VS確定申告
茅
前編
SNSでは定期的に、先輩作家による確定申告への注意喚起が流れてくる。
2024年に商業デビューした作者(以後C)も、忘れずに開業届と青色申請書を提出した。
このC。もう何年も社会人をやっている年齢だけは立派な大人なのだが、専門知識のおかげで何とか食いっぱぐれていないだけの情弱。
今まで控除の対象になるような行為は、ふるさと納税くらい。
しかも毎年ではなく何年かに1回レベルなので、普段は会社が用意した見本通りに、年末調整の書類を提出して終了。
こんなCだったが、運良く本を出すことになり事業所得の申請をするに至る。
しかも同じ年に家を買ったせいで、所得税の方でも住宅ローン控除を申請することになるという人生初のダブルパンチ。
ガイド通りにボタンを押すだけのチュートリアルしか経験がないのに、いきなりマルチバトルに飛び込むようなものである。
*
「白色は簡単だが、青色の方が税負担を軽くできる」その一点だけで、青色申告を選んだC。
オンラインタイプの会計ソフトを導入し、作家業関連の収支があれば都度入力。
カテゴリが微妙にわからないのがあっても、なんとなくで判断して登録。
カクヨムのロイヤリティプログラムでAmazonギフト券交換したけど、これって収入に入るの?
わからないけど、脱税扱いされたくないから入力しとくか――と、こんな次第。
(※確定申告会場のスタッフに確認したところ、Amazonギフト券への交換は収入扱い)
2024年は1社でしか刊行していないこともあり、収入の入力は超シンプル。
支出もお中元お歳暮と、執筆用に機材を購入しただけ。これまた数行で終わり。
なおインターネットや、参考文献の購入は申告せず。
インターネットの方は、プライベートの割合とか面倒なことになりそうなので割愛。参考文献も電書で領収書が出せなかったので同じく。
ギリギリになって慌てないように、事前に帳簿付け&領収書を揃えた状態に。
会計ソフトの誘導通りに事業所得を入力し終わり、所得税に進んだときに悲劇は起きた――!
*
Cは去年友人宅に遊びに行き「マイホームいいなー」と思い、2週間後にマイホームを購入した。
ちなみに以前から検討していたとか、調べていたなんてことはない。
「いいなー」と思った次の休日に、住まい探しのカウンターに行き、今まで住んだ中で一番気に入った土地で物件をピックアップ。
検索結果の説明時に見学の予約をいれてもらい、そのまた次の休日に行ってその場で決めた。
家購入のために行動したのは、実質2日である。
半ば冷やかしというか、「家欲しいわ」という衝動を宥めるための見学ツアー。
必要に迫られているわけではないので、グッとくる家がなければ家探しそのものを終了するつもりだったが即日契約。
購入の決め手は「ここでの生活がリアルに想像できて、その時にワクワクした」「何年先だろうと今後の家探しは、この物件を基準にするんだろうなと思った」から。
フッ軽というか頭が軽い。
元利均等返済と元金均等返済も知らなかったレベルなので、住宅ローン控除なるものも、とりあえず購入した物件が対象になることしか知らず。
ネットを読みあさって、必要そうな書類を取りそろえていざ入力。
と思ったら、画面には「計算明細書に記入して計算し、その結果を入力してください。計算書は外部サイトに飛んで印刷するか、税務署でもらってください」という非情な文言が。
え?
今までのように、言われた数字を入れたらできあがる仕様じゃないの?
国税庁のサイトって、どの書類を印刷するか探そうにも、長文タイトル小説を超えるシロモノが並んでて目が滑るんだけど。
そもそも会計ソフト君。君は無料ソフトじゃないのに、これってどうよ。
難しい手続きを簡単にするのが君のウリじゃないのか?
こちとら右も左もわからない猿以下なんだぞ。検索してもよくわかんないんだわ。
――結果。Cは自力で最後までやることを諦め、税務署の相談窓口を予約した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます