第2話 サッカー青年
「キーンコーンカーンコーン」
帰りのホームルームが鳴り響いた瞬間、高校2年生の俺(小林修斗)はカバンをもって全力ダッシュで部室に向かっていた。
そして、ユニホームに着替えた俺は誰よりも早くサッカーの練習を始めていた。
ウォーミングアップを終えると、他の部員たちも集まってきて、いつもながらに声をかけてくる。
「よ、修斗。今日もお前は早いな」
俺に声をかけてきたのは、俺とコンビを組んでいるミッドフィールダーで同じ学年の佐藤裕太だ。
何故かソフトモヒカンにしている事から、1部では有名人だ。
「お前が遅いだけだろ?裕太が来ないとパス合わせ出来ないんだ。早くしろ」
「へいへい、時期部長のエースストライカーさんの言うことはぜったーい」
そんな軽いノリでも、裕太はすぐに練習ができるようにユニホームを下に着ていた。
「っと、あの人また来てるのか?」
練習をしようとしている時に裕太の目線の先にいたのは、藍色の髪でボブヘアの可愛らしい女性だった。
しかし、見た目とは違い、学校で恐れられているヤグザ組長の娘でもある。
「美咲なら来ているぞ、俺と同じくらいの時にはあそこで見てた」
「マネージャーでもないのに、いつもいるよな」
「邪魔しないならいいだろ」
俺はそう言いながら、強めのパスを裕太に送った。
「邪魔って....あれの事か?」
「そうそう、ああいうのだよ」
その目線の先にいるのは、パス交換だけなのにキャーキャーとうるさい声をあげるギャラリーの女の子達だ。
一応、この学校は去年全国大会に出ているので強豪校ではある。
(まぁ、裕太と守護神のお陰だけどな)
だが、別にチーム全員が強い訳ではなく、裕太の完璧な指示と最強のゴールキーパー・宮野慎二のお陰だ。
逆にその2人が居なかったら、地区予選ならまだしも、全市では戦えるか危ういレベルだ。
全国高等学校サッカー選手権大会の予選を来月に控えている俺たちは、張り詰めた空気感なのにああいうギャラリーは本当にやめて欲しい。
「おーい、そこのバディー!シュート撃ってこーい」
ゴールの近くから声が聞こえると思えば、そこに居たのは、いつの間にかユニホームを土まみれにしている慎二だった。
こいつもこいつで、丸坊主という傍から見れば、ただの野球部という外見をしている。
「よし、やるか」
「りょーかい、何をご所望で」
俺はゴールに向かって走り出す事で、任せると伝えた。
そうして俺の方に来たのは、シュート性のグラウンダーパス。
そしてそのパスは完璧な軌道で、俺のスピードを落とさない最高のパス。
それをトラップした俺は、ゴールキーパーとの一対一、ペナルティエリア外からのシュートだ。
ドライブ回転をかけたボールは、大きく枠外に飛んだ。
「ディフェンダーが居ないんだから、せめて取りやすいとこにしろ!」
枠外に飛べば、普通は反応しないはずだが、慎二にはボールの回転が見えていた。
そのボールはゴールに近づくに連れて、急激に落ちてゴール左隅を撃ち抜くと、俺の後ろから口笛がなった。
「また精度が上がったんじゃないか?」
「当たり前だろ?もうすぐ予選....ここで勝たないと意味が無い、全国大会優勝も夢になる」
俺ら3人の目標は全国大会優勝であり、去年は全国大会に出たまでは良かったものの1回戦敗退という、意味の無い結果に終わってしまった。
それでも、俺と裕太、慎二は注目選手として1度新聞に載っている。
俺はそういうのは練習の邪魔だから逃げていたが、1ヶ月くらい続いたあと、答えた方が早いと思い、答えたインタービューで新聞を飾った。
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