第8話

「……うぅ、…ひっく……」






お姫様を起こしてからもうかれこれ1時間。未だに彼女は泣き止まない。






「りこちゃーん、そこまで泣かれると流石に罪悪感が……」






……言いかけて、やめた。




罪悪感?そんなもん感じるわけないじゃん。俺、同情とかできる人じゃないし。




寧ろ女が怯えて泣いてるなんてシチュエーション、性癖ドストライクでしかないし。




うわ、結構ヤバイ奴じゃん俺。




……でもここまで泣くと、脱水症状にもなりかねないな。







「りこちゃーん、喉渇いたでしょ??お水持ってくるからちょっと待っててね」






俺が寝室のドアを閉めると、すすり泣きと共にカチャカチャ耳障りな音が聞こえてくる。




……バカだなぁ。どう足掻いたって、取れたり壊れたりするはずないのに。




俺はシンクでコップに水を注いで、すぐに寝室へ戻る……




……訳もなく、迷わずそばに置いてあった例のポーチ・・・・・から粉状のものを取り出して、コップの中に入れた。






りこちゃんかわいそ。こんな男に捕まっちゃって。




……なんだ、俺ちゃんと同情できるじゃん。




そんなバカなことを考えながら、俺は今度こそ寝室へ戻った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る