夜空のむこう
藤間詩織
第1話 悲しいバレンタイン
「はい。高木さん」
「ありがとう。義理チョコでもうれしいよ」
「今日は彼女とデートですか?」
「ああ、金曜日だからな。美嘉も待ってるだろう。今日は早く帰るよ。ほんとうにありがとうな」
そういうと高木さんはパソコンの蓋を閉じ、コートを着てフロアから出ていった。
玲子は深いため息をつく。
今日もはぐらかされてしまった。
高木さんは玲子の気持ちに気づいているはずだ。
彼女は、どんな人なんだろう。
綺麗なのだろうか。
背が高いのだろうか。
髪は長いのだろうか。
大人しいのだろうか。
痩せているのだろうか。
仕事はできるのだろうか。
家事はできるのだろうか。
毎日毎日玲子は見えぬ相手に嫉妬する。
勝ち目のない相手に。
二人は3年付き合っているらしい。
いずれは結婚するんだろう。
その時、玲子はどうする。
気が狂いそうだ。
でも、そんなこと言ったら、避けられてしまう。
いい男には絶対にいい女がいる。
玲子はデスクに戻るとパソコンをたたき始めた。
「よ!玲子ちゃん、俺にはチョコレートくれないのかよ」
同期の良太が話しかけてくる。
「今、忙しいのよ」
「知ってるぜ。玲子ちゃんが高木さんのこと好きなこと。相談に乗るよ。今夜飲みに行かないか?」
「行かない」
「行こうよ」
「どうして?」
「俺も玲子ちゃんに振られてるから」
「ちょっと、いきなりこんなところで言わないでよ」
「家帰っても一人なんだろう?街はカップルだらけだぜ。淋しくないのかよ。俺だったら淋しいなー」
玲子は考える。
高木さんは彼女と今夜どんな夜を過ごすのだろう。
彼女からプレゼントをもらって、彼女と過ごすバレンタイン。
家に帰っても、悶々と過ごすだけだ。
趣味でも作ろうとしても、今、趣味が思いつかない。
良太と飲みに行こうか。。。
「ちょっとだけね」
「やりー!」
大宮の街はカップルで一杯だった。
道行くカップルはどんな思いをして過ごしているんだろう。
高木さんと彼女は楽しいバレンタインを過ごしているのだろうか。
早く忘れなきゃ。
「でさー」
「良太。やっぱり、わたし良太を利用しているようで嫌だから帰る」
「まてよー」
玲子は南口改札に向かって歩き出した。
自動改札の中に消えていく。
今日は一人で、ベッドの中で泣いているだろう。
なんで、よりにもよって、彼女がいる人を好きになってしまったのか。。。
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