エピローグ

超超安産



柔らかい春の風に桜の花びらが舞う季節。


保育園では新入園児が沢山入る時期でもあり、相変わらず慌ただしい日々が過ぎていった。



「お疲れさまでしたー」


疲れて毎日くたくたで楽しい事だけじゃないけど、やりがいは凄くあると感じている。



「アリカ先生、何か最近イキイキしてますよね……」


"彼氏といい感じなんですねー。いーなー"なんて、三好ちゃんにジト目で見られるものだから、



「そ、そんな事ないよ?」


どんな噂を流されてしまうか焦ってしまう。


この間なんて"結婚秒読み"の話を流されて大変だったんだから。



駐車場に向かいながら鞄からスマホを出すと、メールが何件か入っているのに気付いた。


ダイかな、なんて受信箱を開けば、それは──



「う、産まれたぁ??」


ユミからの出産報告だった。


「アイツ、超超安産だったんだって」


なんて、ダイは可笑しそうに"ユミらしぃよなー"なんて口元を緩めた。


ユミの病院には、丁度大学の春休みで帰省していたダイと向かっている。

隣を歩くダイが、甥っ子が産まれて凄い喜んでいるんだと伝わってきた。



「超超ってなにそれ?」


「分娩室入って1時間半だったんだと」


私逹の間に笑い声があがる。



「ユミの赤ちゃん楽しみだなぁ」


「俺、おじさんかぁー……」


はぁーと、ダイは少し嬉しそうに息を吐いて、私の手にする紙袋に目を向けた。


紙袋には水色のロンパース、帽子、ミトン、靴下セットをラッピングした物が入っている。


これはダイと2人で選んだもの。



「夢の方は頑張ってんの?」


ダイが視線を上げれば再び私と目が合う形になった。


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