P.10『全部、茜色』

 校庭が、街があかねに染まる。放課後の景色はもう何回も見られない。 この時間が名残惜しくて、ずっと飲み込んでた言葉がこぼれる。


「あのさ」

「どした?」

「あの、えと……。私、ね?」


 必死に言葉をつむいで届ける。最後まで聞いた君は、照れながらうなずいた。


「よろこんで」


 私も君も世界も。全部、茜に染まった。

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