太陽の巫女

プロローグ

今からおよそ千六百年ほど前のことである。日本はと呼ばれていた。倭は紀元前の頃から中国や朝鮮と交易し、青銅器などを取り入れていた。


 後漢の光武帝こうぶていの頃と安帝の頃に倭国が朝貢ちょうこうしにきたことが後漢書に記されている。


 それから数十年後。倭国は戦国時代と化していた。国同士で日常的に戦をし、大いに乱れていた。


 イト国(伊都国)、ヤマト国(邪馬台国)、トウマ国(投馬国)、フミ国(不弥国)、マツラ国(末蘆国)などの国々が北部九州のエリアだけでも戦をし合っていた。


 だがこんなことをしている場合ではなかった。


 九州南部には熊襲や隼人、東方には出雲や土蜘蛛がいて、さらには勢いを伸ばしつつあった蝦夷えみしあった。今はまだ北九州に彼らは攻めてきてはいなかったが、それも時間の問題だった。


 そこで各国々の首長同士が集まって会合を開いた結果、民衆をまとめる聖職者を王にすべきということになったのだ。


 どこの国にも神を祀る巫女がいる。巫女にも種類がいてどの神を祀っているか、どのような呪術が使えるかどうかというような違いがある。さらには国々の民をまとめるには民衆から指示を得られるカリスマ性がなければならない。


 数多くの呪術にすぐれた巫女たちがいる中で女王に選ばれたのは呪術の才はあれど、呪術の才に恵まれた有能な巫女たちではなく、平凡な巫女であった。


 その巫女は那美ナミという十歳の少女だった。


 那美は呪術の才は平凡でも歌や踊りに優れ、見た目も良く人を惹きつける魅力があった。


 その魅力で荒れていた倭国をまとめ上げたのであった。


 那美には那岐ナギという従兄がいた。彼はこれから先ナミの補佐として政まつりごとに関わっていくことになる。


 ナミとナギは恋人同士だったがナミは神を祀る巫女にして民衆から信仰を得る言わば偶像アイドルだった。当然公おおやけに恋人同士になることはできなかった。


 それから二十年後。女王国は出雲と同盟し、纏向へと都を移した。


 遷都後、ナミは自らの後継者をそろそろ探し出さなきゃいけないと思い、巫女を育成する機関巫女寮を創設したのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る