第3話 最後の入学試験
「でさー、親父に卒業したら彼女連れて帰ってきてやる!って啖呵切った手前、後に引けなくて。目に付いた1番可愛い子にとりあえず声を掛けようと決めてたんだ」
相変わらずアースとカリオンの隣は空席だが、好奇心の強い学生がアースの前や右前方、1つ離れた隣などに腰掛けて話を聞いている。
「数撃ちゃ当たると思ったんだけどなぁ」
「全校生徒がハズレなのだが」
ぼそっとカリオンが呟く。
「そもそも学校のことを調べてから入るでしょ、普通」
先ほどの人の良さそうな少年が上半身を振り向いて訊ねる。
「いや、いろんな国の奴らが来るって言うから、先入観無しに友達になりたかったんだよな」
「先入観だけで今しがた大失態を晒していたぞ」
別の真面目そうな少年が指摘する。
「そうなんだよなー。道理で親父が勝ち誇った顔で『彼女を楽しみにしてる』なんて言うんだよな。まさか男子校だったなんて」
「いや」
と、カリオンが続ける。
「過去10年間の募集要項に性別規程はない」
「じゃ、後輩に女子が!」
「可能性は否定できない。が、過去300年間で女子の入学は1名のみ」
「いたんだな!」
「男装して入り込んだ暗殺者だったらしい。すり替えられた本物は男性だった」
「実質0じゃないか!」
あー、とだらけて椅子に座り込むアース。
周りはそんな様子に生温かい笑みを向けているが、離れた場所になると「あっちは逆に何でそんなことまで調べてるんだ?」と畏怖の視線を送っている。
と。
―――カラーン
鐘が鳴る。
途端に全員が姿勢を正して前を向く。
カツ、カツ、と靴音を響かせて入ってきたのは軍服―だが、どこの国の意匠でもない―を着た銀髪の老人。胸元の鷲の徽章がこの学校のトップ、校長だと示している。
大きな箱を抱えながら姿勢も足取りにも乱れがないことから、見た目よりも若いのかもしれない。
「諸君」
拡声器なしで講堂内全てに届く良い声が響く。
「入学おめでとう、と言いたいところだが、最後の適性検査が残っておる」
校長は箱から銀色の腕輪を2つ取り出す。魔導回路と魔石がついているだけの外見はただの腕輪。
「今から2人一組になって、ウォークラリーを行う」
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