ショート以上短編未満 一話完結小説

ハイダ

第1話 邂逅

俺は「伯方 永太」

正社員で仕事をしながら劇団で活動する25才の男だ。


劇団に所属していると言っても最近は仕事が忙しいのを言い訳に劇団の稽古を休みがちになっている。

いわゆる幽霊部員だ、

何時かは大観衆の舞台の上・・・そしてテレビで俺の演技が日本中に見られる事を密かに夢見つつ毎日を送っているにも関わらずだ・・・


俺はそんなモヤモヤして煮え切らない毎日にリセットしようと週末に一人旅に出た・・・


目的地は福島県の会津若松だ。


俺は新幹線と電車を乗り継いで会津若松に向かう・・・


車窓をずっと見ている・・・

段々、ビル群が低くなり始め、


段々、初めは見えなかった山と緑色の景色の割合が多くなり、


段々、山や緑の景色に変わっていく車窓をずっと眺めていた・・・


途中、新幹線から電車に乗り換えて、会津若松に向かう。



会津若松に到着してレンタサイクルを借りる為に観光案内所に向かう。


ついでに観光案内所で行きたい場所をピックアップする。


レンタサイクルの手続きを済ませてから、観光案内所で今日の予定を立てていた時だった。


向かいの待合席の男性と目が合った。


年は俺よりも10才位上で、まるで俺の10年後の姿を想像させる様な人だった・・・


相手の男性は俺に微笑みながら会釈をする。


俺も返す。


俺は何か分からないがこの男性と旅をする為に此処に来たと直感で感じた。


俺はその男性に話し掛けようと席を立ち歩いて行こうとすると、まるで鏡の様にその男性も俺の方に向かって歩いて来た。


お互いに座っていたちょうど真ん中で自然と自己紹介をした。


だが俺は自分の本名を今は言うべきではないと直感で感じながら自己紹介をした。



「俺は東京から来た、

クオンと呼んでくれ!」



謎の男性

相手の男性も言った。

「俺はロン!クオン!よろしくな!」



俺は自分で言うのも変だが礼儀正しい方だ。

それにも関わらず10才位上の男性に自然とタメ口を聞いていた。


俺達はすぐに意気投合して会津若松の白虎隊跡地を回った。


不思議な事に俺は1人に慣れているはずなのに、初対面のこの男に、まるで気を使ったり煩わしい気持ちがなかった。


俺達は会津武家屋敷を訪れた際、西郷四郎の銅像の前で俺達2人はずっと西郷四郎の像を見ていた。



俺は言った

「俺は昔柔道をやっていて、西郷四郎は姿三四郎のモデルなんだよ!」



ロンも言った

「山嵐だろ!西郷四郎は足の指が長かったから足の指で相手の脛に引っ掛けて投げる離れ業だよな!」



クオン

「ロンも柔道やっていたのか?

ちなみに好きな選手は誰だ?

ちなみに俺は・・・」



クオン、ロン

「山下泰裕!」



2人は笑い合った・・・

そして2人の疑惑は確信に変わった・・・



ロン

「・・・クオン、お前は劇団やっているのか?」



クオン

「分かっているだろロン!

性格悪いぞ!(笑)」



ロン

「お互いにな!」



2人で笑い合った。



ロン

「所でクオン、今日は泊まる所決めてるのか?

どうせ決めてねーだろ!」



クオン

「よく分かってるな!

でも東山温泉に泊まろうと思っている!

ロンもそうだろ!」



ロンは返事もしないで

「じゃあ早速予約するか!」



東山温泉の宿を一部屋2名で予約が取れた。



クオン

「そろそろ、旅館に行くか。」



ロン

「そうだな!

今日のメインは俺とクオンの好きな牛肉ステーキだぞ!」



クオン

「分かっているな!ロン!」



バスで旅館に着き、お互い酒が入ると風呂はダメなのが分かっていたから、食事前に温泉に入り、夕食兼飲み会へと移行する。



ロン

「クオン・・・今のお前は夢と現実の間でもがいている。


でも焦るなよ!

でもノンビリし過ぎるなよ!


時間は思っているよりも早く進むからな!」



クオン

「あぁ・・・

ロン、分かっているよ・・・


ロンは今、どうなんだ・・・


仕事は順調か?彼女は出来たのか?結婚とかしているのか?・・・夢は・・・夢は叶ったのか・・・


あっそうか・・・ロンにはそれは聞いてはいけないんだったな・・・」



ロン

「まぁな・・・

でも何とか元気にやっているよ・・・」



クオン

「そうか・・・

なら良かった・・・」



ロン

「俺からアドバイス出来る事は何もないけど、人生の選択肢は自分自身で決めろ!


他の人の意見を参考にしても良いが、他人に強要された人生で挫折すると後悔が残る。


しかし自分自身で決めた道で挫折しても、マイナスの気持ちに駆られるが、後悔の気持ちは少ないからな!」



クオン

「ロン、分かっているよ・・・」



2人は二次会のカラオケに行き、思う存分歌った。



クオン

「相変わらず歌の好みは変わってねーな!」



ロン

「そう言えばこの歌は久々に聴いたな・・・」



クオン

「そうだろ?何しろ俺の十八番だからな!

ロン今は歌っていないのか?」



ロン

「あぁ、色々新しい歌が出て来て歌っていなかったがまた歌いたいな!」



夜通し2人で遊んでから旅館で寝た。



翌日は鶴ヶ城に行き、各所を巡る・・・


楽しい時間はすぐに過ぎてやがて別れの時が訪れる・・・



クオン

「ロン、元気でな・・・

しかし俺はお前の事が好きみたいで良かったよ・・・」



ロン

「俺は正直お前が大嫌いだった・・・

しかし実際に会ってみると、ちょっとだけ好きになったかもな・・・


クオンありがとう!元気でな!」



クオン

「ロンこそ!また会いたいな・・・」



ロン

「クオンよお前は嫌でも俺に会えるが、俺はもうお前に会う事は出来ない。」



クオン

「分かっているよ・・・ロン・・・」



ロン

「クオン、昨日今日はとても楽しかったよ。

神様に感謝だな!」



クオン

「そうだな!俺も今凄く神様に感謝をしているよ・・・」



クオンとロンはお互いに抱擁し別れを惜しんだ・・・


2人とも泣いていた・・・


友情とも、もちろん恋愛感情とも違う、奇妙な情を抱きつつ・・・


最後に、クオンとロンはこう言ってお互いの拳を合わせた・・・



「じゃあな!さよならだ!

伯方 永太!

健闘を祈る!」



同じ声が重なってハモる・・・



・・・そして俺達は別れた・・・


同じ東京に向かい帰路に着く・・・


クオンの本名である、伯方 永太は現代の東京へ・・・


ロンの本名である、伯方永太は10年後の東京へと・・・

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