すぐ泣くからさぁ
その瞬間──、
「ふがっ!!」
思いっきり鼻を摘ままれた。
「んなわけねーだろ!バーカ!!」
「もー、離してよ」
ダイが私の耳元で大きな声を出すから、周りの友達からも笑い声が上がる。
「アリカのスピーチさぁ」
そして、ダイの仕返しと思われる攻撃が始まった。
「え?」
「本当にあれは良かった。定型文まるパクリっぽいのに、アリカが本当にずーっっと泣いてるから凄く泣けた」
「いやー!それ言わないでよ!」
確かにユミへの手紙という形で読んだスピーチは、忙しかったという理由もあって本をそのままうつして書いてしまったんだ。
寂しい思いに付け加えて、アルコールが入ってしまった私は手紙を読んでいる間、あり得ない位にずっと泣いていた。
「ったく。アリカ酔うとすぐ泣くからさぁ」
「うるさいっ!あんたには私の寂しさが分からないのよ!!」
なんて私の声と地元の友人達の笑い声が辺りに響いたところで、
「あれ?もしかして、アリカちゃん?」
なんて私の名前を呼ぶ低い声が耳に入る。
声の主の方へ振り向いてみれば、確かに会った事のある男の人が立っていた。
「凄い偶然だね」
「あ……、」
スラリとした体格ににっこりと自然な笑顔を向ける。
名前は忘れてしまったけど。
あの時の、三好ちゃんに連れられて行った合コンにいたあの人だとすぐに分かった。
何度か連絡はきていた。けど、気が進まなかったのと本当に忙しかったから"あの日"以来になっていたのだ。
「俺は、小林と地元が一緒でさ……」
「あ、お久しぶりです!私はユミと友達で」
「忙しかったらしいね。なかなか会えなかったけど……」
そう話し続けるものだから、外野はもちろん黙ってなんかくれない。
「あー、すみませ……」
「アリカ、知り合いなのー?」
"すみません"という私の言葉は高い叫び声に遮られてまう。
「えー、誰?誰?」
なんて、さっきまで知らない人達に囲まれて、近付けなかったユミまでもがこの輪に入ってきた。
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