第3章:エリダヌス闘技場編

第7話 プロローグ~決闘開始まで

 クラスタ【ポーション強化判定】1d3>1

【HPポーション×2MPポーション×2】


【祝星歴719年――オーランド領グノーラントゾ・ラ族大集落十二ノ月/月頂月】


【グノーラントから別領地の境目に位置する山林――南北に38kmの広正面を有するイサレ大深林。原生の植物が多くみられ、今尚、固有の種が現存することから、中央大陸のなかでは人の介入が少ない地域と言える。オーランド領下としてみると隣接する辺境伯の折衝地かつ、獣頭種で構成される少数部族ゾ・ラ族を農奴として使役する、重要な領土と言えた。】


【オーランド家とゾ・ラ族は領主と農奴という伝統的な支配関係であった。公用言語ではない特殊な言語を介する彼らと継続的、かつ、均衡の保たれた関係を維持するのは容易ではなく、グノーラントが王領として吸収されなかったのは竜害等も含め面倒な土地的事情を抱えていた、というのも少なからずあるだろう。】


【原始林の姿が色濃く残る大深林に存在するゾ・ラ族の大集落。一種の独立した社会が構築された空間、巨樹をくり抜いた住居の一室でオーランド家のゾ・ラ族の収税報告が行われていた。都市部を中心に農奴の多くが金納に変化するなか――ゾ・ラ族はその種族柄、自由交易が難しいこともあって昔ながらの貢納が続いている。】


【造りの簡素なテーブルに寂れた木椅子には領主・チェルザーレ、そして妻のシャレゼナが控えており、対面するように二人の獣頭種がまるで罪人が処罰を待つかのごとく萎縮しきった面差しで佇んでいた。】


チェルザーレ=ヌラ=オーランド「例年より収穫量も質も悪いのでは話にならんな――……(呆れたようなそんな様子で粗末な木版をテーブル上へと投げやって見せる。流暢な獣語で紡がれたのは明らかな不満であった。ぎしりと年季の入った木椅子は重心を軽く移動させるだけでも軋み、それが神経質な領主をより一層苛立たせた)……このような状況が続くのであれば別の賦役も課すことになる。」


獣頭種(リカント)狼族「――……(領主の男よりも、顔2つ分以上は長大で巨体といっても良い肉体。それらは傍らの獣頭種も同様であったが――幾ら身体的に優れていたとしても、主従を決定づける権力には敵わない。その巨躯と面顔には似つかわしくない怯えた様子で男の声を聞き入って)」


獣頭種(リカント)獅子族「……そうは言いましても、領主サマ。夏季の悪天が長く続いたことで不作なのは目にみえておりました。それでも、今年度は自由農地の収穫まで貢納分に回して昨年よりも下げ幅は随分解消されたかと……これ以上、賦役を増やされますのはどうか……。(おずおずと獅子の頭を持つ獣頭種が、遠慮がちな語気で意見を述べた――領主に真っ向から物申すのは、彼ら最下層の被支配階層にとっては滅多なことである。)」


獣頭種(リカント)狼族「なっ――……おいっ、余計なこと言うんじゃねェ…!(部族長に代わって領主との貢納面会に臨んだ狼族の獣頭種が、隣の獅子族を肘で小突く。小声で諫めるように声を荒らげては、ごわごわとした巨掌で強引に獅子頭を下げさせて)――……申し訳ございません、チェルザーレ様。こいつは算術役としては頼れますが対外的な礼儀がなっておらず……どうか、ご随意に。(粛然とした声音は領主の怒りを買わぬよう努めたものであった)」


チェルザーレ=ヌラ=オーランド「ふむ――……(沈痛とも言える表情で訴える獅子族のリカントをぎょろりと睨みつける。大雑把に目を通した収支報告へと再度時間をかけて読み込んでゆき、一度眼差しを伏せた――ぎしりと背もたれへと自重を預けては、テーブルの上で両手を組み)自由農地を転用してこれか――……」

「……良いだろう、今年の貢納はこれで不問としておいてやる。ただし次年度以降、余剰が出た分は追徴してもらう。作付の計画書も精霊月までにはあげろ――シャレゼナ、これでいいだろ?」


シャレゼナ=ヌラ=オーランド「ええ、賢明な判断だと思いますよ。(一歩引いて、傍らで黙していた女性が振り返った男へと浅く微笑む。忌憚のない意見として手放しに称賛して)」


獣頭種(リカント)狼族「へ……?あっ――あ、有難うございますッ!!ええ、それはもう問題なく、次年度の計画についても精霊月までには必ず……!(まさかの寛容な返答に一瞬面食らってしまったが、次の瞬間には反射的に頭を垂れていた。ともすれば、さらなる追徴や労役を課されることは覚悟しなければならない。特に獣頭種は、隧道や橋梁修繕等、危険な役務を任されがちであった)」


チェルザーレ=ヌラ=オーランド「……ヴァハ族長はまだ身体を悪くしているのだろう?機能不全を補えるよう精々、工夫することだ。(ようやく木椅子から開放されたと厚い上着を羽織っては、巨体のリカント2人へ一瞥を放る。必要な書類を求めながらも――今度は同じ報告を元に、王国から自身が詰められると思うと頭が痛い。公卿会議も大祝祭も目前に迫り、業務量は山積していた。)――行くぞ。」


シャレゼナ=ヌラ=オーランド「ええ、貴方――それでは御機嫌よう。(短く応えては深々とリカントの二人に頭を垂れる。追従して夫とともに部屋を出れば後はしじまだけが居座っていた。)」


獣頭種(リカント)狼族「………」


獣頭種(リカント)獅子族「………」


獣頭種(リカント)狼族「ふぅ~~~……!冷や冷やしたぜェ……それにしても良かったナァ、チェルザーレ様が大目に見てくれて。口出ししたときは魂消たけど、言ってみるもんだ。(内腑からのため息が深々と漏れる、どっと緊張を弛緩させては表情はずっと綻んで、傍らの獅子頭を引き寄せては)――お手柄だな、こいつ!このっ!」


獣頭種(リカント)獅子族「兄貴はこういうとき萎縮しすぎなんだよぉ、領主サマだって事情が解かれば容赦してくれるって…!へへっ…!痛よ兄貴…!(強引に引っ張られては拳で頭をグリグリと小突かれてくすぐったそうに面差しを緩める。一時はどうなるかと思ったが、蓋を開ければ難無く事を終えることが出来て安堵の表情であった)」


獣頭種(リカント)狼族「そうだな……ああいう振る舞いでも、族長の為に薬まで持ってきてくれたし――……あの人だって王国との遣り取りで苦労してる分、感謝しねェとな…。それに、今回はあのおっかねぇ女も居なかったしナ……これから、締め付けも緩んで、生活も楽になってくれることを祈ろうぜ(課題は多いが、それでも上手くやっていけていると言い聞かせる。族長も身体が治ればきっと暮らしは楽になるに違いないと――)」


【祝星歴719年――エリダヌス領エルビジェシュトラウズ闘技場・歓待席十二ノ月/月頂月】


【オーランド領より北東に位置する貴族領地エリダヌス領エルビシェ――グノーラントと同じく元公国領であり、その統治体系も現オーランド同様、エルトラウムの留保のもと土着の貴族が辺境伯として治めていた。この時節、エルビシェは他の元公国領では見ない熱狂に包まれている。エリダヌス家が邸を構える城下には軒並みバザーが立ち並び、街道にまで露天商が連なっている程であった。】


【来たる十三ノ月/天竜月に控えた大祝祭を前にこれだけの賑わいを見せるのは、元公国領の貴族らが一同に介す≪公卿会議≫が開かれるからに他ならない。各地の領主である貴族らが己の権威誇示を建前に使用人を引き連れて、経由地である村や街に財を落とし、目的地であるエルビジェでは様々な商家が詰めかけて盛んな経済活動が行われる。】


【会議の名目としては、各領地の収支報告、財政難である地域への支援金の交付や、支援金にあてられる納付金の収集、引いてはこれからの元公国領の安定と興隆のための合議が網羅的に行われるため、当の領主らにとっては気楽な旅とは言えないだろう。】


【それらに加えてオーランド家は今回、公卿会議の儀礼、祭事として執り行われる《公卿御前試合》の出場も任ぜられている為、慌ただしく段取りが進められていた。公卿御前試合とは毎年、公卿会議にて行われる両家の子息子女同士の模擬仕合であり、闘技場演目の最終目として行われる。――内実としては、あくまでこれらは武を競い合うことが目的ではなく、あくまで儀式的な意味合いが強い。】


【その出場を任される事となったターニャ、クラスタ、ダリル、クロの4人もまた、エルビジェへと同行しており――御前試合への出場を目前としながらも、エルビジェ最大の興業施設であろうシュトラウズ円形闘技場の歓待席で庶民の享楽である闘士同士の戦いを観戦させられていた。各地の諸侯が集まるということもあり、今回の闘技試合は各領地の腕自慢達が領主の示威行為も兼ねて参加している。】


【そうして、今正に、石造りの舞台上にオーランド領を代表して、カダッツ=ウォーントが立ち――別領地の騎士風の男と接戦を繰り広げているところであった。】

【辺境伯出自の歓待席は豪勢と称してもよく、一般のそれらとは違い屋根に備え付けのテーブル。卓上には各種ドリンクからアルコール、特産の果実類や菓子類までが並んでおり、それらを飲食し放題であった。4人とシビラ、コルタナ、イスルギ、ガンディアは午前中到着してから、この闘技場で接待を受ける羽目になっている】


