第23話 窒息
夜遊びをしたくてしたくて仕方がなく、とても憧れがある。夜通しカラオケで友達と語り合ったり、クラブで踊りあかしたり、クラブで知らない人に話しかけられたり、バーで見知らぬ人と語り合ったり。私はグレているのだ。でも、どうせクラブに行っても、誰かに話しかけられても、この心の満たされなさは一時的にまぎれたとしても根本的には埋まることはないとは分かっている。翌朝、夜遊びまくったことを後悔しながら目をこすることぐらい容易に想像できる。子供のときに親に食べるなと言われていた体に悪そうなお菓子を大人になったら食べようと心に決めていても、いざ大人になったら、もうそれがいかに体に悪いか、そして食べても幸せになれないことを分かるようになってしまったために一生食べないのと同じように。
自分の体は別にどうでもいいと最近思っている。自分の中身ではなく、自分の容器に需要があるのだって別にそれはそれでいいような気がしている。容器すら見向きもされないような人生を送ってきたのだから。容器に需要があるのだとしても、もしかしたら私の中身を愛してくれているのかもしれないと一時でも勘違いさせてくれるならそれでいい。不倫や、とっかえひっかえすることに、やたら厳しい社会に抗おうとしているのかもしれない。社会の正しさは、誰かが決めたことでしかなく絶対的なものではない。
最近、前日の嫌なことを紛らわし振り切るように朝に調理をしていたら、包丁で指を切ってしまった。まな板と包丁の木の柄の部分が赤く染まって、涙があふれてきた。その傷が、夜、嫌なことを考えていたら、うずいてきた。なんか中二病ぽいなと思いながら、なんだか自分が満身創痍で、体も心も傷だらけな気がしてその事実に救われたような気がした。病んでいることがステータスだと思っているのかもしれない。自分が病んでいることに安心しがちなところがある。心の病みを直したいと思いながら、治らなければいいのにと思ってしまう。病んでいることがデフォルトで、病んでいることで自分は自分に酔えるし、自分を許せるし、自分を特別だと錯覚させてくれる。窒息していられるのは、案外心地よい。
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