第14話

「次は……T大のゆきちゃんか……」




彼女のSNSには、「T大4年生」「彼氏募集中!」などの書き込みがしてあった。




……彼氏がいないというのは、こちらにとって都合がいい。修羅場にならなくてすむし。




それに、りこちゃんみたいに短期間で帰す・・・・・・ことはあまりない。現にお姫様たちのうち2人は、薬漬けになったせいでずっと俺から離れられなかった。親族以外に心配される人がいる、というのも厄介だ。




俺みたいな見た目であっても、女の警戒心を解くにはかなりの時間を費やさなければならない。




まずは偶然を装って喫茶店で隣の席に……いや、いっそのことナンパするか??




……どーでもいっか。そこは即興でいこう。




俺はいつものポーチ・・・・・・・をリュックに入れ、家を出て駅に向かう。




だんだん空が暗くなり、強風にあおられそうになる。なんか遠くで雷鳴が聞こえてくるんですけど。俺は風神雷神じゃないって。




まあ、こんな小さい苦労もお姫様に会えることを考えたら安いものだ。




ゆきちゃん……どんな女になってるんだろう。可愛くなってるかなぁ。俺より背が高かったらどうしよう。




空模様とは裏腹に、胸をはずませ……という表現は不健全な俺にとって的確じゃないのかもしれないけど、とにかく俺は急いで駅へ向かった。

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