【ロールスタート】


カダッツ=ウォーント「たっ――ッ!!つァっ――!(相手方の騎士風の闘士を相手にしながらも互いに刃を交わしてゆく。並の使い手であれば接戦を繰り広げているようにこそ見えるが、終始カダッツの優勢といった状況であり――思っていた以上の手応え、近年ダリルと仕合ようになってから全盛期以上に剣の動きは鋭くなっている自覚があった。)」


騎士風の闘士「――!くっ!(冒険者組合すらない田舎貴族の出自にも関わらず、相対する剣士の剣閃は鋭く、そして疾い――なんとか防戦一方ながらに捌きつつも、形勢逆転のチャンスを伺って――)」


ガンディア=ヌラ=オーランド「ほっほっほ……儂も若い頃はよく、出場したもんじゃ――血湧き肉躍る剣戟の音、懐かしいのう。妻のメトランジェに出逢ったのもそういえば闘技場で熱戦を繰り広げたあとじゃったか――その夜の宿場では若さに身を任せて……ぶつぶつ(チェルザーレに領主代行として権限を移譲しているものの、一応は現領主である老獪も今回は老体に鞭打って同行していた。歓待席で若き日々を振り返りながらも、強引に子供たちに昔話を語っており)」


シビラ=ヌラ=オーランド「カダッツ、やっちゃえやっちゃえーっ!!(歓待席の一番前、手すりに身を乗り出しながらも片手を突き上げて、同郷のオーランド領地代表である男を無邪気に応援する。闘技場の戦いは野蛮でこそあったが、少女にとっては日常のなによりも刺激的なものであり――これから公卿御前試合に出場しないといけないという重圧をいっときでも忘れられるものであった。)」


コルタナ「――……ギムレットなら喜んで観てたと思うけど、私、ああいう暑苦しいの苦手なのよね。(リニーニャの時と同様に、また珍しい書籍に出会えると思い喜んで同行したものの、闘技場の情景をさも興味を失した眠たげな半目で見おろして。ちらりとターニャへと視線を傾ければ)こういう時でも大気中のマナを意識的に感じることが大事よ、それと――あんた性格の割に努力家で気を張りすぎてるから、もう少し肩の力抜いた方がいいわ。クラスタくらいマイペースで好き勝手やってる方が心身共に健全で、かえってすんなり習熟出来るものよ。(教える立場になったことを良いことにつらつらと小言をのたまってみせ)」


カダッツ=ウォーント「はっ――!!ぜぇぁ!!(何度も剣戟を響かせては徐々に押していく、やはり、ダリルよりも速さも重さも全くない――これではただの稽古以下だな、と心中感じながらも興業的に少しは接戦せねばチェルザーレにあとでぼやかれるのは目に見えていた。)」


ガンディア=ヌラ=オーランド「流石じゃぁ、カダッツは……儂の若い頃にそっくりな益荒男じゃの、ほっほっほ…。」


ダリル「カダッツさん流石だな。(西洋剣を教わった師にそう言葉が漏れれば、勝利を確信しリラックスして観戦してる、剣士の矜持からかどこかいつもぶっきらぼうな彼にしてはワクワクしている様子もとれ)」


クラスタ「ふわああぁ……(目の前で繰り広げられる激闘にあまり興味を示さず、あくび交じりに手持ちの本をパラパラと捲る。時折声援を送るシビラ一行を横目送りながら)こういう催しは権力の誇示、出場する騎士や戦士の出世に幅広く貢献しているであろうが、どうもボクはこういう場が苦手だ。どうも馴染めない自分に疎外感を感じてしまうよ」


クラスタ「もっとも、馴染む努力をしていないと言われればその通りだろう。しかしボクは自分の道を突き進む。空気を読むくらいなら本を読むのさ(戦闘技術は採取の為に必要だから磨いているが、人の戦闘に興味は微塵もない。身内の戦闘は共に背中を預ける身としてどの程度の能力を持っているか確認するために観察することもあるが、自分にとっての認識はその程度のものだ。)」


コルタナ「……とは言っても、今はこの場から動けないんでしょ?自由に散策できるなら、前みたいに写本屋でも探せたんだけどね。(自身と同様に興味なさげに本へと視線を落としているクラスタを気遣うようにしては、出来ることなら自身も抜け出したいと小さく嘆息を零して見せる。いつもとは違って完全にダウナーモードにはいってるクラスタに対し2つに割った果実を差し出し)ほら、半分あげるわよ。」


クラスタ「なに、前回散策が出来ただけでも幸甚だよ。確かにこの場にいるのは退屈極まりないが、バカみたいにコキ使われるよりこうして暇を持て余すことが出来るだけマシなものさ(コルタナから差し出された果実を受け取りながら笑みを浮かべて)また暇が出来たら遊びにいこうではないか」


タニヤマン「まさかこの俺をこんな野蛮なショーに担ぎ出すとは…美少年をいたぶるのがそんなに楽しいのかねぇ(リニーニャで購入した魔導書に目を通しながらぶつくさ独り言をつぶやく。こんなことしてる暇があったらコルタナに魔術を教わっていたい…と思った矢先にありがたいお小言をいただいた)大気中のマナか…うーーーーーむ…(言われてみればここ数日の俺は少々気を張りすぎかも知れない。教わった通り力を抜きつつマナを集約するイメージをすればマッチの火ほどの小さな灯が指先に灯り)あ…できたぞ!…けど色がきったねぇ…(その火はどどめ色をしていた)」


コルタナ「ふふん、まだまだね。これくらいはやれるようにならないと―――。(一つ一つの指で、火、水、風、土のマナを可視化させてみせれば、ターニャに対してにんまりとこれみよがしに口角を持ち上げて)ま、でもそこそこ上出来よ。自身の得意と思ったら属性から伸ばしてみなさい。」


クロ「(大祝祭を前にした、エリダヌス領で行われる、公卿会議の余興として、公卿御前試合に出場する事になった自分達は、自分の出場を今か今かと心待ちにしながら、歓待席で、自分達より先に出場しているカダッツの試合を見物しており、卓上に並べられた菓子類を摘みながら)美味いっス!試合の前に食い貯めしとくっス・・・!!(っと、黙々と頬をパンパンに腫らした齧歯類の様に、頬に含み)シビラちゃんもこれ美味しいよ!一緒に食い貯めするっス!(っと、カダッツの試合より、花より団子と言わんばかりに、シビラに菓子を差し出し)」


ダリル「どうしてコルタナ含めた俺たち兄妹は此処まで興味がないんだ………(珍しく表情では見えないが内心盛り上がってる男にとっては共感されないこの信条に嘆く落胆の色が見え)」


クロ「クラスタにターニャ、こんな時まで本やら魔法の復習っスか~?本当、陰キャ空気が染みついてるっスねぇ~?(っと、双長耳を両腕の様に二人の肩を組み、うざ絡みし)」


タニヤマン「おお……!ふ、ふん今にそれくらいできるようになる!(コルタナの魔術に一瞬子供らしい反応するがプライドの高さから素直に感嘆の言葉は吐けなかった。しかし極めればここまでできるようになるのか…もっと精進せねば…ダル絡みしてくるクロの耳にノーモーションでどどめ色の炎を押し当てながらそうひそかに決心すれば)」


クラスタ「なに、ボクとお兄たちでは興味の対象が違うというだけだ。キミたちにとって対決や決闘という興が、ボクにとっては読書や研究だったという話さ(ペラペラと本のページを捲りながら、クロを横目にみて)クロよ、あまり人の趣味嗜好だけで他人の属性を決めつけるのは良くないぞ(嗜める言葉を述べるが、自身はどこか機嫌や良さそうな様子で)」


コルタナ「今日はエルビジェに泊まれるなら明日くらいは余暇があるんじゃない?その時にでも外出できるわよ。それに――今日クラスタ達は御前なんちゃらに出場しないといけないんでしょ?少しでも身体休めときなさいよ(馬車で午前中はやくに到着してからすぐさま、戦わねばならないというのは同情するとばかりに、そうしてターニャへと得意げな表情をみせれば)ま、期待しとくわ。師匠としてね」


クラスタ「うむ、もし暇があればまたみんなで散策でもしようじゃないか(コルタナの言葉に果実を齧りながら小さく頷く。そして御前試合の話を振られれば)ボクは自他共に認める陰の者だが、薬師もとい錬金を嗜む身として必要最低限の戦術は網羅しているし、クロやダリルの対戦相手に付き合うこともある身だ。実を言えば、ボクの実力がどこまで通用するのか少し興味はある所だ。試合に出るのはやぶさかではないよ」


シビラ=ヌラ=オーランド「(多くのバザーに多くの露商、少女にとってはこれもリニーニャの時と同様に祭りのような高揚感を与えてくれるものであり、普段では味わえない非日常感を満喫してゆく。クロから豪勢な菓子類を差し出せれば、年相応の満面の笑みを浮かべて――)ありがとう、クロちゃん!今日はクロちゃん、御前試合頑張ってよね…?(そうして一抹の不安、ぐいっと長耳を引っ張ればぼそぼそと囁いて)」


クロ「(シビラに不安そうに頑張れと言われれば)任せてっスよ!シビラちゃんの前に立つ奴は、オレッチバンバン射抜いちゃうっスから、安心していいっスよ!(っと、一緒に美味しそうに菓子や果物を頬張りながら、不安を払拭する様な、安心できる満遍のスマイルで、サムズアップし)」


イスルギ「はぁ~……身内が出てる試合は良いけど、やっぱりダレる試合もあるしなぁ――(午前中から長々と観戦を続けていると当初の新鮮さは薄れていって、退屈が勝ってくる。両手を伸ばしてテーブル席に上肢を預けては、ちらりとクロを見遣って)ねぇ~、クロ~、前リニーニャ行きの馬車で見せてたとれんぷ?だっけ、あれ持ってきてないの~?ダリルももういいじゃん、カダッツ勝つよ、これ~、明らかに手ぇ抜いてるでしょ」


