鶴(腐女子)の恩返し

伊勢カイン

鶴(腐女子)の恩返し

 むか〜し、むかし。

 あるところに、猟師の青年が住んでおったそうじゃ。


 ある日、山で柴刈りをしていた背年は、二人の男性が表紙の薄い本を見つけたそうな。

 青年がその本に近づくと、そのすぐそばに罠にかかった鶴(鳥類)を見つけたそうじゃ。


 青年が鶴(鳥類)をかわいそうに思い、罠から逃してあげたことから、この物語は始まる。



 ◆ ◆ ◆



 その晩——


——コンコン


 青年の家の扉を叩く音。


「こんな夜更けに誰だ?」

「わたしは旅の者です。

 道に迷ってしまい、日が暮れてしまいました。

 ここに泊めさせていただけませんか」


 扉の外からは女の声。

 不審に思いながらも扉を開けると、そこには美しい娘がおりました。


「それはお困りでしょう。

 どうぞ、粗末な家ですが休んでいってください」


 青年は娘を家に招き入れると、暖かいお粥でもてなしました。


「わたしの名前は鶴(つう)といいます」


 娘は青年に優しく微笑む。

 青年には下心があったので快諾しましたが、奥手のヘタレだったので、その晩は何もおきません。


 しかし、そこが娘のヘキに刺さりました。


「わたしには行くあてがありません。

 どうか、ここに住まわせていただけませんか」

「それはかわいそうに。ここでよければ」


 青年には下心があったので快諾しましたが、やはり奥手のヘタレだったので何もおきません。


 しかし、そこがますます娘のヘキに刺さりました。

 その夜から毎晩、娘は紙とペンを持って部屋に引きこもります。


「描けました。

 泊めていただいた恩返しです。

 この薄い本を町の即売会で売ってお金に替えてください」


 青年は『男性のイラストが描かれた薄い本』を段ボール単位で受け取ります。


「ただし、絶対に本の中身は見ないでくださいね」



 ◆ ◆ ◆



 娘の指定した本を売る場所は、島サークルではなく壁サークルでした。

 本は飛ぶように売れ、青年は大金を手に入れます。


「あの、写真いいですか?」


 なぜか客から撮影を求められましたが、コスプレエリアではないので青年はお断りします。


 それからというもの、娘は度々新作の本を青年に渡し、青年はそれを町で売って暮らしていました。

 しかし、青年はどうしても本の中身が気になり、見たくなってしまいます。


 ある日、サークル設営と両隣への挨拶が終わり、開場までの空き時間で本の中身を開いて読んでみると——


 そこには、主人公の男が、猟師の青年をモデルにしたとしか思えないキャラクターに対して……。



 教訓:見るなと言われたものは見ないようにしよう。



 ◆ ◆ ◆



 一方そのころ、猟師の青年に助けられた鶴(鳥類)は他の鶴(鳥類)たちと無事に合流でき、幸せに暮らしていましたとさ。

 めでたしめでたし。


※鶴(つう)が鶴(鳥類)の化身だなんて本文中に一度も言っていません


————


 作者の伊勢カインだ。

 異世界小説を書いている。


 この話の何が恐ろしいって、部分的に実話が混じっているところだな。

 どことは言わないが、恐ろしいぜ!


 気が向いたらまたこういうの書きたいと思うから、そんときはよろしくな!

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鶴(腐女子)の恩返し 伊勢カイン @isk1

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