第6話 私のお母さま

「俺は母に顔立ちがそっくりなので……」

「お母さまに?」

「はい。2年前に他界しましたが……」

「そう言えば……入隊した時に言っていたわね」

「俺は、母を殺した仇を探すために入隊しましたから……」


月華の表情は長い髪に隠れてしまって見えない。お母さまを殺された仇を探しているなんて、それも15歳で。一体この少年は、どんな過去を背負って生きてきたのかしら?


「お父さまに聞いたら何か分かるかしら?」

「桜花さま?他人の過去を探ったりしたら綾人さまに叱られますよ?」


私の呟きを風翔が聞きとがめるような瞳で見下ろして。


「それとも俺に叱られたいですか?」

「ちっ違うわ風翔。月華の過去を探るんじゃなくて私の過去よっ!」

「桜花さまの?」

「そうよ、私のお母さま……の……」


誤解を解こうとした私の瞳を、深緑の瞳が険しい色で見据える。

風翔の瞳が、どんどん険しくなって私は泣きたくなった。

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祝福を齎す姫と、破滅を呼ぶ姫のお話 神明紅葉 @kurehasinmei

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