騎士風の闘士「くっ……カノッサ公のために負けるわけには……!!(一撃が一撃が重い、まるで身体の芯にまで響いてくる一振りに体勢を崩しながらも、白熱の戦いを繰り広げて)」


ガンディア=ヌラ=オーランド「うーむ、中々に気張っておるが……矢張り、カダッツには一歩、いやそれ以上に遠く及ばぬか……あれでも、地元では名手なんじゃろうが、今回ばかりは相手が悪いのう。儂も昔は大戦斧のガンディアとしてよく畏れられていたものじゃ……のう、ダリル君や(皆して思い思いのことをし始めている状況に1人だけ仕合を眺めている少年へとくどくど湯水のように語り)」


ダリル「実力差は歴然だが、師匠とカダッツさんとは違う相手の剣筋を見ることで新たな視点も芽生え知見も広がる………そういうことで…(そう話しかけてきたイスルギにいつにもなく饒舌でそうくどくどと言葉を告げる、老人の声はしゃべるのに耳に入ってないようで)」


クロ「(イスルギに前の旅行で持ってきていたトランプはないかと言われれば)あるっスよ!せっかくだから、ババ抜きでもしようか!(っと、毛並みから薄い木の板でできたトランプを取り出し)ダリルー、カダッツさんは勝つんだろうし、トランプしようぜ~(っと、長耳をダリルの肩に巻き付け)」


イスルギ「えーっ……ダリルは本当に真面目だなぁ~…(矢張り闘技場に縫い付けられているダリルに不満げな声をあげながらも、トランプをクロが取り出せば目を輝かせ)やった!そうこなくっちゃ――!こんな退屈だと死んじゃうって!」


シビラ=ヌラ=オーランド「やったー!みんなで遊ぼうーー!ほら、クラスタちゃんもターニャもコルタナもみんなでクロのとりゃんぷして遊ぼうよ!(隅っこの方でまったく仕合とは別方向の話をしている三人へと絡んでいって)」


クロ「(この前の旅行で説明できなかった、トランプ初めての、イスルギやシビラに、木の板の絵柄を見せながら、説明していき)この同じ絵柄が二枚揃ったら捨てていって、最後にこのターニャそっくりの道化の絵柄が残った人が負けってルールなんだ、簡単っしょ?」


ガンディア=ヌラ=オーランド「……ムポポンフルーツのジュースが飲みたいの……喋りすぎてちと咽が草臥れてしまったわい。どれ、若いのや……テーブルからムポポンフルーツを搾って持ってきてくれんかの……(指先でちょいちょいと子供達へと果実天然搾りの飲み物を催促し。尚、ムポポンフルーツとは南部島嶼帯の特産果実であり、フレッシュな酸味と調和の取れた控えめな甘さが癖になる南国のフルーツである。)」


タニヤマン「今に見てろよこのアマ…(いつか絶対追い抜いてやる…)ところでクロお前耳燃えてるけどいいのか?(先ほど火を押し当てた個所から煙が上がっており)」


ダリル「トランプはいつでもできるがこの試合は今しか見れないんだ。(そう言ってトランプを取り上げれば)知見を広げるためにも皆観戦に集中するんだ。(そう腕組をして告げて)」


イスルギ「へぇー……リニーニャのときも思ったけど、やっぱりクロって手先が器用だね……。なろうと思えば木工技師にでもなれんじゃないの?(クロが作ったお手性のトランプを手にしてはルールの説明を首肯しながら聞きつつ、物珍しそうにして)」


クロ「(イスルギに木工技師になれると言われれば)うーん、トトポヤかあちゃんに、弓やら道具を見よう見真似で一緒に作ったりした時、そういう道も考えたんっスけど、オレッチやっぱ師匠みたいに、猟師になりたいっス!(っと、師匠であるカッコいい美人のノワキの背中を思い浮かべながら、真剣に答え)」


クロ「(ターニャにウザ絡みしていたら、逆襲とばかりに魔法の火で、耳を燃やされ)アッチチ!!丸焼き兎になっちゃう~~~!!!!(っと、ボヤを起こしている長耳に飲料用に置いてあった水壷に、突っ込み)」


クロ「フーフーッ!獣に火を着けて、兎の丸焼き煮込みシチューにしちゃゃいけないって、トトポヤかあちゃんに教えられたでしょ!まったくもう!!(っと、焼けて地肌が円形状にに見えている、長耳を冷やすように息を吹きかけながら、ターニャに抗議し)」


クラスタ「(シビラからトランプの提案をうければ、パタリと本を閉じて)ふむ、ボクにトランプで勝負を挑むというのかね。シビラ嬢よ、大変に失礼なことを申し上げるが、天才的頭脳を持つボクにそのお誘いは少々無謀だ。……しかし、シビラ嬢と手合わせをするのはやぶさかではない。端的に言うと暇だし遊ぼう。(グダグダと御託を並べながらも、本を閉じてシビラの傍に座り)」


コルタナ「とは言っても……正直、戦いになるのかしらね。私の見立てだとどんな相手が出てきてもあんたらと互角の勝負ができそうな連中っていないと思うんだけどなぁ……。一度、戦った身だから言うのよ、相手が気の毒って。(薬師でもあり錬金術師とも称している少女の頭を撫でて猫可愛がりしながらも、双眸を細める。あの遺跡の最奥、あの戦いは今でも思い返せる)」


コルタナ「えー…なにそれ…トランプって……私、本のほうがいいんだけど…まぁ、ちょっとだけなら……」


タニヤマン「トランプか、懐かしいな(燃えて騒ぐクロをスルーしトランプを手に取れば)俺みたいな…道化か…(意外といいデザインだなぁと俗っぽいことを考えながらクロの描いたジョーカーをじっと眺め)」


シビラ=ヌラ=オーランド「やったっ…!普段は陰気で乗りの悪いクラスタが遊んでくれるぅ!(両手で相手の手をぎゅっとしながらも、にこにこと微笑んでみせる。ナチュラルに失言ししては、距離感皆無に頬ずりして)」


クラスタ「なんだとこのやろー!(ナチュラルにぶっこまれたシビラの暴言に瞬間的に沸点が上昇する)」


シビラ=ヌラ=オーランド「ひゃーっ!クラスタがきーれたー!クロちゃん助けてー!(これみよがしにクロの背後へと逃げ)」


クロ「憤怒怪獣クラスタめ!シビラちゃんはオレッチが守る!!(っと、長耳を前に突き出す様に、背後にいるシビラを庇い)」


ダリル「ムポポンフルーツをジュースにか………。(そう告げられたフルーツを手に取れば)―――ハッッッッ!!!!!!(そう片方の手に持ったコップの上にフルーツを添えれば手で玉砕する様に握力でフルーツが炸裂すれば)あ………コホンっ、ガンディア様淹れたてでございます。(そうごまかすようにジュースの体をなしてるのかギリギリのコップを差し出せば)」


タニヤマン「言っておくが俺が参加する以上貴様らに勝ち目はないぞ。覚悟するんだな。負けても泣くなよ(いやらしい笑みを浮かべつつ慣れた手つきでダリルからトランプをスレば全員に配り始め)」


ダリル「なんでトランプ大会が始まろうとしてるんだ………(そういつの間にか手からなくなっているトランプに嘆く様にそうポツリと告げれば)」


萌黄色の髪の少女「あっ―――!!(ダリルがムポポンフルーツをジュースにし遂せれば、不意にどこからか紛れ込んだのか少女の細腕が果汁の注がれたグラスを強引に奪い取り――つんざくような大声で笑顔を見せれば)これ、半分もらうね!!!!」


ガンディア=ヌラ=オーランド「ほっ……?むぽぽん……」


タニヤマン「なんだこの女!?(突如現出したセロリみてーな色の女に動揺すれば)」


クロ「おっ、飛び入り参加っスか?ターニャ、彼女にもトランプを配ってあげたまえ(っと、突然現れた少女に、可愛ければ正義と言わんばかりに、ゲーム参加を促し)」


クラスタ「ふふふ、普段から領主の娘だとおもって下手に出ていたが、そろそろボクのポーション()をつかって薬漬けにする必要がありそうだな、クロよ、そこをどけぇ!(クロの後ろに隠れたシビラを追いながら、紫色と虹色に輝くポーションを両手に持ち目を光らせ)なら、まずはキサマを薬漬けにして……ふぁあああ、なんかでた!(突然現れた緑髪の少女に思わず素の声を漏らしてしまう)」


萌黄色の髪の少女「んぐっ――!!(グラスに注がれたフルーツジュースを口内へと含めば、ダリルよりわずかに背丈の高い少女は強引に肩口を凄まじい膂力で押さえ込み――瞬間、ダリルへの唇へと口づけて半分ほどの果汁を舌伝いに送り返し)っぷはっーー!!半分返したよ!!ありがと!!!じゃ!(耳がキンキンする声音で告げれば、身軽な所作で嵐のように歓待席を後にするのであった)」


タニヤマン「あんな大声で…下品な女だ…(ダリルへ行われる一瞬の淫行につい目をそらし)」


ガンディア=ヌラ=オーランド「ムポポンフルーツのジュースはどこかの……」


ダリル「ふむ………それは承諾しかねるな。(そう突然自分の手から奪われたコップ、それに立ちはだかる様に仁王立ちして目付きが悪い男が立ちはだかれば、その瞬間目にも止まらぬ速さで口づけされて強引に内容物を流し込まれる。あまりの嵐のようなその光景に頭がついていかず口を半開きに開けてポカーンと)―――………。」


