俺はただのヒーラーだ!!
怠惰な人
第1話 絶望
そうか、これがヒールの使い方か。
俺はもう一度、杖を握りしめる。
「アビ ついでにアルテラ」
足と腕に力が入る。
ウウウォォォォ
ガーゴイルの周りに岩が漂い始める。そしてガーゴイルが腕を俺のほうに向ける。
「今だ。」
岩が向かって飛んでくる。しかし俺はすれすれのところで避けそのままガーゴイルに向かっていく。
よし、あともう一歩。俺は疲れ切った足に鞭を打ち最後の一歩を踏み出す。
「このクソッタレー!!これで決まれぇぇぇ。ヒールッッッ」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
なにか嫌な予感がする。辺りにモンスターがいない。いつもこの階層なら五分も待たずしてジャイアントアントが出てくるはずだ。しかし今日は一時間ダンジョンの中を歩いているが一向もモンスターが出てくる気配がない。
「なあ、おかしくないか。流石にモンスターが出なさすぎる。」
三十分前までモンスターが出なくてラッキーと言っていた、このパーティーのリーダーでもある清水に声をかける。
「ああ、前にパーティーがいた痕跡もない。そしていくら何でもここまでモンスターが出てないことは聞いたことは無い。しかしまだ三層目だ。何かあればすぐ地上に引き返せる。このまま帰っても準備した金が無駄になる。よってこのまま進めていこうと思う。みんなはどう思う。」
確かに清水の言うことは理にかなっている。
「確かに不安ですが、私たち以外もこの階層にいるでしょうし、ここまで戦っていないおかげでまだ体力も魔力も十分残ってる。」
池田さんが言うこともわかる。みんなもそれに賛同しているようだ。
そしてヒーラーとしての立場から言うなら、賛成せざる負えないだろう。致命的な一撃を誰かがくらっても今の状態のみんなの強さなら恐らく逃げれるぐらいならヒールし適当なバフをかけて逃げることは可能だろう。
しかし、胸に不安が染みついて離れない。なにか蛇ににらまれたかのように邪悪なものに見張られているような、、、
「なぁ、ホントにこのまま進むの、、、」
バキ バキバキバキ
俺がもう一度行くのか尋ねる前に、後方の地面から約五メートルのどろどろとした腕が生えてきた。
「なんだこれは、、、いつものモンスターではないじゃないか。」
絶句しつつも清水は剣を抜く。
「あれは恐らく、モンスターミックス。複数の魔晶石が絡み合いできる魔物のキメラよ。ダンジョン内で魔晶石がため込まれてできるの。モンスターが出てこなかった理由は、あいつが作られていたからね。」
杖を構えながら池田さんはそう言う。
とうとう地面からモンスターミックスは出てきた頭は猿、背は虎、尾は狐、足は狸、まるで鵺だ。しかし体は形を保てず、どろどろとしている。
「今のうちに攻撃するぞ!!」
清水が勢いのまま切りかかる。
「援護するわ!ファイアーボー、、グッッ」
モンスターミックスは気が付いたら、池田さんのそばまで来てそのまま体当たりしていった。
「うぉぉぉ グワッ」
隣にいた重騎士の杉本が盾を構えモンスターミックスに突進しようとするも尻尾で投げ返された。
「撤退だ!!」
清水が叫ぶと一斉にみんな走り出した。
「ヒール。池田さん、杉本さん捕まっててくださいよ。アビ アルテラ」
俺は自分に俊敏と力の呪文を唱え、二人を抱え走った。
グワワ
モンスターミックスがこっちに攻撃してくる、、、
「俺を捨てて逃げろ!!早く!!」
清水がギリギリのところで防いでくれた。俺も助けなくては。
「アル、、、」
「いいから逃げろ。このままお前が死んだら全滅だ。」
そんなことは分かってる。でも、でも。
「これは俺の落ち度だ。早くその二人を連れて逃げ、、グワ」
清水が鵺に殴られ地面をはねる。
「はやぐ!!」
立ち上がりながら清水は言う
そうだ。俺が死んだらおれが抱えている二人も死ぬ。
「すまない清水。」
そうつぶやきながら俺はその場を走る。
取り合えず、この二人を安全な場所まで届け、そして助けに来る。
「うおおお」
涙をこらえ必死に走る。それだけが今自分が出来ることだから。
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読んでいただきありがとうございます。この作品ではリアリティーを追求したいので、質問などがあればドンドンコメントしてくれると助かります。こちらも論破されないように頑張って返答します!!
俺はただのヒーラーだ!! 怠惰な人 @taida1234
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