空色の青春

矢木羽研(やきうけん)

空色は青春の色

 穏やかな日差し、爽やかな風。校庭の喧騒すら心地よい。屋上はいいものだ。本来、生徒が入ってはいけないのだが、秘密の合鍵を使い俺は昼休みのひとときを楽しんでいた。


 俺はゆっくりと目を開ける。そこに映るのは空色のみ。しかし空は空でも、紺色の布……スカートの中の空色だ。つまり、パンツ?!


「もーっ! また勝手に屋上に出てる! 先生に言いつけるからね!」


 寝起きの俺の真上から声を上げるのは委員長だ。


「勘弁してくれ! で、何か用か?」

「作文、出してないのあんただけなんだから!」

「わかったよ。明日までには絶対、約束する」

「意外と素直ね」

「もうすぐ卒業だし。それに『空色』に免じて、な」

「ん……? とにかく、約束だからね!」


*


「嘘……」


 ちょうど帰りのホームルームの後だった。委員長はカバンの中を見て、何やら慌てたような声を出した。横目で見ると、カバンには体操服のスパッツが入っていた。


「……見た?」


 彼女は恥ずかしそうに聞いてきた。なるほど理解した。スカートの中にスパッツを穿いていたつもりが、忘れていたということに今になって気付いたのだろう。


「ああ、見事な『空色』だったぞ」

「もう、馬鹿!」


 空色の日々は、もう少しだけ続く。

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