クロ「(突如現れた少女に、接吻されたダリルに対し、自分が今度は憤怒怪獣になり)だっだだだだダリル貴様ぁああああ!!!(っと、ダリルの胸倉を掴み)オレッチだって、転生前でさえチッスはまだなのに!!!!(っと、血涙を流し)」


タニヤマン「やめろっ!よせクロ!落ち着けぇ!(クロを落ち着かせようと掌からどどめ色のなんかよくわからん光を放てば)」


クラスタ「ふぁああああああ!ダリルの青春が奪われたああああ!(突然、謎の少女がダリルの唇を奪う濃厚な接吻を目撃し)」


イスルギ「こういうのって中々おもしろそーー……(ヒートアップしつつあるトランプ会場のさなか、いきなり現れた少女にダリルが口づければ全身が強張ってしまう。理解するのに幾ばくかの時間を要してしまい)……なによ!今の子ぉっ!?全然気配なかったんだけど!?」


クラスタ「ダリルの甘酸っぱい貴重な青春を奪ったあの女を許すな!ころせぇ!!!もしくは責任を取らせるぞぉ!(突然のことに混乱しながら、新作の錬金銃である2丁のショットガンを取り出して立ち上がれば)」


コルタナ「えっ……!?えっ、え~~~~~~~~っっ!?!?!?(トランプするべきかしないべきか、そんな他愛無い判断に迷っている矢先に、突如現れた嵐のような出来事にわなわなと指先を震わせる。ぽかんとした面差しでダリルを眺めながらも)……知り合い?なわけないわよね……」


クロ「放せターニャ!ダリルはオレッチが埋める!!!!(っと、血涙を流しながら、弓をダリルに向け)」


シビラ=ヌラ=オーランド「わわわわわっ……!だだだダリルっ……あんたっ……いいいま、なななにが……(眼の前で突然起こった情景に信じられないとでもいわんばかりに、クロの長耳を抱きながらも畏敬の存在絵もみるような目線で)」


ダリル(号泣「オっ、俺は何もしてないッッッ!!!(そう半開きにしていた口を無理やり治すように下あごに手を添えれば)あの女が勝手にヤっただけだ!!?俺は知らんゾ!!!!!(そうもみくちゃにされながら言い訳にも取れない抗議の声を上げれば)」


タニヤマン「やめるんだクラスティーーーーンナ!ダリルも一度落ち着けぇ!たかがキスごとき犬に噛まれたと思って!(兄妹達三人を落ち着かせようと手を伸ばし立ちはだかる。その様はさながらラプトルを前にしたかのように腰が引けており)」


イスルギ「ちょ……クラスタ、落ち着いて…!さすがにこれはダリルにとっても交通事故みたいなもんでしょ~?ねぇ?(背後からクラスタをホールドしながらも圧をかけて)」


カダッツ=ウォーント「つぉぁ!!!(舞台も最終盤、男の渾身の一振りによって騎士風の男が場外へと見事に弾き飛ばされれば、観客中が沸き立つ。冷ややかな面差しで模造剣を鞘に収めながらも、ダリル達が観戦しているであろう方角へと軽くガッツポーズを送り)ふっ……観ていてくれたかな、アイツら。」


クロ「クソ、ダリルに先を越されるなんて、オレッチの兎もといウサウサプライドが・・・、そうだ、こうなれば(っと、女性陣に両手と、双長耳を広げながら)女性方々!こうなれば兄妹のクラスタでもいい!オレッチにチッスしてくれ!!頼む!!(っと、トチ狂ったのか、さらにカオス空気を爆発させていき)」


クラスタ「えっ……男ってもしかして、女だったら誰からチューされても嬉しいのか……?(クロがダリルに嫉妬しているのを見ながら困惑した表情を浮かべつつ)えっ、あの女のキスって、もしかしてご褒美扱いなのかね!?美女なら毒女でも喪女だれでもいいってやつかっ!!こんな世の中腐ってやがるっ!」


コルタナ「馬鹿!ドスケベエロ兎!あんなの見せられた直後にそんなこと出来るわけないでしょ!(べしっと本でクロの頭を叩きつけながらも無軌道にキスをねだりはじめるクロを諌めて)」


タニヤマン「おい女ども。こいつ燃やしていいぞ(アホなことを宣うクロに対して白い目を向けながら)」


クラスタ「うるせぇ!そこに都合のいいビッチがいるだろぅ!ビッチ同士ちちくりあいたまえ!!!!(キスを求めるクロに対して、無駄にボディタッチをしているシビラを指差して)」


シビラ=ヌラ=オーランド「はぁあああ!?びっちってなによ!なんか解んないけど、悪口ってのは私だって解るわ!(指差されてクラスタと取っ組み合えば、イスルギ、クラスタ、シビラの三人がもみ合いになる異常事態が発生し)」


タニヤマン「クラスティーナ落ち着けぇ!!あいつが特別クソなだけだ!!(クロに対してならともかくシビラにまで暴言を吐き散らかすクラスタを必死になだめれば)」


クロ「(コルタナに本を投げつけられ、クラスタに罵声を浴びされつつ、涼しい顔をしながら)フッ・・・、チッスの為なら、痛くも痒くもないね・・・(っと、最後の希望はシビラちゃんかと思いきや、クラスタのビッチ暴言に怒ったのか、キャットファイトを始め)嘘だろ・・・?シビラちゃん・・・(っと、絶望し)」


ダリル「まっ、まずは落ち着くんだ………ほら、おじいちゃん、ムポポンフルーツですよ~…。(そう一番落ち着いていない男が手の震えが止まらないまま皮つきでムポポンフルーツを求める老人にあーんする様に差し出せば)」


ガンディア=ヌラ=オーランド「……ほぉ、お……優しいの…ムポポンフルーツはやっぱりキンキンに冷やすにかぎるわい……(気づかずに皮付きのムポポンフルーツをばりぼりと咀嚼して)」


チェルザーレ=ヌラ=オーランド「お前たち、そろそろ出番だぞ。(カダッツが相手の闘士を屠ったと同時に、接待席の後方からオーランド家の長男である男が手すりを掴みながら顔を見せる。手差しで日射を遮りながらも一同を俯瞰してなにやら騒がしい状況に眉を持ち上げて)……なにやら騒がしいな、そんなに盛り上がっていたのか。」


イスルギ「はっ……!領主様……!(領主の登場にさすがに表情を改めて、直立不動になり)」


ダリル「兎に角!!!!!気持ちを切替えていくぞ皆。(混沌とする空気を何とか切り替える様にそう手をニ、三回叩いて声を張り上げれば)」


タニヤマン「ええいこんな時に空気の読めん…!貴様ら!そのよくわからん怒りは全て対戦相手に叩きつけろ!!ダリル!母上が見てると思え!!クラスティーナ!敵は全部クロだと思え!クロ!お前は敵にでもキッスしてやれ!」


チェルザーレ=ヌラ=オーランド「…………再三、言っているが今日見える相手は元々貴族の辺境伯達だ。曲がりなりにもオーランド家の養子という看板を背負う以上、先方への礼を欠くことは許さん。……竜送の儀を無事に終えた程度で安泰とは思わん事だ。(着実に結果を残している4人の子供へと眼光を鋭くさせて釘を刺しては、くんずほぐれつな状況に頭を軽く抱え)矢張り、父上1人じゃ子守は無理だな……」


ガンディア=ヌラ=オーランド「ほっほっほ……皆健闘を祈っとるぞ…(ぼりぼりとムポポンフルーツを噛み砕きつつも、全員を見送ろうと)それと……ダリル、今度はちゃんとジュースにして欲しいのぅ。」


クラスタ「なんだね、やるのかね!ぼかぁ女でもグーで殴る奴だぞぉ!(イスルギにホールドされ、シビラにもみくちゃにされ、髪を引っ張り頬をつねりとしていた所で領主が登場)……ふむ、了解だ。今後気を付けよう(言葉で釘を刺されれば、ムスっとしながらも流石にボロボロになった身なりを整えてシビラを引きはがし、試合の準備を始める)」


シビラ=ヌラ=オーランド「はぁ!?やってやろうじゃないの!どっちが上か今日こそ……!(もみくちゃになりながらも、取っ組み合っていれば不意に自身の父が顔を出してすっかり顔色を青鮫させて)お、御父様……は、はい……頑張りますっ…!」


クロ「(混沌の空気の中、領主が声をかけ、出番だと言われれば、接吻ができなかった絶望の空気を一変させる為、ダリルの様に気持ちを切り替え)くっ・・・、仕方がない、ダリルに先を越されたままだというのはいただけないが、試合は真面目にするっス!女性方々、こうなればオレッチが一番に活躍したら、誰かチッスをお願いっス!!(っと、諦めが悪いのか、最後まで女々しく、願望を駄々漏れさせるのであった)」


イスルギ「……みんな程々に手ぇ抜いてやんなよ~?。私はここでガンディア爺ちゃんにコルタナとノンビリ応援しとくからさ、ま、応援なんてしなくても結果は見えてるんだろうけどね。(席へと領主のお迎えが来れば、以前ぐでっとした身体の力を抜いた、ともすれば腑抜けた姿勢のまま一同を見遣って)」


ダリル「少々騒がしいのは子供の戯れだとその寛大なお心に留めていただき、試合では恥じぬ闘いを見せるゆえにご心配なきよう。(そう領主に無表情で後ろに手を組みながらそう告げれば)ガンディア様、次の機会には必ずお召し上がりに。(そう言葉を続ける様に告げ)」


