第5話 メール 3

 それから1週間後



 『なんだか私、少しおかしいね。

 これ以上しつこいとストーカーみたくなっちゃいそうなので、もうこれで最後にします。

 最後に聞かせて!

 中学の時、さとみには結局ちゃんと告白しなかったの?

 ほんの一瞬でも私のこと 好きだった時ってあった?

 それだけ教えてください。 中野 』




 最初に電話かかってきてから1ヶ月か……


 ストーカーってことはねーけどな。

 確かにおかしいよな。

 やっぱ旦那とうまくいってねーのかな……



 『私のこと好きだった時ってあった?』


 か……


 答えに困ること聞くなよ……


 メールだからいいけど、直接 面と向かって言われてたら、まじで 答えに詰ってたな……



『俺も好きだったよ』


 って答えたら どうなる?


 そんなこと言っても いいことねぇよな。

 伊藤のことは、やっぱり今でも誤解してんだな……



『昔のことすぎて、あんまりよく憶えてないんだけど。

 なかったと思う。   田坂』   送信



 これでよかったんだよな……



『そっか、わかりました。ありがとね。

 じゃ、3月に長野に帰ったら、ご飯付き合ってね。よろしく。  中野 』



 3月か……だいぶ先の話だな……



 中野、俺の夢をよくみたって言ってたな。

 俺も中野の夢は、よく みた。

 

 告白できなかったことが心残りで後悔の念か……

 まさしく俺もだな……



 道場で剣道をしている場面を、よく夢でみた。

 本当なら、すごく大きな声がして、踏み込む音、面や胴を打った時の音、竹刀と竹刀がぶつかり合う音、そんな大きな音が響いているはずの道場で、何の音も声も聞こえない。


 誰もいない。

 俺と中野、2人だけで稽古している。


 実際、2人だけで稽古したことなんてないから、ほんと空想の夢。


 スローモーションの様に、中野が打ち込んでくるなと思ったら、急に早送りされた様に、いつの間にか面を打たれて残心されている。


 中野の剣道は、川の流れのように柔らかで綺麗な剣道だ。

 さらっと、いい打ちをする。


 俺の目をじっと見て、なんで??と言うように、ほんのちょっと首を横にかしげた。

 中野と稽古すると、俺は手も足も出せない。

 ただただ、じっと見つめてしまう。

 だって、この瞬間だけは、誰にも邪魔されずに、中野のことを見つめていられるから。


 お互いに竹刀を構えて、一足一刀の間合いにいる。

 一歩踏み込めば打突ができ、一歩退けば打突を避けられる、そんな距離にいる。


 一歩踏み込めば……


 だけど、俺は、その一歩を踏み込むことは絶対にできない。


 そんな夢


 こんな切ない系の夢じゃなくて、夢ぐらいハッピーな内容にしてくれよ!って、よく思った。

 俺の夢なんだから、自由だろ!

 夢の中でくらい、恋人同士のイチャイチャ妄想劇にしようぜ!


 目が覚めて、そんな苦笑いすることがよくあった。

 心残りは、お互い様か……


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