第14話

 期待して待っている時に限って、なかなか更新通知が来ない。


 お気に入りにあったはずの【今日の出来事】が消えているので、相手からアクセスがあるまで待つしかないのだが……



 聡美は、検診の為に訪れた産婦人科を後にしながら、ノソノソと歩道を歩いていた。

 12月初旬の空気は冷たく、体を冷やさぬようしっかりと防寒着を着込んではいるが、足元からくる冷気に思わず身震いがした。


 ベビーカーを引いた女性が向かいから歩いてきた。

 歩道が狭いので、聡美は少し隅に寄った。女性は軽く頭を下げて通り過ぎる。

 すれ違いざまに、ベビーカーの子供と目が合った。


 1歳くらいの女の子だろうか?

 横を通り過ぎる聡美を顔をじーっと見つめたまま、通り過ぎた後も身を乗り出すように聡美の方を見ている。


(私の顔に何かついてるのかしら?)


 聡美は気になって思わず、自分の顔を触った。

 とくに何も感じないので、首を傾げながら再び歩き始める。


 アパートの近くのスーパーで、軽く買い物をして帰ることにした。

 レジに並ぶ親子連れの後ろに立って順番を待っていると、母親の横に立っていた2,3歳くらいの女の子がふと後ろを振り返り、聡美の方を見た。


 何も言わず。

 ただじっと目を見てくる。


(……?)


 聡美は戸惑いつつも、軽く微笑んで見せた。

 しかし、少女は表情一つ変えず、無言で見つめてくる。


(なんなの……?)


 相手は子供だが、妙な薄気味悪さを感じて、聡美は思わず目を逸らしてしまった。

 少女はレジを終えた母親に手を引かれて去っていく。

 遠ざかりながらも、自分から目を離さない少女に聡美はなぜか恐怖を感じた。


 体に宿る生命に対して、子供は敏感に反応することがある――と、何かで読んだ記憶がある。

 妊娠に気づかない母親に、ここに赤ちゃんがいると兄弟が教えたという話だ。

 もしかして、コレもそうなのだろうか?

 まだ、そこまで目立たないお腹ではあるが、この中に赤ちゃんがいることを、あの子たちは感じたんだろうか?



 ――にしても、だ。



 あの、妙に冷めた目。

 あれが子供のする目か?と思うほど、冷たく無感情。



(なんだか気が重い……)



 聡美は家に着くなり大きなため息をついた。

 これも、マタニティブルーの1つだろうか?

 それまでの自分とは違い、日増しに変化していく体がひどく不快だった。


 別に聡美はスタイルが良い方ではないが、腹部に厚みが出て、腰の周りもなんだが丸くなっている。

 胸は決して大きな方じゃないが、少し太ったのか?というくらい膨らんでいる気がする。

 つわりで失った食欲が少しづつ戻ってくると、今度は猛烈な食欲に襲われる。


 着ていた服が入らなくなり、シルエットが大きなワンピースを着ることが多くなった。

 産めば元に戻る。


 分かってはいるけれど――

 スリムパンツを颯爽と着こなし、パンプスの踵を鳴らして歩いていた自分とは全く異なる今の姿に、聡美は嫌悪感しか抱けなかった。

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