ネタ備忘録 〜だって忘れそうだもの〜
小余綾コウ
第1話 エミリー・ブロンテの語り手
一話目はまず前提として、自作の紹介。
このような自作の中に詰め込んだ雑学を語ります、というご案内ですが、基本的には自作を説明はしません。読んでくださった方が裏ネタを楽しんでくだされば一番という不親切な雑学帳です。
現在、更新中の『風はハーブをささやく』は諸事情から、異世界ナーロッパを目指して私は書いております。時代や地域的に「違う」となる要素を意識的に入れました。
只、主なモデル時代に据えているのはリージェンシー、ジョージアン辺りです。要はジェーン・オースティンからブロンテ姉妹の時代をイメージしました。
「この中に『嵐が丘』はないのか」
ラノベやWEB小説を読んでいて私がいつも気になることです。
エミリー・ブロンテの名作と言われる『嵐が丘』。発表当時の批判の多くは今、ラノベやWEB小説に向けられるものと似ていませんか?
勿論、今の時代に翻訳された批判ですから、私の理解が足りないところはあるでしょう。全ての作品が『嵐が丘』と言うつもりもありません。全てが『嵐が丘』である必要もないです。
只、斬新なものへの読者、特に高スペック読者の無理解、という評価基盤は必ずあります。
皆、自分の好きなものを「良い」と思っていますもの。
私は自分が現在の『嵐が丘』と直面した時、それを必ず良いと判断できる自信はありません。ですから、カクヨムさんで活動するに当たっては時々「この人はエミリー・ブロンテ(または谷崎潤一郎)かもしれない」と意識します。
そんな訳で、私にとってWEB小説とエミリー・ブロンテは親和性が高い存在。
ネットに長編を晒すのは初めてでしたから、一種のWEB小説賛美として『嵐が丘』発表時、散々に言われた構成や文章のような手法を使いたい、と私は思いました。誰得なのですが(苦笑)
今、何を言われていても十年後、二十年後は判らないですよね。
と、あれこれ高尚なことを仰る前に『嵐が丘』を思い出して欲しいな、というのがモチベーションで書いた話です。私の技量では伝わらないことは百も承知で。
文章など、どんなに易しく書いても、難しく書いたつもりでも所詮はその時代人向けです。時が動けば、読む妨げは中から生まれます。時代が違う、ってそういうことですよね。
ですから、視点も言葉も今に特化して書く、という手法は一つの優秀な選択だと私は思います。
文体や文章も少し時が経ったら、急に評価して来るかもしれないではありませんか。
主にその媒体を子供時代に楽しんだ世代が優秀な大人になる頃、カウンターの評は必ず来ます。大昔から。今のWEB小説がどこかの時代で口を揃えて絶賛されていたって私は驚きません。
だって「青少年有害図書」とも呼ばれることのあった漫画が、大人になったら「クール・ジャパン」ですよ? 何が起こった、革命? と、オタクとしてはツッコミましたとも。
かつてオタクを吊るした方々、クール・ジャパンになった漫画やアニメを嬉々として我が子に提供。きっと馬鹿にしたことすら覚えていません。悪口を言う人間、そんなものです。
という訳で、大袈裟に言えば「信頼できない語り手」を意識して今回、書きました。長編でこれをしない方が良い、というのは判っていたので、更新を追ってくださった方には内心、申し訳なかったです。
でも、やはり『嵐が丘』と言えば、語り手に翻弄されがちな恋愛系ではありませんか。
実はカクヨムコンに十万文字を提出したら、私の書く修行も卒業で、後は緩くエッセイか日記を書く位かと思っていた為、最初で最後になりそうな長編投稿は、
「私はWEB小説を好きだし、どこかで信じてます」
というWEB作家さん全般へのファンレターめいた感覚でした。
これを堂々と言うのは、小っ恥ずかしいではありませんか。
大体、私は「なんか」とか「如き」と呼ばれるジャンルが好きですもの。軽んじられているから自由にできる、というお宝がありますので。敢えて私は褒めそやしたくはありません。
だから、人には気付かれないように自己満足な形にしておこう、と思いました。
でも、十年後は自分も忘れていそうで(笑) 卒業失敗ついで、カクのモチベを保つ為にも書いている次第です。
勿論、乙女ゲームの古典的設定を今、真面目に小説で書くには、どうしたら良いか考えると、ゲームのストーリーが全てを語り切らない可能性を利用し、反転させることが有効な面からも選んでいます。
ゲーム中は受けの悪いキャラが、背景を考えると愛すべき存在になる……二次創作や「悪役令嬢」ものの基本ですよね。
色々と自分の書こうとしている設定に相性が良いと感じたのですが。意図的にこのような設定をした上で冒頭からインパクト強くなんて難度高過ぎました。
そんなこんなありまして、ヒロインの名前がジェーンです。
エミリー・ブロンテさん、ミドルネームがジェーンですよね。オースティンさんもジェーン、シャーロット・ブロンテさんの代表作は『ジェーン・エア』。ジェーンから私は設定時代のイメージへ繋がり易いです。
乙女ゲームのヒロインという表の位置付け上、薄い名前の方が個性に合うことからも珍しく名前は即決でした(名付けするのが苦手です)。
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