第2話
〈第一の容疑者〉
美術部の佐藤くん。
去年、机が隣にあった頃。私が苦手としている絵で褒めてくれた。
「僕は好きだよ。塗られた淡い色が、自由に伸び伸びと春を謳歌している気がする」
その絵は、ただ単に鉛筆で描いていたらどうしようもなくなってしまって、画用紙一面に水色・桃色・黄色・緑色と水彩絵具で薄く塗っただけのものだった。
「確かに、楓の絵を褒めるって珍しいよねぇ」
「ひどい。夕実ったら。覚えていないのね。『見て見てー、あたしの絵。天才あらわるん子ちゃんでしょ! え、やばぁ、やっぱあたしらニコイチじゃん』って言っていたけど、夕実の絵も濃さが違うだけで似たようなものだったわよ」
「そんなこと言ったかなぁ?」
もう。都合の悪いことは忘れるタイプね。
私は他にも褒められているんだから。
「いつも季節感が出ていていいよね。彩りのある世界で生きているって感じがする」
ってね。
あれは秋頃だった。楓という名前のせいか、どうしても赤や黄色に染まる暖かな世界に魅かれてしまうのだ。
うん。褒められた記憶って、大事だわ。
「でもさー。絵はずば抜けて上手いけど、こういう学力はなさそうよね」
「え。ちょっ、夕実ってば、何言っているのよ。堂々とそんなこと言わないで」
「誰もいないんだから、こっそりでしょう? それに、絵については褒めているんだしー。あ、もっといい感じに言えばよかったね。アーティスティックなマインドは爆発しているけど、他の教科は自爆しているよねー」
そういうことではなくて。いや、言うだけ被害が大きくなる気がするから、スルーしよう。
でも、褒められただけでは違う、かな。
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