上限を二倍にするスキルだ(ただしレベルの上限は99)。そして単純にスキルレベルを倍にするだけではなく、レベル上限が高いほど、限界突破部分に補正がかかる仕様になっていた。
元の上限が10の場合は1,25倍。20の場合は1,5倍。30なら2倍。40なら4倍。そして50なら、8倍になる。つまり、上限レベルの高いスキルを持っているクラスほど、その恩恵が高くなるわけだ。
大抵のクラススキルは10から20。高い物でも30程度だ。40とかはもう、戦闘と関係ないものが大半である。だが村人だけは違う。レベル上限が50の戦闘スキル【凡庸】を習得できた。
村人の【凡庸】をレベル99にまで上げた場合の補正は――+442%。つまり約5,5倍だ。元がかなり低いとは言え、ここまで補正がかかればそのステータスは全クラス中、三位に大差をつけた二位となる。そうなると侮れない。スキルが無いとはいえ、装備ペナルティが無いのを上手く利用すれば万能キャラ並みの立ち回りも可能だ。
因みに、ステータス一位は主人公キャラ限定の究極超人である。しかも断トツ。
「それなら将来有望じゃないか」
「本当ですか!!」
「お主は何を言っとるんだ。いくらスキルがあるとはいえ、オーバーは村人だぞ」
俺の言葉に喜ぶオーバーと、何言ってんだコイツはって反応を返すガッソーさん。どうやら彼は【限界突破】の仕様を知らない様だ。まあ超レアスキルな訳だし、それも無理ない話ではある。
「いいですか。ガッソーさん。オーバー君の持つ【限界突破】は――」
なので俺は【限界突破】と、村人の【凡庸】がどれぐらい相性がいいのかを説明した。
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