智人-3・親友(ソウルメイト)

 俺の富醒【イメージ】が強いことが解り、町までの一人旅はせずに済んだ。一安心できたら、気持ちに余裕ができて、今度はクラスメイトがどうなったのか気になる。

 みんな、俺みたいな凄い特殊能力を得ているのだろうか?それとも、俺だけが特別に凄い力を持っている?みんなが凄い力を獲得していて、俺の優位性が無くなるから嫌だな。


「俺を小バカにする連中なんて、どうでも良い。

 会わずに済むなら、それば一番良い・・・だけど」


 一人だけ会いたい奴がいる。死んで欲しくない奴がいる。


「光のガイドは『誤差の範囲内で数名が道連れになった』って言ってた。

 ミコ・・・アイツも転移しちゃってるのかな?何処かで困ってなきゃいいけど。」


 源尊人みなもと みこと。出席番号32番。バスケットボール部に所属。中肉中背で容姿は不細工ではないが格好良いわけでもない。要は平均点。俺が1年生の時は別のクラスだった奴。生真面目で要領が悪い感じがして、ちょっとだけ小馬鹿にしていた。だけど、2年で同じクラスになって、話してみたら良い奴だった。


 俺が友達として認めているのは尊人ミコくらいだ。他の奴は誰が転移をしていて、何処で野垂れ死んでも構わない。


 昨日は俺の家で一緒にオンラインゲーム【ノーロピアンワールド・アクション】をプレイした。昨日だけでなく、これまで何度も一緒に【ノーロピアンワールド・アクション】をやっているんだけど、尊人ミコはゲームセンスが無いらしく、全然上手くならない。敵が射程圏に入っていないのに武器を振り回したり、明後日の方向に魔法を撃ったりして、酷い有様だ。だから俺がフォローをしてやる。俺が使わなくなった武器や鎧も提供してあげた。使わなくなったとは言っても、尊人ミコのゲームレベルなら充分すぎるほど強い装備品だ。俺とパーティーを組むことで、彼は全然役に立っていないけどキャラのレベルを上げられる。俺は、見ず知らずの役立たずなら相手にしないけど、尊人ミコだけは特別だ。

 このモーソーワールドに誘うメッセージが入ったのは、尊人ミコが帰ったあとだった。もし、尊人ミコが居る時にメッセージが入ったら、彼はどうしていただろうか?生真面目な奴だから、「やめた方が良いよ」と、メッセージの要求に応える俺を止めたかもしれない。


「だけど・・・もしそうなってたら、俺はこの世界には来られなかった。」


 きっと何処かで困っているであろう尊人ミコは保護してやりたい。「俺の仲間」と聞けば、令嬢バクニーは受け入れてくれるだろう。



 ふと一つの疑問が湧く。光のガイドは「モーソーワールドの住人は幼少時から剣や魔法が身近にあった」と言っていた。


「なぁ、バクニー。君は剣術や魔法は使えないのか?」

「急にどうしたの?」

「この世界の人は子供の頃から、武器の使い方や魔法を学んでるって聞いたからさ」


 圧倒的な攻撃力で瞬殺しちゃったから良く解らないんだけど、さっきの怪物ってどのくらい強いんだろうか?バクニーや馭者が武器や魔法を使えるなら、応戦はしたのかな?


「一通り学んでいます」

「さっきの怪物って強いのか?」

「はい、私や御者では大したダメージは与えられないでしょうね」

「・・・そっか。それなりに強いんだな」


 そうなると次の疑問が湧く。そんな危ない道中なのに、何故、護衛も付けずに馬車移動なんてしているのだろうか?


「人が住む地域や街道には、強いモンスターは出現しないのがルールです」

「・・・ルール?」


 もの凄く都合が良いルールなんだけど、俺が知るアニメやゲームは、特に説明も無いまま、だいたいそんな設定だ。


「この街道や町には、偉大な魔術師様が張った結界があるのです」


 帝都テーレベールを中心に、北の都市ノス、南の都市サウザン、東の都市アーズマ、西の都市セイ、北東の村ペイイス、南東の村トンナン、南西の村ミナーシャ、北西の村ウェスホク、帝都と東西南北の都市の間にある宿場、これらの都市と村、及び、それ他の地域を繋ぐ街道は、偉大な魔術師達が張った結界で浄化されている為に、強いモンスターは近付けない。


「・・・・・・・・・・・・・・」


 急に町や村の名前が15個くらい出てきたけど覚えられない。あとで、ちゃんと聞こう。


「それに・・・私だってゴブリンやコボルトくらいなら倒せます」


 この世界にゴブリンとコボルトが存在して、さっき俺が倒した怪物より弱いってことは理解できた。


「だったらなんで?結界ってのが壊れたのか?」

「いいえ、先程のモンスターが特殊なのです。

 あれは、魔法生物・フレッシュゴーレムでした」

「どういうことだ?」

「何者かがフレッシュゴーレムを作って、私を待ち伏せて狙った・・・」

「狙われる心当たりがあるのか?」

「・・・はい、少なからずは」


 現在の帝皇ていのうはカイーライ・アング。バクニーの父、ディーブ・ホーマンは帝皇の信頼が厚く、帝国の宰相に就いている。それを妬む政敵が、たびたびディーブの排除を企てている。


「・・・ですが、まさか私まで狙われるとは思っていなかったので」


 帝国は宗教多元主義。現在は、ディーブ・ホーマンが信仰するゴツゴー教の考え方=ゴツゴー主義がカイーライ政権の方針だ。しかし、ハメツ教の考え方=ハメツ主義で帝国を塗り替えたい一派はいる。


「・・・そっか」


 これも何かの縁だ。バクニーの力になってやりたい。


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