第1章

雛雀

第2話

「雛雀」




そう名前を呼ばれたので、そっ、と静かに"あの人"の前で平伏した。



実質、全国№2と言われている、夜雀。


その総長こそ、この人。




「何でしょうか。ジン様」




――ジン。


このお方は裏ではこう呼ばれている。


この人に”表”があるなんて、まったく知らないけど。



素性も、本名も、あたしは知らない。



知っているのは夜雀総長と、ジンの名前だけ。




「昨日は族潰しご苦労様」



「いえ。あんなの、ただのゴミ。簡単でした」




そう言うと目の前のお方はにいっ、と口角を上げて妖艶に笑う。


あたしを楽しんでいるかのように、深く。

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