夜空の変化
夜風が、ユウの頬をかすめた。
彼は、ただ呆然と空を見上げていた。
そこには、二つの月が浮かんでいる。
一つは、いつも通りの黄色い月。
もう一つは、それとは異なる、青白く発光する月。
まるで不完全なコピーのように、僅かに形をずらして存在していた。
「……ありえない」
ユウは目をこすり、再び空を見た。
だが、それは消えない。幻覚でも錯覚でもない。
確かに、そこに“ある”。
しかし——周囲の誰も、それに気づいていない。
道行く人々は、変わらずスマホを眺めたり、会話を楽しんでいる。
歩道の向こうで信号待ちをしている者も、車のドライバーも、皆、普段通りに夜を過ごしていた。
ユウだけが、この異変に気づいている。
「何が、起こっている……?」
背筋が、冷たくなった。
この世界は、本当に現実なのか?
それとも、自分だけが別の世界に紛れ込んでしまったのか?
——そのとき、不意に、声がした。
「この宇宙は、自己を言語化することで存在している。」
ユウは、反射的に振り返る。
——そこに、彼女はいた。
公園のベンチにいた銀髪の少女。
どこからともなく現れた彼女は、ユウのすぐ後ろで静かに立っていた。
風が吹き、銀色の髪が揺れる。
月明かりが、彼女の青い瞳を淡く照らしていた。
「お前……誰なんだ……?」
ユウの問いに、少女は微笑む。
「君も ‘テリック・コード’ にアクセスできる。」
「宇宙を書き換える力を、君は持っているのよ。」
その言葉を聞いた瞬間、ユウの現実が音を立てて崩れ去っていくのを感じた。
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