クロ「チィ・・・、ダリルめ、チッスをしたからって一歩先をいったとばかりの大人の対応を、うぎぎ・・・(っと、兎特有の齧歯前歯をカチカチと鳴らしながら、威嚇し)」


タニヤマン「もちろんそのつもりですよ~~(緊迫したオーラを放つチェルザーレに子供らしからぬいやらしい笑みを浮かべれば)はぁ…あの女のせいでえらい目にあった…とにかく皆落ち着いて行くぞ(ぶっ殺す!!!Yeahーー!!と鬨の声をあげたくなったがチェルザーレの手前ここは抑えておこう…)」


チェルザーレ=ヌラ=オーランド「……ふん、良いだろう。俺は結果さえ出してくれれば文句はない。(顎先を軽く持ち上げれば暗について来いと言わんばかりに踵を返し)」


【チェルザーレに呼び出されて闘技場の裏口から内部へと入れば、血と汗の匂いが真っ先に一同の鼻を衝く。石造りの壁には最早、誰のものか解らない体液の染みがいくつも見て取れ、過去にあった苛烈な闘士の戦いを暗に物語っていた。――投げ出すように乱雑に配された椅子や壁に背を預ける闘士らは、はじめは足を踏み入れる一同に対し視線を送るも、皆一様に興味なさげにすぐさま視線を引き戻す。住む世界が違う人間だと言わんばかりの無頓着な様子であった。】


【そうして、一般の控室を経由して案内されたのは、恐らくは主賓や貴族出自の出場者が控えるための絢爛な一室であった。本来の控室とは厚い扉をもって隔たれている。】


ドモレウォット=ビレ=エリダヌス「おおっ……チェルザーレ殿、お待ちしておりましたぞ。午前は各諸侯を遇する時間と重なってしまってな。私自ら出迎えることができず面目次第もない。(鷹揚な振る舞いで控え室より歓迎しては恰幅のいい体躯で、両手を広げてみせれば)それにしても、カダッツ殿の剣術はまったく見事な物ですな。例年、剣筋が鈍るどころか益々磨きがかかってるようにお見受けしますぞ。……今回の御前試合は宜しく頼みますよ」


チェルザーレ=ヌラ=オーランド「ドモレウォット辺境伯――……いえ、オーランド家とエリダヌス家は勝手知ったる仲、どうぞお気になさらぬよう……此度の公卿御前試合は胸を借りる気持ちで臨ませて頂きます。……お前ら、非礼がないようにな。(恭しく頭を垂れれば普段見れぬ領主の姿を見せ)」


【ロールスタート】


ドモレウォット=ビレ=エリダヌス「君たちもこれから緊張の舞台なのだから、堅苦しい挨拶は抜きにしようじゃないか。――エルビジェを預かるドモレウォット=ビレ=エリダヌスだ、今日は子息子女ともどもお手柔らかに頼むよ。カウプス、オーランド家の皆さんがお見えになったぞ、御挨拶なさい。(人好きするような朗らかな笑顔を見せて4人へと挨拶をすれば奥の瀟洒な天鵝絨のソファに腰掛けた少年を手招きして)」


ダリル「ドモレウォット様、お初にお目にかかります、ダリルと申します。(そう東洋ならではのお辞儀にて挨拶をすれば)」


クロ「(試合に出る為に、腐っても貴族の養子ということか、それともシビラがいるからか、貴族用の絢爛な控え室に通され。そこに、今回の主催者である、ドモレウォット辺境伯が現れれば、挨拶し)オレッチ、クロ!よろしくっス!(っと、礼儀のへったくれもない、いつもの軽い、軽薄な挨拶で返し)」


ドモレウォット=ビレ=エリダヌス「ははっ、宜しく頼むよ。ダリル、クロ。なんとも天真爛漫、素直でいいこじゃないですか、チェルザーレ殿(鷹揚に自身も貴族然とした所作で挨拶を返し)」


クラスタ「(頬にキズをつけながらムスっとしながらドモレウォットに視線を送り)……クラスタ(先ほどまでの狂人っぷりはなりを潜め、どこか不機嫌さを残しながらうやうやしく頭を下げ)よろしく、お願いします」


タニヤマン「(こいつがエリダヌス卿か…ま、ここはチェルザーレの顔を立てといてやるか)お初にお目にかかりますエリダヌス様オーランド領から参上いたしましたトトポヤが息子タニヤマンにございます。以後お見知りおきを(道化師のような動きで深々と首を垂れれば)」


ドモレウォット=ビレ=エリダヌス「はははっ、クラスタ嬢は長旅でお疲れのようだ。これからの御前試合は大丈夫かね?専属の神官がいるから必要なら呼ぼう。……うむ、結構、タニヤマン。息子ともども宜しく頼むよ。」


タニヤマン「ええ、こちらこそぜひよしなに(ほう…まぁ貴族の立ち振る舞いは華麗でらっしゃる。…なんか嫌な予感がする…こいつら変な勘違いを起こさなきゃいいが…)」


チェルザーレ=ヌラ=オーランド「……(クロの振る舞いもクラスタの態度も頭が痛い、とはいえ余計な口出しはできずに背後で眉間を揉み、いつ粗相起こさないか気がそぞろであった)」


カウプス=ビレ=エリダヌス「はい、父上―――久しぶりだね、シビラ。1年前と比べてまた一段と見違えた。(華美なソファから立ち上がり、当主と共に並び立つ。チェルザーレの傍に控えるシビラへと温柔な声音で語りかければ、恭しくその手を取り軽く手の甲へと口付ける仕草を取ってみせ)」


シビラ=ヌラ=オーランド「うっ――……お久しぶりです、カウプス様。(子供達だけで居るときとは打って変わって、格式高いこのような場ではまるで借りてきた猫のように萎縮しきってしまう。少年に片手を取られて形式通りの挨拶をされるだけでもカチコチに強張ってしまい、緊張の色が隠し切ることは出来ない様子。社交辞令にも頬を赤らめるだけで所在なさげに視線を彷徨わせるくらいしか出来ず)い、いえっ……そんなことは……。」


カウプス=ビレ=エリダヌス「ふふっ、熟れていない所は相変わらずか……(そうして次に目線を投げた先は4人であった。浅く口角を持ち上げれば、体ごと向き直り4人よりは数歳は年上のまだ幼さの残った面差しと、慇懃無礼な物言いを伴わせ)お初にお目にかかります、オーランド家の養子の皆様。エリダヌス家の長男、カウプス=ビレ=エリダヌスと申します。……いやはや、予々話だけは聞いていたが、なんとも異な…ふふ、いや……失敬、どうか気を悪くしないでくれたまえよ。」


ピエラ=ビレ=エリダヌス「カウプス、あんまり先方に失礼なことを言うもんじゃないよ。ボクは喧嘩の仲裁なんかしてやらないからな(カウプスに続いて肩を並べるも傲岸不遜な物言いの少年に対しあからさまに表情を顰めては、ハーフエルダナーンと思われるエリダヌス家の1人は一度気を引き締め直し)ピエラだ――エルビジェにようこそ、歓迎するよ。」


タニヤマン「タニヤマンです。お二人ともどうぞよろしくお願いします(おぉおぉ、こっちはまた真面目そうなやつだ。大成するとしたらカウプスの方かもな。ああいうのは世渡り上手いからな)」


クラスタ「(三白眼のいかにもな好青年ことカウプスがシビラの手をとり手の甲へ口づけをする優雅な仕草と対照的に固まるシビラを横目にみてからプイっと顔を逸らし)……やっぱりビッチ(ボソリと呟く。さらにカウプスがこちらを値踏みするように言葉をもらせば)……はぁ(思わずありとあらゆる暴言が出そうになるもどうにか抑え、ため息を吐くことで留飲を下げる)」


シビラ=ヌラ=オーランド「うっ……(あとで覚えときなさいよ、とぼそっと呟いたクラスタへと鋭い眼差しを送っては、今はわなわなと手指を震わせるしかなく)」


ダリル「カウプス様、よろしくお願いします。(そう馬鹿にしてくる態度に片目を瞑りながら無表情で軽く挨拶すれば)ピエラ様もどうぞよろしくお願いします。(そう続く相手にそう同じように言葉を返す)」


クロ「(辺境伯と挨拶している中、シビラが優男風の辺境伯の息子に手の甲へキスされながら挨拶される姿を目撃すれば、旅行で仲良くなった事も加味してか、少し心の中がモヤモヤし、ムッとした態度で)あーん?試合の前に女性にうつつを抜かすなんて余裕っスねー?そのスカした面を、気付かぬうちに眉間を射ち抜かれなければいいっスね~?(っと、自分の事は棚に上げつつ、そのカウプスの馬鹿にする様な態度に、挑発して返し)」


ダリル「クロ、試合前だ行儀よくしろ。(そうクロを窘める様にそう言葉を紡げば)ああ………【試合前】だからな………そうだろう?クロ。(そう口元を上げながら相手の態度にフツフツとした闘志も見え隠れしており)」


ピエラ=ビレ=エリダヌス「ああ、よろしく、クロ。貴族の連中って固くて付き合いにくい連中ばかりだけど、君たちは違うんだね。互いに刃を交えるんだ、怨恨は抜きにしよう(軽く片手を差し出せば握手を求めて)」


ラナメール=ビレ=エリダヌス「初めまして、ラナメールと申します。よろしくお願いしますね、オーランド家の皆様。どうか――……従兄さんの言うことにあまり気を悪くされないで下さいね。タニヤマン様、クラスタ様、ダリル様、クロ様……エルビジェにようこそ(慇懃無礼で止めてもどうしようもないのだ、と言わんばかりに片手で頭を抱えるように紡ぎ遂せる。銀髪の少女は年齢の割にはずっと落ち着いた様子で浅く口許を綻ばせ)」


