シスター
山猫拳
1
スニーカーの先端は
トレーナーの腕の内側が破れたままになっているせいでランドセルの金具が
クラスメイト達は寒いから早く家に帰ろうぜと言って、
土と
今はそれが嘘のように静まり返っている。その沼の様な草むらの隣に、僕の住んでいるアパートがあった。
沼の横まで来た時に、朝学校に行くときに見たウシガエルの死体がまだアスファルトの上にあるのを見つけた。おそらく車に
本来なら冬眠中だから、道路に出てきて車に
鉄階段を上ってアパートの二階に上がり、時々ご飯をご
鍵を差し込んでドアを開ける。ただいまと
母さんが生きていた頃も何回か電気が止められた。その度に母さんがお金を
「アキちゃん!」
アキちゃんは中学の制服を着たまま扉に背を向けて座っている。小さな折り畳み机の上に工作用ボードを
「ユキちゃん、おかえり。びっくりしたよね、電気、止められちゃったね」
僕は
「お母さんが生きてた頃にお金探してたところ、全部調べたんだけど、どこにもお金入ってなくて……お父さん今日帰って来るかな?」
「あんな奴お父さんじゃないよ。それ、なあに?」
学校の課題で切り絵をやってるのと言って、アキちゃんは少し困ったように笑った。アキちゃんの右手にはカッターナイフが握られていた。
描きかけの絵と思っていたものは、よく見ると黒い紙が細かく切り抜かれていて、残った黒い部分がまるで線が描かれているように見えていただけだった。完成するとシンデレラが住んでいるようなお城が出来上がるのだと思った。
夕陽に照らされたアキちゃんの大きな黒い瞳にオレンジの光がきらめいて、細い鼻も色の薄い唇も暖かい色に染まって、まるでこのお城の住人のようだと思った。アキちゃんは僕の三つ上の姉で、僕にとってはアキちゃんだけが正しさの全てで、この世で最も大切でキレイなものだった。
――――――
僕が小学生になってすぐに本当の父さんは家を出てしまった。母さんは
母さんが寂しがるから僕もアキちゃんも一緒に連れていけなくてごめんなと、母さんがいないときに父さんが謝りに来た。僕が小学二年になる頃に、突然知らないおじさんが家にやってきた。
お父さんよりも若くて、髪の毛はライオンみたいな金色だった。新しくお父さんになる人だと母さんが笑って言った。僕は全然意味が分からなかった。この人が父さんになったら、このアパートを出て行った父さんは一体何になるんだ?
おじさんは、アパートに居る時は
四年生の冬、昼休みに教室の窓から校庭を
病院に着くと、青い服を着たお兄さんから悲しそうな顔で、脳の血管が切れて、発見が遅かったから間に合わなかったと言われた。僕もアキちゃんも母さんを目の前にして泣くこともなく、これからどうなるのか
葬式が終わると父さんは僕たちを呼出し、僕とアキちゃんとまた一緒に暮らしたいけど、父さんにも新しい家族がいるから
アキちゃんは大丈夫と言って笑った。アキちゃんがそう言うならたぶん大丈夫なんだと、僕はそう思っていた。けど、もう一年が
おじさんは母さんが生きている頃から僕のことを嫌っていた。母さんが死んでしまってからは、よく
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