第10話 ラターシャが来た理由と魔法実習

(ラターシャ!?)


え?何でラターシャがいるの?確かにウラーが来てるって言ってたけど、どうして?みんなざわざわしてるし、俺の方見てるし。いや、俺何も知らないからね?本当に。


「ラターシャ•シャオ•カラータです。今日は魔法のことについて話に来ました」


あ、いつもと違う。雰囲気が氷のようだ。これが公の場のラターシャか…


「最近、ここカーリオ王国に災害級の魔物が出没しています。そして今回騎士団、魔法師団の援助のため適性検査を受けてもらいます」

「なぜここにカラータがいるかというと、なぜか高校内で一番魔力量が多かったからだ。そして指導者として呼んだのだ。」


あ、ナタリアとウラーがこっち見てる。すいません、俺です。ごめんなさい。いや、でもこれはラターシャの夢を叶えるため。だが、これはさすがにまずいのでは?でもこのことが起きた以上もう隠せないし…ごめん、ラターシャ。


「では、適性検査を始めます」


そして、順番が進みいよいよ俺の番になった。


「次、ソラ•シャオ•イシャーラ」

「はい」


これは流石に貴族モードにした方が良さそうだ。そして水晶に手を当てた。


「こ、これは!?ラターシャ様と同じ全属性!?」


実はこの水晶、属性まで分かってしまうのだ。というか全属性教えたの俺だしね。


「イシャーラ。お前もカラータと指導係になってくれ」


え、ガチ?あ〜、まぁそうなっちゃうよね。うん、仕方ない。


「分かりました」


そして適性検査が終了し、俺は校長室になぜか呼ばれた。


「失礼します…!」


驚いた。ラターシャがその場にいたのだ。


「君はカラータ君と同じく天賦の才がある。だが、君はまだ15歳だ。なぜそんなに力がある?」

「それは…知っての通り私はイシャーラ家の養子です。父と母は魔法師団に入っており、エースでした。また、父と母の友人は全てAランク以上のハンターです。地獄というのも生ぬるいブートキャンプも行いましたので恐らくそのせいかと」

「なるほど。理由も聞けたことだ。指導のことよろしく頼む」

「了解致しました」


そして俺とラターシャは校長室を出た。だが、まだ私語は慎む。なぜなら魔力探知で誰かに見られているからだ。恐らく婚約したのを恨んでいる輩だろう。ラターシャも気づいたようで見えないように頷き、念話で話す。


(ごめんな。まさかこんなことになるとは…)

(いえ。お父様達も喜んでくれたので大丈夫です)

(あれ?喜んでくれたんだ?)

(えぇ、魔法の開花は平民、貴族関係なくいいことですから)

(なるほどな〜)

(それにしてもどこまで着いて行く気だ?)

(分かりませんね。私はもう帰るので問題ないと思いますが、気をつけてくださいね。結構気配遮断が上手い方々なので)

(そうだな。ありがとう。またな。)

(はい)


笑顔でラターシャを見送った俺は魔力探知で気づいた奴らの方を見る。睨んでいちゃもんつけられたら嫌なのでキョロキョロしているふりをしながら。予想通り学校の生徒だな。ん?この人達の魔力どっかで…あ、貴族の集まりの時周辺国の人間の魔力と同じだ。ということは…スパイか。恐らく公爵であり、王族とも縁があるラターシャに縁談話を出そうと思っていたら俺と婚約したってところか。はぁ〜めんど。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


そして二日後…

「では、魔法実習を行なってもらう!指導はラターシャ•シャオ•カラータとソラ•シャオ•イシャーラにやってもらう」


うげっ、高校と中学組み合わさってるからすごい人数だと思ったらこれはやばいな…


「ラターシャ•シャオ•カラータです。よろしくお願いします」

「ソラ•シャオ•カラータです。よろしくお願いします」


あ、ざわざわしてるわ。ん?あぁラターシャの魔力が多いなんてことないとか、婚約したから一緒に組合せしたとか分かりやすすぎるわ。俺とラターシャの能力舐めないでもらいたいな〜