クロ「あ、ラナメールちゃんと、ピエラちゃんはよろしくっス!二人共可愛くて美人っスね!(っと、カウプス以外は、愛想よく返答し)」


タニヤマン「こちらこそ愚弟が失礼を、ラナメール様。あれは外交を理解しておりませんので。あとできつく言っておきますのでご容赦を(こいつはまだ話が分かりそうだな。自主性はなさそうだが)」


カウプス=ビレ=エリダヌス「ン?君が?僕を?――へぇ、リカントにも冗談が言えたとは驚きだ。(くつくつと咽を鳴らしながらも、吟味するようにクロを見やってはピエラに宥められ)ピエラ――いや、僕は事実を客観的に述べているだけさ。とは言え――……あの名家がわざわざ迎え入れた子という割には、……どんな犬に育てられたか解らない奇怪な面々だけどね。知ってるよ、君たちは農奴としても徴用されているんだろ?いや、っ、――ははっ、面白いっ、くくっ――よくもまぁ、どの顔してこの場に列席できているのかと……。(片原を抑えながらも笑いを堪え)」


クロ「(ダリルに試合前はこれでいい、試合の時は分かっているな?っという言葉で諫めされれば)そうっスね、『試合前』は、愛想よくしないといけないっスよねえ・・・(っと、カウプスの態度にフツフツと怒りを溜めながらも、ダリルと共に表情に影を落としながら)」


ラナメール=ビレ=エリダヌス「そうですね――……お互い気苦労が絶えなさそうで心中お察ししますわ。(ターニャの言葉に緩く首肯して見せればお互いに苦労していますね、と井戸端会議のように小さく囁いて)」


クラスタ「(ターニャとダリルはやはり世渡りが上手い。自分はどうしても人と合わせるのが苦手だ。とは言えクロのように嫌味っぽいことを堂々と言いながら自分の思いをぶつける甲斐性もない。己は中途半端だと独り言をつぶやきながら、内心気を落とす。)……――あ゛っ(しかし、カウプスが自身や兄弟の出生ましてや母親にたいても嫌味を述べる)ボクは自分のことを悪く言われるのは気にしないが、身内を落とされるのがこの世で一番嫌いでね、試合前だからなんだ。向こうが喧嘩を吹っかけてきているのにいい子にする必要はあるのかね」


クロ「(自分のリカントの差別発言はいい、慣れている。しかし、母親であるトトポヤを犬といった発言は許せないと、クラスタと共に眉間に皺を寄せ)野朗・・・、俺の事を馬鹿にするのはいいが、かあちゃんの事を馬鹿にしやがって・・・ブチ射抜いてやろうか・・・(っと、殺気丸出しで、今すぐその優男面を血に染めてやろうかと、弓を握り締め)」


カウプス=ビレ=エリダヌス「――……怖いねぇ、これだから野良狗は困る。これでは、どれだけ貴族の衣服を着せても郷が知れるというものだ――……運良く辺境伯の子という肩書を得られたに過ぎない君たちに……まっとうな礼儀を求める方が間違いだったかな?(傲岸不遜に肩をすくめて見せれば二人の声音に浅く笑んで見せる。顎先を軽く持ち上げて見下すようにすれば)」


ピエラ=ビレ=エリダヌス「やめろっ……!カウプス、仕合前から揉め事を起こすなよ……!頼むからっ…イーリィだけでもこっちは一杯いっぱいなんだって……!!(気にせずに喧嘩を売るカウプスの服の裾を引っ張っては制止して)」


タニヤマン「(オイオイ貴様ら正気か?このボンクラ共はともかくチェルザーレの顔も立てんとオーランド領にいられなくなるぞ…ったくしょうがない)その農奴がいかほどの力を持つか!確かめるのが此度の立ち合いでございましょう?お気を付けなさいませ。飼い犬とて噛みつきます(兄妹達の怒りが爆発するより前に自分にヘイトを向けさせようとわざとカウプスと三人の間に立ち塞がるように躍り出て大仰に挑発する)」


ダリル「ラナメール様、どうかお見知りおきを。(そう丁寧なあいさつをしてきた相手には通常の挨拶をすれば)犬………。(そう発言された瞬間に刀に手を掛けそうになるがそれを寸前で抑える様に後ろ手に組みなおせば)クラスタ、クロ、気持ちは分かるが【試合前】だ………試合になれば………な?(そう二人に言葉を紡げば)カウプス様、ご無礼お許しを………試合ではしっかりと【楽しませて】御覧に入れましょう。(そう口元を上げながらそう告げれば)」


カウプス=ビレ=エリダヌス「……ま、精々愉しみにしておくよ。やすやすと倒れては困る、少しは観客を楽しませて欲しいな――(怯んだ様子もなくターニャとダリルの言動に軽く首を横に振って見せれば)……薄汚い木工場で育てられた犬なんだろ?君たちは。父上から聞いたよ。(なんの悪びれもなく首をわざとらしくダリルへと傾げて)」


クラスタ「ふむ、兄ぃ達がそういうならやぶさかではない(ダリルやタニヤマンの言葉に目を伏せて)なら何も言うことは無いさ。試合前に無礼な発言をしたことをここに詫びよう。許してくれたまえよ。試合は始まるまで皆で好きに交流でも深めればいいさ(怒りを通り越して冷静になった形になった。静かに引き下がる)」


タニヤマン「これはこれは、お心”不快”ご配慮に感謝します(挑発すなーーーっ!!)」


クロ「だが、ダリル―――・・・!!(っと、止めるダリルに声を荒げそうになったが、ダリルが握り締める手の平から、血が滴れ落ちているのを見て、かあちゃんを一番に思っているダリルがここで耐えているのだ、ここで自分が騒ぎを起すわけにはいかない、この仮は試合で返すと、舌打ちしながら)チッ、分かったよ・・・」


ドモレウォット=ビレ=エリダヌス「カウプス、その辺にしておきなさい。どのような名家であっても大なり小なりの事情は抱えているものだ。それを論って笑う真似はエリダヌスの品位と格式に関わる。(ぽんと息子の肩を叩いては、さすがに制止にはいり)」


ドモレウォット=ビレ=エリダヌス「――失礼しましたな、チェルザーレ殿。息子は歯に衣着せぬ性格、寛大な心でお許しくだされ」


チェルザーレ=ヌラ=オーランド「いえ――……年端も行かぬ子供の言葉、わざわざ波風が立てるようなことでもありません。(周囲の注目と薄ら笑いにやや声が淀む。努めて笑顔を作っては、何事もないような素振りをみせ……狸爺め、と内心穏やかではない)」


ピエラ=ビレ=エリダヌス「ごめんよ、みんな……本当に許して……こいつ本当に無礼過ぎるんだよ……なんでもかんでも思ったことは口に出すタイプでさ……(カウプスを庇うように一歩出れば深々と頭を下げて)」


ラナメール=ビレ=エリダヌス「カウプスの非礼な言動、私が代わりにお詫び申し上げます……(ピエラと肩を並べて同様に謝罪し)」


タニヤマン「いやなにお気に召されるな。お互い苦労しますなぁ(頭を下げるピエラ達ににわざわざ視線を合わせれば心底共感を示す。俺が血も涙もないやつでよかった…)」


カウプス=ビレ=エリダヌス「ふんっ……なにを謝ることがあるというのだ、僕は事実を述べたまでだ。」


ダリル「ええ………ただその犬に負けた場合は、犬以下の畜生ということになります………その発言忘れるなよ……?(そう刀をリンッと鳴らしながらそう首を傾げて発言した相手に滅多に笑わない男がにこやかに笑ってそう告げれば、これ以上の押収は無用と一歩後ろに下がり)」


クロ「(カウプスの事はムカツクから放っておくとして、ところで気になった疑問を謝罪にするピエラに投げかけ)ところで、ピエラちゃんは勝手にオレッチ、ちゃん付けしてるっスけど、女の子っスか?(っと、中性的な容姿に、疑問を投げかけ)」


ピエラ=ビレ=エリダヌス「少年っぽく見えるか?ボクはこれでもれっきとした女だよ、胸はないけどね。(クロの問いかけに対してなれてると言わんばかりに)」


クロ「てっきし男の娘(こ)枠かと思ったっスけど、これは失礼したっス!オレッチどっちでもイケるっスけどね!(っと、守備範囲は広いと言わんばかりに、ウィンクして返し)」


クラスタ「なに、胸がないのも立派なステータスだ。恥じることはない。堂々としていたまえよ(ピエラが自身の胸のことを話せば、うんうんと頷きながら笑いかけ)」


ピエラ=ビレ=エリダヌス「おっ……話がわかるね、クラスタ。いや、今日から同士と呼ぼうじゃないか。(フォローするような言葉にぱっと表情を明るくさせて)」


萌黄色の髪の少女「あーーっ!!ここだったーー!ごめんなさい、御父様!!!イーリィ、どこが入り口か忘れちゃってた!(どんっ、とけたたましい扉の開閉音を響かせて、底なしに場の空気に不相応な大声が続く。オーランド家一同のことなど視界に入っていない様子でずんずんとドモレウォットらの元へと大股で近づいて)お待たせ!!!!!」


