第6話

 ん? 文字? 達筆?


 便箋をじーっと見つめる。


 ……嘘でしょ、手書き?


「ね、ねえ、夕実。これってさ。印刷?」

「ビミョーって言いたいくらい。パッと見印刷っぽいけどー。そう言われて見れば、筆で書いているかも?」


 夕実が手にした便箋を裏から覗く。


 まさか、これは。


 いや、でも、松田先輩って……。


 明るくて元気。アホっぽいとこがあるのに、しっかりしていて。意外と真面目で。バスケも上手くて。気遣ってくれるし、楽しくしてくれるし。ひたすら元気。


 え、なにこれ。


 先輩の笑顔が走馬灯なんだけど!


 なんか、ドキドキしてきたし。


 なんか、夕実がニヤニヤしているんだけど。


「あたしらの特権は若さよ! 若さとは、アオハル! すなわち、モエでエモでキュンよ!」

「う、うん。そうだよね」


 ギュっと手を握られて、思わず頷いてしまったけど、夕実もアオハルしているのかなぁ。部活動命の学校生活だし。

 こう見えて、コンクール常連吹奏楽部所属、しかも超戦力だし。


「じゃあ、ハイドン役のあたしは行くわっ。頑張ることよ。ミス・マープル」

ワトソンだってば。そもそもマープルにワトソン出てこないよ。


 でも。

「サンキュー」


 夕実のやれやれという顔が、まぶしい。


「犯人逮捕おめでとう。でも、まさかのラブレターまで謎なのねぇ。楓らしいっちゃあらしいか。あ、結果は教えてんこ盛りー」

 夕実が、教室を出たところで振り返って手を振った。


 スカートが翻る。


 なんか、女子友っていいな。


 普段から持ち歩いている、封筒&便箋を取り出す。私は何事も基本、紙派。

 

 ひと息吐いて、窓を開ける。


 音が風に乗って聞こえてくるよ。


 つられて見た窓の外の風景は、桃色の装い。


 よし、決めた。

 返事を書くね。


   【ウカサルカス】


 私が悩んだ分、ううん、それ以上。悩ませてやるんだから。


 ミス研舐めんなよ。

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