第5話 冒険者ギルドへ

孝太はガルフに連れられ、街の中心部へ向かっていた。


バルドールの街は活気にあふれ、人々が忙しそうに行き交っている。市場には果物や肉を売る露店、鍛冶屋の店先では剣や鎧が並び、酒場からは賑やかな笑い声が響いていた。


(本当にゲームの世界みたいだ……)


そんなことを考えていると、ガルフが立ち止まり、目の前の建物を指差した。


「ここが《冒険者ギルド》だ」


冒険者ギルド《銀狼の爪》


石造りの立派な建物の前には、武装した戦士やローブを羽織った魔術師のような人々が出入りしていた。


「ここで正式に身元を登録してもらう。登録すれば、街での滞在許可が下りるし、冒険者として仕事を請け負うこともできる」


「冒険者……」


ゲームの世界ではおなじみの職業だが、孝太はまだ実感がわかなかった。


「とにかく中へ入れ」


孝太はギルドの扉を開け、中へと足を踏み入れた。


ギルドの受付


ギルドの中は広く、木製のカウンターの奥には何人もの受付係が並んでいた。奥には酒場のようなスペースもあり、装備を整えた冒険者たちが談笑している。


「おう、ラナ。新入りの登録を頼む」


ガルフがカウンターの女性に声をかける。


受付にいたのは、金色の髪を持つ若い女性だった。

青い制服を身につけ、微笑みを浮かべている。


「こんにちは、新しく冒険者登録ですね?」


「え、あ、はい」


孝太がうなずくと、ラナは手慣れた様子で書類を取り出した。


「では、お名前と年齢をお願いします」


「孝太です。年齢は……25歳です」


「コウタさん、ですね。では次に、《ステータスカード》を発行しますので、こちらの魔道具に手をかざしてください」


カウンターの上には、不思議な紋様が刻まれた青い石が置かれていた。


「……え?」


「この石に触れると、あなたのステータスが記録されます」


孝太は戸惑いつつも、言われたとおりに手をかざした。


すると——


ピコン!


またしても、青白い文字が孝太の視界に浮かび上がった。


[ステータスを取得しました]


【名前】孝太

【レベル】1

【職業】???

【スキル】

・《プログラム言語の加護》

・???


「……え?」


ラナがステータスカードを確認すると、驚いた表情を見せた。


「職業が……未定? そしてスキルの詳細が不明?」


周囲の冒険者たちも、ざわめき始める。


「おいおい、何だそいつ?」

「職業未定なんて、ありえるのか?」


ガルフも眉をひそめた。


「お前、本当に何者なんだ?」


孝太は答えられなかった。


(俺は……一体、何になったんだ?)


しかし、この瞬間から孝太の運命は大きく動き始めることになる——。

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