第11話
「8週目に入りますね。気分の悪さはつわりのせいでしょう」
医師はそう言って、超音波の画像を見せた。
まだ、小さな豆粒のようだが、それは確実に聡美の子宮に宿っていた。
聡美はその写真を、帰宅した尾高に見せた。
検査薬の結果を見せた時、尾高は少し戸惑っていたように思えたが――帰宅してその写真を見ると、尾高は嬉しそうに笑った。
そして、言った。
「聡美。結婚しよう」
「え……?」
「一緒になろう」
「――」
逃げてしまうかもしれない……どこかでそんな不安を感じていたが、尾高は真っ直ぐに自分を見て笑う。
聡美は、ホッとして顔を覆った。
涙が溢れてきた。
そんな自分を見て、尾高が優しく抱き寄せる。
(きっと大丈夫――)
(私は母とは違う)
尾高を愛している。
この気持ちに、嘘はない。
だから、きっと子供だって愛せる。
大事に思える。
――はず。
でしょう?
(子供、欲しかったわけじゃないけど……)
でも、産めばきっと変わるわよね?
あの女のようにはならない。
自分は違う――あの女とは違う。
自分を抱きしめながら、「愛してる」と囁く尾高に、聡美もしがみ付くと呟いた。
たぶん。
「私も—―」と。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます