第2話 夜の話

 満月ではなくて。

 糸のような月を夜空に見上げた。

 紫色の糸が弓なりに、夜空にこびりついていた。

 瞬きをした。やはり紫。

 その夜から、月はいつも紫。そして、消えもせず太りもせずに、糸のよう。

 夜空を見上げなければ、なんということもない。ただ、それだけ。

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