タニヤマン「セロリー!なぜここに!?(まさかこいつも貴族なのか!?)」


クロ「(先ほど、ダリルと熱い接吻をした少女が突如として現れれば)なに!?先ほどダリルと熱いチッスをした、少女じゃないっスか!?(っと、目を白黒させ)」


クラスタ「キス魔がでたぞ!囲めぇ!生け捕りにしろぉ!!(突然の再訪を果たした少女に声を荒げ)」


ダリル「―――貴様………!!!!(突如現れた観客席を混沌にした人物に驚きの表情を向ければ)貴様のせいであの後どれだけ大変だったとーーーッッッ!!!!(そう問い詰める様に距離を詰めれば)」


タニヤマン「…!(もとはと言えばこいつのせいで話がこじれたのだ。そんな奴が再び姿を現したということは…。恐る恐るダリルやクラスタを確認すれば)ほら来た!!」


ドモレウォット=ビレ=エリダヌス「イーリィ…!勝手に出歩くなと言っておいただろう…!今日がどれだけ大事な日かあれ程言い聞かせたのに解らんとは……!まったく何度私を困らせるのだ、お前は…!」


イーリィ=ビレ=エリダヌス「あ……ごめんなさい。(開口一番に叱責を食らえば、一瞬、理解できずに表情を固まらせ気落ちした様子。声音をか細くさせては蚊の鳴くような声で謝罪し)」


イーリィ=ビレ=エリダヌス「でもね――!御父様、露商の人が美味しそうなの売ってたの!!これ、皆喜ぶかなって思って!(ぱっと、表情は一転して花咲くような笑顔で茶色の包み紙を差し出して見せる。香ばしい匂いを発散するそれは鶏卵と小麦をつかった揚げ菓子であった)」


ドモレウォット=ビレ=エリダヌス「要らぬわ!そのような下民の餌などに時間を裂いておったのかお前は!(全くもって埒外の子だと、差し出された紙袋を唾棄するか如くはたき落とせば、絨毯上にピンポン状の揚げ菓子が溢れ)」


イーリィ=ビレ=エリダヌス「あっ……あっ……もったいない、もったいない……!(絨毯上へとぶち撒けられた菓子類を手で拾いながらも、周囲からの声にようやく気づいて半腰になりながら眦を決して)」


イーリィ=ビレ=エリダヌス「ちゅーしてジュース分けてくれた人だーーーーー!!!(ダリルを指差して控室全体に響く声でのたまい。)」


ピエラ=ビレ=エリダヌス「いっ…!?ちょ……大声はやめよう、イーリィ……事実確認はあとでしっかりするから、今は黙って…(とんでもないことを口にし始めた女性をなんとか止めようと)」


タニヤマン「(おやおやぁ?こいつとんだ狸親父だな…・・・?)チェルザーレ様とはえらい違いだな(ぼそりとそう呟けば)」


クラスタ「いやまて(飛びかかろうとする寸前、冷静になって立ち止まる。クロはキスシーンをみて歓喜していた、いや羨望のまなざしを向けていた。つまり、あれはご褒美っだったのかもしれない……、つまりここで敵視しているのは自分だけなのではないか。そういった思惑が頭の中を駆け巡る)あっ、もったいない(数秒静止していたが、不意に少女の手から叩かれ零れたお菓子を、つい勿体ないという理由だけで反射的に拾いだす)」


ダリル「―――………。(距離を詰めたがその光景に脚を止めれば、落ちた揚げ菓子を手に取って拾い集め一つ口に含めば)ふむ、旨いじゃないか。(そう言葉を告げると)」


クロ「(少女と親子の酷いやり取りに、驚きを見せながら)酷いっス・・・、あのスカした優男がクソなのは分かったっスけど・・・親も親っスね・・・(っと、小声で吐きながら、肩を竦め)」


タニヤマン「ちゅーしたのは貴様だろ…下品な女だ…あんな大声で…(イーリィの絶叫にドン引きし)」


ドモレウォット=ビレ=エリダヌス「オーランド家の皆様、お見苦しいところをお見せしてしまい、すみませぬな。娘のイーリィはこの通り、少し抜けておりまして――……私どもが幾ら躾けても犬猫のような有様、困ったものですよ。(ぱっと一同へと視線を戻せば、先刻と同様の温和な語気で。)皆様、この子の言うことにはどうか耳を傾けませんよう、生まれつき知恵の遅れた子でしてな」


クラスタ「(ダリルが揚げ菓子を手に取り一つ口に含んで感想を述べる。ダリルの良好な言葉に自分も拾った揚げ菓子を齧り)うむ、うまい。先ほどの愚行は置いといて、このお菓子選びは良いセンスだ」


ダリル「違う、勝手にちゅーしたのはお前だ。捏造するんじゃない。(そう口をへの字にしながら抗議すれば)」


タニヤマン「…おいクロ。個人的にはこの親父の方がいけ好かないのだが…俺の気のせいか…?(クロに対しこっそりそう嘯けば)」


イーリィ=ビレ=エリダヌス「あっあっ……ありがと……!みんなで食べようと思って一杯買ったの……(ダリルとクラスタが散らばった菓子を食べる所作にしどろもどろになりながらも、頭を下げて)わたし、イーリィ!!!いーりぃーびれ、えりだぬす!!(大きく笑んでは先程の出来事にも気にした様子もなく微笑めば、つたなく名を告げ)」


カウプス=ビレ=エリダヌス「……まったく…仕合直前に連れてくればよかったろ……。はぁ…これじゃぁ面目が丸つぶれだ……」


クラスタ「まあ、確かに彼女の貞操観念については再教育が必要だろうさ。あの様子だといつどこで不埒な行動を行って悪人に連れ去られるとも限らんよ(ドモレウォットの言葉に家族としての扱い方について疑問符は残るところはあるが、他人の家庭の事情にはさほど興味はなく思ったことを口にする)」


シビラ=ヌラ=オーランド「(ダリルやクラスタの後に続いて、隅っこの方に溢れた揚げ菓子を拾っては返そうかと思ったが口に含んで見せる。二人の所作に言葉なく微笑んでみせ)」


ダリル「ダリルだよろしく頼む。(そう拾った菓子をもう一つ口に含んで口元を上げるようにして挨拶をすれば)」


クロ「(辺境伯が叩き落した菓子を皆食べているのを見て、自分も口に含み)美味いじゃないっスか!(っと、気にせず頬張ってみせ)オレッチクロ!ダリルに熱いチッスした様に、オレッチにもよろしく!(っと、サムズアップして返し)」


カウプス=ビレ=エリダヌス「ふふ……地面に這いつくばって、まさに犬だな……おい、仲良くできてよかったじゃないか。教養のない野良犬同士気があったか?(控室で行われる奇妙な情景に浅く口許に手をやっては嘲笑をにじませ)」


イーリィ=ビレ=エリダヌス「だりる、宜しくね!今日の仕合もよろしくね!!(声のボリュームが明らかに調整できていない音量で紡ぎ、カウプスの皮肉はまったくもって通用していない様子で)わんっ!!わんっ!♡イーリィ、犬の真似上手だよ!!」


カウプス=ビレ=エリダヌス「チッ……本当にエリダヌス家の子か、あいつは……」


タニヤマン「(なんだこれ…どうすればいいの…)」


クラスタ「ふむ、ボクの名前はクラスタだ。(お菓子を齧りながら、残った分を袋に詰めて差し出す)……クロよ、流石に兄弟でもその発言は常識を疑うぞ(将来、女遊びを尽くすに尽くして『今月は1000人切り余裕っす!』という黒い大人のリカントを想像しながら思わずクロとイーリィの間に入り)」


イーリィ=ビレ=エリダヌス「いいよ!!!!ムポポンフルーツ持ってこようか!!?(クロの言葉へと大声でうなずいてみせれば、次いで袋を差し出してくれたクラスタの額へと膝を折って、口づけを落としてみせ)クラスタちゃん!ありがとう!大好き!!」


クラスタ「(額に口づけをされた部分に手を当てて笑みをこぼす)ふむ、ボクはあまりキミにいい印象はもってないのだがね。だが好意は受け取っておこう(口元を緩ませながらチェルザーレに呼ばれて背を向けた)」


ドモレウォット=ビレ=エリダヌス「……よし、そろそろ時間になるな。前の仕合も終わった頃だろう。皆みながた、どうぞエリダヌス家とオーランド家の御前試合をご照覧あれ。(控室に詰めかけた貴族らに大仰に手を開き)」


チェルザーレ=ヌラ=オーランド「お前ら――時間だ。……ダリル、クロ、クラスタ、ターニャちょっとこい。(そうこうしている内にとうとう仕合の直前となれば、不意に4人をチェルザーレが呼び止める。円陣を組むように強引に姿勢を取らせれば――1人ずつ視線を配らせていって、周囲が聞き取れぬよう小さな声音で)良いか、善戦を装うのは結構だが、加減しろ。――神官は常に控えているが、勢い余って殺すんじゃないぞ。……シビラの事も頼んだからな」


チェルザーレ=ヌラ=オーランド「……感情をコントロールしろ、貴族どもとの交流は腹芸だ。浅い挑発に乗るな(これまでのやり取りを見遣っては嘆息をつきたくなる気持ちを抑え、力強く紡ぎ)」


タニヤマン「(ようやくか…落ちていた揚げ菓子をこっそり懐に忍ばせてから後に続き)お任せを。これでも心得ております(チェルザーレの言葉に力強くそう返せば)」


ダリル「イーリィやめておけ、クロにやる価値はないぞ。(そう辛辣な言葉で静止すれば、そこで当主に集められるようにして言葉を聞けば)諒解いたしました、善処します。(そういつもの感情のこもってなさそうな言葉でそう告げれば)」


