由奈

1-1

第1話

夜、7時半過ぎ。


プルルルル、プルルルル


「もしもし?チイコ?仕事中でしょ?」


まだ、スマホも無かった時代。


「こんな時間に、ごめんね〜。」


チイコは私の従姉妹。香椎智恵子、現在21歳。


ちょっと、ぽっちゃりだけど、愛嬌のある顔で、みんなにも可愛がって貰える子。


「どうしたの?」


「ね〜由奈、お願いがあるの。今からお店に来てもらいたいんだけど…。都合どう?」


彼女は、街の夜のお店で働いている。


「いいよ。いつもの?」


「それもあるけど、ちょっと違うかな。じゃ、8時半位ね。待ってるから。よろしくね〜〜。」


「わかった。じゃ、あとでね〜〜。」


電話を切って、急いで準備して鍵をかけ、駐車場に向かった。


車で30分。お店の駐車場に停めて、徒歩で5分、時にお店のキャッチにキャストスカウトされながら、「MOON CAT」についた。


「いらっしゃい。」


「こんばんわ。チイ居ます?」


ゆり子ママにカウンターに案内されながら、おしぼりを受け取る。


「こんばんわ、由奈ちゃん。いるわよ。待っててね。」


「すみません。」


挨拶が終わると、ゆりママは元のお客さんの所に戻って行った。


「由奈、ごめんね〜。呼び出して。いつものでいい?」


と相変わらずの笑顔でやって来る。


「今日は、何も無かったからいいよ。チイ、今日はカシスがいい。」


オーダーを取り終えると、了解〜と言いつつ、奥に準備に行った。

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