真紅

第1話

『もしもしgrisグリさん?大丈夫ですか、場所わかりました?』


「あ、はい……たぶん」


『ほんとですか!?15分前にもそう言ってぜんぜん着かないじゃないですか〜』


「えぇ〜、大丈夫ですよ」


『やっぱり私が迎えに行ってれば……』




まだ続きそうな電話を途中でぶつ切り、スマホをしまう。


そろそろ着くと思うんだけどなぁ、駅から徒歩5分って言ってたの嘘じゃないかな。



それにしても、表参道っていつ来てもキラキラしたお店とオシャレな人で溢れている。


今の私の見た目だとそうとう浮いてると思うけど、もう事務所もぜんぜん見つからないし暑いし喉渇いたしで、ひとまず事務所探しはおいといて近くのカフェに寄ることした。



黒の枠組みにガラス張りの壁。


紅いベルベットの貼ったアンティークな椅子がテラスに出ている、カフェドルージュの看板。



センスいい〜!可愛い!


パリのサンジェルマン・デ・プレあたりにありそうなカフェだ。



大きなギターケースを担ぎ、目深に被ったキャップと眼鏡で、顔をほぼ隠した怪しい姿で店内に入る。

店員さんがちょっとギョッとしたけど、それを気にせずに案内されたテラス席に座る。



頼んだアイスカフェラテが届いたとき、店に面した道路から賑やかな声が聞こえてきた。



「あちぃ〜溶ける〜」


「だから車回すって言ったじゃん」


「だって新しくできたアイス屋行きたかったんだもーん!ねー?RUIルイくん」


「ん〜」


「RUIはアイス食ってねえじゃん」



派手な見た目の若い男性が4人で目の前の石畳の道を歩いてくる。


平日の昼間といえど、ここは表参道。


人通りもそれなりにあり、周りにいた数人の歩行者がにわかに騒ぎだした。

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