クロ「うお、この娘押しが強いっス・・・手ごわい・・・(っと、自分の冗談にあえて乗ってきせた少女に押されつつ)とりあえず、試合ではよろしくっス!(っと、苦笑しつつ、この少女とは仲良くなれそうだと心境思い、集合をかけたチェルザーレ領主の元に集れば)他の娘は加減するっスけど、あのスカした顔の優男には矢を針千本みたいに刺して、泣かすっス!(っと、アイツだけは許さないと、返答を返し)」


ドモレウォット=ビレ=エリダヌス「ふう――……カウプス、ピエラ、ラナ、イーリィ、程々に相手してやりなさい。……加減して、早めに終わらせるように。養子まで取って迎え入れた子だ、疵物にしてはまずい。……なに前評判通りに事を進めるだけだ、緊張する必要はない。たかが田舎もののオーランド家だ(控室の奥で4人を呼び寄せながらも鷹揚な振る舞いを崩すことなく)」


イーリィ=ビレ=エリダヌス「はい!!!程々にいなかものの相手します!!!!!!!(隅っこで話しているのいまったく意味のない大声が響くのであった)」


ピエラ=ビレ=エリダヌス「わーーー!だから、声おっきいんだって!!イーリィ!!」


クラスタ「ふむ、いつもの領主らしくないじゃないか。神官が控えているのなら多少拷問をするくらい問題ないだろう。あの腐った性根も叩き直せてお互いの友好も深まるというものじゃないか(チェルザーレの慎重な言葉に疑問符を浮かべながらも眉を潜め)よくわからんが、向こうの貴族はボクらが下手に出なければいけない程なのかね」


チェルザーレ=ヌラ=オーランド「ま……歴史や格式的にあいつらのほうが上だからな、そういう複雑な上下関係があるのさ……(クラスタの耳元でぼそぼそと取り繕ってない軽快な口振りで囁いて)」


クラスタ「なら仕方あるまい。なんだかんだで良くしてくれている領主様きってのお願いだ。ボクもほどほどにぶん殴る程度で留飲を下げるとしよう」


クロ「そういえばシビラちゃん、あのスカした顔の野朗に、顔が赤くなってたっスけど、あんなのが好みなんっスか?趣味悪いっスよ(っと、嫉妬からか、拗ねた様な表情で、先ほどのカウプスとシビラのやり取りに、心のモヤモヤが晴れないのか、悪態をつきつつ)」


シビラ=ヌラ=オーランド「なっ、あれは……久しぶりだから緊張しただけよ…!ああいう上流階級の挨拶って苦手で……。(クロの言葉へと好みかと問われればぶんぶんと首を振って)」


クロ「フーン、それならいいっスけど(っと、拗ねるように後頭部に両腕を抱えながら)それならこの試合勝ったら、勝利を捧げたオレッチが手の甲に口付けしてあげるっスよ(っと、先ほどのカウプスの事は上書きしてあげると言わんばかりに、顔を紅色させながら)」


シビラ=ヌラ=オーランド「――えーっ、クロちゃんにああいう作法似合うかなぁ?というか手の甲くらいなら、いつでもしていいけど――これでも結構、貴族との交流あるんだからあれくらいの作法は結構あるのよ(クロの長耳を手にしながらも、自身の手の甲を差し出せば別にいつでもいいと言わんばかりに)」


ダリル「チェルザーレ様、ドモレウォット様、試合が始まる前にご提案があるのですが。(そう相手の作戦会議が終わる頃合いを見計らって後ろに手を組んでまるで軍人の様に男が無表情でそう言葉を投げかければ)」


ドモレウォット=ビレ=エリダヌス「おお、どうしたのかね。ダリル君――(いよいよ武舞台へと上がる直前に青髪の少年から呼び止められれば表向きは変わらず愛嬌を振りまき)」


チェルザーレ=ヌラ=オーランド「手短にな、ダリル。(ここまできたらドモレウォットが苦言を呈さなければ委ねるのみで)」


ダリル「ただ試合をするのも味がありません、ここは一つ勝者は軽いお願いができるというのはどうでしょう?金銭の要求など重い要求ではなく本当に軽い要求という条件で、その方が試合をする身としてもハリが出るというものです。(そう淡々と言葉を投げかければ)」


ドモレウォット=ビレ=エリダヌス「……ほう、これはこれは、オーランド家のご子息きっての御提案……良いでしょう。余興としても面白い、どうですかな?チェルザーレ殿。ご子息の提案、私は面白いと感じましたぞ」


クラスタ「軽いお願いとは、定義があいまいな条件だな」


タニヤマン「(早く終わんないかな…)」


チェルザーレ=ヌラ=オーランド「――……(顎先に指をあてがい思索を巡らせる。4人の腕はカタネイやノワキから普段からよく聞いている…これ程までに自信があるならば、と)良いでしょう」


ダリル「寛大なご配慮ありがとうございます。(そう深々とお辞儀をして感謝の意を表せば)」


ドモレウォット=ビレ=エリダヌス「それでは――……そのように。あとでどちらの泣き言が聞けるか楽しみですな。」


クラスタ「まあいい、面白そうだ。ボクも乗ろう。ママからターニャを治験に使うなと怒られたからな。ポーションの治験体が不足してたんだ。よろしく頼むよ」


タニヤマン「お前…この辺一帯全部光らせる気か…?(知れっととんでもないことを言うクラスタに恐怖を覚え)」


クロ「へへ、針千本矢のアートを闘技場に飾ってやりましょうかね・・・(っと、ニヤリと口元を歪ませながら)」


【控室を過ぎて円形闘技場の武舞台へと足を踏み入れれば、そこは既に取り巻く観客らの視線が一点に集る台風の目であった。歓待席では決して感じられない群衆の注目を浴びるという重圧。声を張らなければ傍らを歩く人との会話すらも成立しない雑音が織りなす異質な空間――あくまで儀礼的な意味合いが強い試合とはいえ、否応なしにこれから刃を交えることを意識せざるを得ないだろう。】


【両家は武舞台の両端に横並びに整列し、その中央に司祭である第三家の諸侯が佇立する。】


イスルギ「みんな~!頑張れ~!シビラだけは足引っ張んないようにね~!」


コルタナ「あんたら適度に手を抜きなさいよー!(両手を口許に添えてメガホンのようにしながらも、イスルギと横並びになりながら身も蓋もないような声援を送り)」


【ロールスタート】


タニヤマン「戦いを始める前に貴様らに言うことがある…。散々聞いたろうが…さっきチェルザーレ様に言われたとおりだ。わかってると思うが絶対に殺すな。今度こそ母上と俺たち全員の首が飛ぶと思え。なぁに、ちょっと力の差を見せつけてやれば泣いて詫びるさ…セロリー達にはかわいそうだが…やつらの自尊心を粉々に粉砕してやろう。貴様らの方が強い。信じてるぞヒーロー共……(そうだ、今まで乗り越えた苦難に比べればこんなの屁でもない。こいつらなら…俺たちなら絶対勝てる。…どれここはひとつ鬨の声を上げようではないか)」


タニヤマン「では行くぞ!!ぶっ殺す!!Yeahーー!!(あ…間違えた…)」


ダリル「ああ、死なない程度に殺せばいいんだな?諒解した。(そう完全に矛盾している言葉を紡ぎながら頷けば)」


シビラ=ヌラ=オーランド「うぅう……なんか人前だとやっぱり緊張するわね――……(さすがにここまでの大勢の衆目に晒されてしまえば、がちがちに震え上がってしまい。ターニャの言葉に対してやけくそに片腕突き上げて)ぶっころす!!やぁーーーーーーー!!」


クラスタ「(背負った2丁の錬金銃を抜き取る。前回まで使っていたマスケット銃ではない新作のショットガンだ。使いやすいように軽量化され、前線特化の仕様になっている)うむ、了解したぞターニャ。ちゃんと数回殺す程度で抑えようじゃないか」


クロ「(ターニャの嗜め、そして言ってる発言があべこべな事に困惑しつつも、自分も勿論そのノリに乗り)いいじゃねえっスか、ターニャ。いくぞ!!ぶっ殺すッス!!Yeah―――――ッッッ!!」


タニヤマン「違っ…私そんなつもりじゃ…」


イーリィ=ビレ=エリダヌス「(がしゃんがしゃんと自身の倍以上の長大さはあるハルバードと片手にはショートソードを手にしながらも、まるでそれらを枯木をもつかのような容易さでのしのしと舞台上へとあがり)よーーーーーっし!!!がんばるぞぉおおおおおおーーー!」


カウプス=ビレ=エリダヌス「吠えるのだけは得意だね……これだから礼儀のなっていない田舎者は――……前衛は任せたよ、ピエラ、イーリィ。(魔導書を取り出せば、前髪をかきあげてさめざめと笑み)」


ピエラ=ビレ=エリダヌス「よーっし……やるか。カウプス……ラナ、ボクがなんとか食い止めるから、その間にどうにかするんだよ…(重厚な盾と長剣を手にしながらも、緩慢に舞台上へと進み)」


ラナメール=ビレ=エリダヌス「はぁ……何事もなく終わりますように……」


公卿司祭「それでは第347回となる公卿御前試合を執り行う。めいめいが出来るだけ己のなり得るものを一切の諸侯、領民へ示すこと、此度の機会に怨恨の尾を引かず内省は己の内に留めること――今後の両領地及び、他領に対し健全な心身の模範となり、ひいては領土の安寧に資することを目的とし、今ここにエリダヌス家とオーランド家の御前試合を宣言する。」


公卿司祭「それでは――両家共々、武舞台の端へ。」


公卿司祭「第347回公卿御前試合―――はじめぇ!!!(大きく腕を空へと突きあげれば努めて会場内に響き渡るように、大声で試合の開始を告げる。)」

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