投句控へのやうなもの

霧深きネス湖は今日もしづかなり


鳥渡るソーラーパネル建つ畑に


王手飛車岳父にゆるす将棋の日


部屋貸しますベーカー街221A

濁点がない戦争にたたかひに


狼が来たと叫べばひとりぢやない


BVLGALIの蛇も化粧すクリスマス


そば清のごとく消へたし大晦日


やまびことエコーの出逢ひ春兆す

水仙と同じ相手に恋をする


ふらここや口笛細く夜は長く


明日には仕舞はるること知らぬ雛


白昼の死角に消へた蝶を追ふ


めきめきと花の咲く音する夜明け


王羲之の酩酊写す目狩時


郭公のつまにな告げそ子のゆくへ


牛の目の大きさほどの梅漬ける


第一声完全四度で鳴く郭公


蛇の目をして竹藪にひそみけり


家族には姉妹あねいもとなき甲子園


琥珀溶け虫眠りより覚むる夏


アヲガヘル飛び込みプール緑づく


あらごめんなさいといつて落とす桃


さびしさとわびしさの間よ月清か


新橋で見た月をポン=ヌフで見る


月読は姉に抗ふ夢を見る


みな虚栗の通勤電車かな


悪霊を祓ふ神父の息白し


グランデを選ぶ夜食もコーヒーも


かたはらに柄谷行人積む晦日


そのままの大地震の跡鳥渡る


冬の暮切り絵の街の果てに富士


連勤明け萬緑に立ち向かへない


蛇がゐて患者安らかなる医院


黄桃は入院食で食べたから


 以前歌舞伎座十二月の千穐楽は二十五日だつた

一年の千穐楽やクリスマス


 鳥山明

鳥辺野の山に花あり明明と


 トマス

穴に手は二度と入れまじ染卵

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手習ひはじめ 水無月主水 @JuniMond

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