「では、2人に魔法を撃ってもらう。2人ともここへ」

「あ、的作った方がいいですね。作りますね、ラターシャ」

「ですね」

「え?」


その瞬間俺たちは土魔法で的を作った。


「無詠唱?嘘でしょ?」

「「あ、やっちゃった」」


あ〜あ、やっちまった。詠唱にしとけば良かったな。あ、魔法師団長も顎が外れそうになってるわ。


「で、ではよろしくお願いします」


さすがに全力はやめた方がいいな。的はめっちゃ強力にしてるから何かない限りは壊れないだろうけど…魔力の濃さでみんな倒れちゃいそうなんだよな〜、魔法高等学校とナタリアとウラーを除いて。


「「はぁ!」」

『………』


あれ?無反応?一応撃ったんだけど


「で、では、見せてもらったところで皆さんも実践してみましょう。」


あれ?魔法師団の人汗かいてるな大丈夫か?あれ?ナタリアとウラーに見られてる。やりすぎたか…?あ、始まったな。お?あの人はコツを掴めそうだな。


「すいません、アドバイスしてもいいでしょうか?」

「はひ!?」


あれ?驚かせたか?顔真っ赤になってるな、この人。多分女子高校生だと思うけど


「今のを見ていると詠唱とかはうまくいっているので大丈夫だと思います。あとはイメージかと」

「イメージ…ですか?」

「はい。魔力を手に集中させ、水で魔力を広げたことを思い出し、自分が一番分かりやすいイメージをするんです」

「わ、分かりました」


そして詠唱が始まった。お、上手いなこの人。


「あ」

「イメージも詠唱もバッチリですね。あとは、魔力の使い方と集中力を高めれば、すぐにできると思います」

「あ、ありがとうございました!」

「いえ、これが今の私の役目ですので」


というか、俺より年上だよね?この人。あ、ラターシャも教えているようだな。うん、やっぱりラターシャの面の顔はびっくりするな。まぁ、こっちとしてはラッキーだけど。ん?なんか勧誘されてる?これはさすがに止めに言ったほうがいいな。


「どうかされましたか?」

「あぁ、こいつが笑えって言っても笑わねぇんだよ!」


は?こいつ何言ってんの?


「先輩、申し訳ありません。現在、こちらは訓練中です。彼女も訓練の指導をしたいはずなので」

「あ?お前、俺に口出しすんのか?お前、魔法はできるようだが、筋力はできないだろ?」


まじでなんなの?この人あ、殴りかかってきたわ。


「っソラ!」

「なっ!!」


やっぱり、おじさん達に比べると速度が遅いな。もういっちょ投げとくか?いや、やめよう。


「鍛えていないと思ったのですか?魔法にも集中力や身体強化の場合、体のことを知らないといけません。あなた方には負けますが、私も少しは戦えるんですよ?」

「ちっ!!」


あ、逃げた。先生達がこの一部始終見てたんだな。すぐに捕まってやがる。


「そ、ソラ大丈夫ですか!?」

「う、うん大丈夫だから、安心して」

「はぁ〜良かったです。私も身体強化で殴ったほうが良かったでしょうか?」

「い、いややめて良かったと思うよ。というかラターシャってたまに怖いこと言うよな」

「ふふふ、ソラに魔法を教えてもらったおかげです。」

「それは何よりだ」


ん?何よりか?なんかお義母さんと同じ方向にラターシャが行きそうなんだけど…ってまたコソコソ話してるよ。あれ?みんな驚いてる?


「ラターシャ様があんな顔をするなんて…」

「あんな表情初めて見たぞ…」


あぁ、そういうことか。バレて顔真っ赤になってるわラターシャ俺の背中に隠れるのはいいけど、もっと言われそうだけど。そして、初めての魔法実習は終了したのだった。



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