第11話

「8週目に入りますね。気分の悪さはのせいでしょう」

 医師はそう言って、超音波の画像を見せた。


 まだ、小さな豆粒のようだが、それは確実に聡美の子宮に宿っていた。



 聡美はその写真を、帰宅した尾高に見せた。

 検査薬の結果を見せた時、尾高は少し戸惑っていたように思えたが――帰宅してその写真を見ると、尾高は嬉しそうに笑った。


 そして、言った。


「聡美。結婚しよう」

「え……?」

「一緒になろう」

「――」


 逃げてしまうかもしれない……どこかでそんな不安を感じていたが、尾高は真っ直ぐに自分を見て笑う。

 聡美は、ホッとして顔を覆った。

 涙が溢れてきた。


 そんな自分を見て、尾高が優しく抱き寄せる。






(きっと大丈夫――)






(私は母とは違う)



 尾高を愛している。

 この気持ちに、嘘はない。

 だから、きっと子供だって愛せる。

 大事に思える。





 ――はず。





 でしょう?




(子供、欲しかったわけじゃないけど……)

 でも、産めばきっと変わるわよね?


 あの女のようにはならない。


 自分は違う――あの女とは違う。




 自分を抱きしめながら、「愛してる」と囁く尾高に、聡美もしがみ付くと呟いた。


 


「私も—―」と。



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