あたしと将来

ないものねだり



「アリカ先生って本当に凄いですよね?」


「え?」


園児逹を送り出した後、私の座る保育室のテーブルを覗き込んできたのは、いつも遠慮の無い発言をする三好ちゃんだ。



「あー、これ位だったら持ち帰らないでパッパと書いちゃおうと思って!」


テーブルの上には子供逹が登園してからすぐ遊べるように、リクエストされたキャラクターを描いた画用紙が広がっていた。これを元にステッキに付けたり、バックを作ったりしている。



「本当に絵上手ですよねー!」


なんて三好ちゃんは目をパチパチとさせながら、口を開くけど。



「えー?またまたぁ?」


今更この間の、適齢期云々言ってくれた事は取り消さないからな。



「子供逹の作るアニメのお面のイラストもすいすい描けちゃうじゃないですか?」


「そう?」


「そうですよ!私の友達もイラストが上手い子がいるんですけど。あ、その子は絵本作家希望してるんですけどー」


「へー」


「もー!本当に羨ましいです!!!」


「えー。でも、絵本とか資料見ないと描けないよ、歪んでるし」


「でもでも、私が描く絵は本当に奇妙でこの間泣かれちゃったんです……」


目の前でションボリとする三好ちゃんは、確かに破壊的に絵が下手なんだよね。



「絵だけじゃないよ。三好ちゃんは女の子逹とすぐ仲良くなるし、ピアノだって上手じゃない」


「せ、先輩!!」


「わわっ!!だ、抱きつかなくていいからっ!!」


あの頃は絵とか話を考えるのが楽しくて、喜んでくれる子もいたから、中学の頃までは自分で絵をかいたりしてたっけ。





描かなくなったのは、いつからだろう。


子供と関わるの好きだしピアノもやってたから保育士という職種を選んだ筈なのに、大切な何かを置いてきてしまった気がする。


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