数学少女と甘い百合恋愛をします!

心之助(修行中)

第1話「数学は恋の始まり」

 数学。


 私にはこれしか誇れるものがなかった。


 友達も居ない、心を許せる相手が居ない。


 みんなアニメや漫画の話ばかりで数学に興味を持ってくれない。


 このまま、私『鈴永すすなが リナツ』は孤独に生きるのだろう。


 そんな事を考えながら黒板に数式を書き終えた後に先生に向かって言った。


「先生、これで良いですか?」


「あ、はい、文句ないです……」


 先生のこの反応が嫌いだ。私の数式を理解してくれない。


 クラスのみんなだってそうだ。私を天才としか見てくれない。


 ……私は、ただ友達が欲しいだけなのに。


 私が自分の席に戻ろうとしたら、一人のクラスメイトが手を上げた。


「鈴永 リナツさん! アナタの数式に惚れました! ワタシと付き合ってください!」


「……は?」


 クラス全員が固まった。


 手を上げたのは、昨日来たばかりの転校生の『風鳴かぜなり ミミカ』だった。



「はい、あーん」


「なんでやねん!」


 昼休みに、ミミカと一緒にお弁当を食べていた。


 しかも、あーんをされてるし、何なんだ、この子?


「ちょい待てい! 私達、付き合ってないだろ! と言うか女同士で付き合うってなんだ!?」


「What? ここは女子校だし女の子しか居ない学校なんだから良いじゃん」


「良くなーい! と言うか、ここがどう言う学校なのか知ってるのか!?」


「あー、立派な数学者を生み出す為の学校でしょ? だからワタシはここに来たし、将来は数学者になりたいなーと思ってたら、リナツちゃんの数式を見て最高にカッコよく見えて惚れた! 以上!」


「それが付き合う理由? ははーん、さては私から技術を盗むつもりなんだろ?」


「No,no.純粋にリナツちゃんの容姿に惚れた。一目惚れってやつ」


 わ、訳がわからない、あと少し英語を挟む喋り方がイラっとする。


 何なんだコイツ? しかし、これだけは言ってやる。


「あのなー、私が欲しいのは友達であって恋人じゃない! No! 恋愛泥棒!」


「Oh,じゃあどうしたら恋人になってくれるの?」


「……」


 コイツは数学者になりたいんだよな? 私はたまたま数学の才能に恵まれただけで数学者になるつもりはない。


 じゃあ、試してやる。


「素数に1が含まれてない理由を答えろ」


「知らないから教えて」


「諦めるの早!?」


「いや、知らない事を無理に考えて時間を浪費するよりも有識者に聞いた方が早くない?」


「ちょっとは自分で考えたらどうなの!?」


 分かった。コイツはアホの子だ。


「それよりもリナツちゃんとデートしたいなー。帰りに喫茶店でパフェを食べ合おうよー」


「嫌だぁぁぁ!! 過程をすっ飛ばして恋人になる狂人とイチャイチャしたくない! それは数式を書かずに答えを出す暴挙だ!」


「そうだよ。ワタシに過程なんて無い。だから最速で答えに辿り着ける自信がある……それが嫌なんだ。でもリナツちゃんは妥協もせずに最後まで数式を書き切る姿が切なくて、誰かが隣に居ないと散ってしまうような儚い花のように見えたから、ワタシは恋人になりたいと思ったの」


「…………1+1は?」


「ペアノの公理だっけ? あんまし詳しくないけど、イタリアの数学者であるジュゼッペ・ペアノさんが1891年に考案した公理だよね?」


「アンタ、素数の1を知らないくせにペアノの公理は知ってるのかよ……あーはいはい、分かりました。恋人だっけ? なってやるよ。そして幻滅させてやる、私は数学しか取り柄がない女だと分からせてやる」


「じゃあ、ワタシはリナツちゃんを完膚かんぷなきまでに、ワタシが居ないと何もできないダメ人間にしてあげる」


「ヤンデレだぁぁぁ!?」


 こうして、私は風鳴 ミミカの恋人になった。


 もう一度言う。なんでやねん!!

 

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